第129話 一人増えての帰還 二つの世界のいきさつ! | 星流の二番目のたな

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デジモンフロンティアおよびデジモンアドベンチャー02の二次創作(小説)中心に稼働します。たまに検証や物理的な制作もします。
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 トレイルモンが目的地に近づくにつれ、森に囲まれた懐かしい城が見えてきた。虹色にきらめくセラフィモンの城だ。

 線路の周りではデジモン達が土木作業に精を出していた。地面に開いた大穴や、切り倒された木々。城の周りで激しい戦いがあったとは聞いていたが、その爪跡はまだ色濃く残っているようだ。

 森のターミナルに降りると、ボコモンが涙ながらに飛びついてきた。

 予想のついていた拓也は、足に力を入れて受け止める。

「拓也はん! もう二度と会えんのじゃないかと心配しとったぞい!」

「あれ、拓也も輝二もでかくなった?」

 ネーモンが拓也達を見上げて首を傾げる。拓也はボコモンをひっぺがしながら笑った。

「あれから二年経ったからな。友樹達もでかくなってただろ?」

 二人の熱烈歓迎の相手は拓也に任せて、輝二は辺りの様子を改めて見回した。

「ずいぶんひどくやられたみたいだな」

 その言葉にはパタモンが答える。

「みんな怪我してるのに頑張って、お城や森を直してくれてるです。でもこわぁい穴も開いてたりして、なかなか進まないんです」

「怖い穴?」

 輝二が聞き返す。ボコモンがホームに着地して、補足してくれた。

「でかい十二神族が来た時にな、地面に大きな穴を残していきよったんじゃマキ。その底はあのダークエリアにまで達していたんじゃ。埋め戻そうにも深すぎてのう……」

 ダークエリアと聞いて、拓也と輝二が顔を見合わせた。

「それじゃあ、ウルカヌスモンの部屋にあったデータはやっぱり」

 きょとんとするボコモン達に、輝二は少し考えた。

「長い話になる。どこかに落ち着いて話さないか? 紹介したい奴もいるし」

 最後は背後を振り返って言った。ユニモンはようやく、客車のドアからおずおずと顔を出した。




 城内の応接間。ソファに深々と腰かけて、拓也達はお互いの情報を交換した。

 デジモン兵士を作るために自分達の記憶を利用された事。

 十二神族の一柱であるネプトゥーンモンがそこから助け出してくれた事。

 来訪者の力も借り、デジモン兵士や時空のゆがみを作っていたウルカヌスモンの研究室に向かった事。

「あの部屋にあった金色のデータは、この世界のダークエリアから引き出されたものだろう。俺達の記憶だけじゃ足りずに、ダークエリアに残っていたデータの断片を回収してたんだ」

 輝二の淡々とした言葉に、パタモンが震えだす。

「ダークエリアに残っていたデータって、ま、まさか」

「あそこにあったカプセルは三つ。普通に考えてルーチェモン、ロードナイトモン、デュナスモンだろうな」

 拓也が指を順に折った。ボコモンの顔が白から青に変わる。

「ということは、まだルーチェモンとロードナイトモンが残っておるんじゃハラ」

「大丈夫だよっ。完成する前に俺達が機械ごと壊してきたからさ!」

 拓也の笑顔に、ボコモン達はほっと胸をなでおろした。

 そこで、お茶菓子のビスケットを頬張っていたユニモンが口をはさむ。

「ところでそろそろ僕の事も紹介してもらえませんか?」

「ああ。このユニモンは俺達の味方で――」

 城内でネプトゥーンモンと別れた事。

 彼の部下であるユニモンと出会い、色々あって雷のエリアに帰ってきた事。

 そして、三人で協力してエリアの結界を取り返した。

「拓也はん達も大変だったんじゃのう」

 ボコモンが手で涙をぬぐう。パタモンは机に座り、ユニモンと一緒にビスケットをかじっている。

「でも、十二神族の中にもいいヒトがいてよかったです」

「んー、本当ならみんないいヒト達なんですけどね……。こんな事になって、お詫びのしようもありません」

 ここが敵の本陣だけあって、ユニモンもしおらしい。


 さて、と拓也が気合いを入れて座り直した。

「俺達の話はこんな所だな。こっちで何があったか教えてくれよ。ネプトゥーンモン経由で戦況くらいは聞いてたんだけど。輝一と純平、友樹がダブルスピリットできるようになったんだってな」

