第127話 有利をこの手に! 環境とリミット | 星流の二番目のたな

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デジモンフロンティアおよびデジモンアドベンチャー02の二次創作(小説)中心に稼働します。たまに検証や物理的な制作もします。
続き物、二次創作の苦手な方はご注意くださいませ。

 こぶしに雷をまとい、アンドロモンが殴りかかってくる。フレイモンが跳びのいた直後、こぶしが床のタイルを砕く。それでも弾けた電気にあおられ、フレイモンは何度も転がった。

 背中が泡立つような感覚に振り返れば、あと数センチの所で壁の電流が火花を散らしている。思わず背筋を伸ばして、慎重に壁際を離れた。攻めても電気、退いても電気だ。

 ストラビモンが腰を落とし、床を蹴って接近。振り向いたアンドロモンが胸部の装甲を開くが、電撃が放たれる前にストラビモンが片手を床に着いた。電撃はストラビモンの頭上を抜ける。ストラビモンは勢いを殺さぬまま、スライディングのように足払いをかけた。

 が、不意を突かれたにも関わらず、アンドロモンは身軽