「うん、そうなんだよ~」

 ネーモンの言葉を皮切りにして、今度は十闘士の世界について語られる。

 十年(二年)ぶりの再会から輝一達のダブルスピリット覚醒、この城での戦闘など、ボコモンは楽しそうに説明してくれた。積極的に話したがるのは昔とちっとも変わらない。

 だが、信也の話題を避けたがっているのは拓也にも分かった。ビーストスピリットの初進化も木のエリアでの奮闘も、ボコモンが喜んで語ってくれそうな話なのに。少し触れるきりですぐに次の話に移ろうとする。

「なあボコモン」

 しびれを切らした拓也が静かに口をはさむと、ボコモンはうつむいて黙り込んだ。

「……そうじゃな。隠しててもどうにもならんことじゃマキ。信也はんはの……今、行方不明なんじゃ」

 そしてとつとつと、判明した信也の特性について教えてくれた。




 長い話の後、拓也達二人は客用の寝室に通された。信也と友樹が寝泊まりしていた部屋だ。ユニモンは馬屋へ案内されていった。

 輝二が頭の後ろで手を組み、ベッドに仰向けに寝転がる。

 拓也は荷物を丸テーブルに置き、イスに深く腰掛けた。疑似デジヴァイスの横に、二個一対のスピリット。ビーストスピリットの正面に走った傷の他には、目立った変化はない。しかし、目をこらせば治りかけた傷がいくつもあるのが分かった。拓也が持っているべきだから、と手渡された。二年前に共に戦った自分の半身。それと同時に、弟が身にまとって戦った魂。

「複雑だな」

 ぽつりと言われて、輝二に顔を向ける。輝二はいつの間にかベッドの端に座って、拓也とスピリットを見ていた。

 そうだな、とつぶやいて拓也は寂しい苦笑が浮かべた。

「信也ってさ。けっこう言いたいこと飲み込んじゃうんだよ。自分の弱点をさらすのが怖いんだろうな。辛くても平気な顔してごまかすんだ」

 輝二は黙って、拓也の言葉を聞いている。

「だから、ボコモン達から見た信也の話を聞いても、信也がどんな気持ちでいたのか、本当の所は分からない。あいつは一番大事なことは言わないし顔にも出さないんだ。だから、俺、アグニモンと話しに行く」

 拓也は机上のスピリットに視線を戻した。

「俺がいない間、信也と一緒にいたのはアグニモンだ。一つになって戦ってたスピリットなら、信也の行き先にも心当たりがあるかもしれない。ほら、パタモンが言ってただろ。炎の町にあるアグニモンの体にスピリットを込めれば、二年前みたいに話ができるって」

「分かった。信也についてはお前に任せる」 

 輝二が信頼した表情で頷いた。拓也が輝二に目を戻し、少し申し訳なさそうに笑った。

「悪いな」

「いいさ。信也はお前の弟で、今はもう俺達の仲間だ。俺はユニモンと行く。氷のエリアに行った輝一達と合流するよ」

「そうか。光のスピリットは輝一が持ってるんだよな」

 何にせよ、友樹達の方を輝二に頼めるのはありがたい。拓也は信也の事に集中できる。

 結論が出たところで、拓也は炎のスピリットをデジヴァイスに収めた。



 一日の休息の後、彼らは再び旅立った。




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まとめ回だからか割りと早く書き上がりました。

もう一話拓也サイドの話をやるか早めに信也サイドに戻るか迷いましたが、結局拓也サイドを入れました。いい加減情報のすり合わせをしておかないと、どんな伏線が出ていたか忘れ去られてしまいそうだったので。(もう忘れられてる可能性も十分ありますが……(汗))

次回こそっ! 信也サイドに戻ります。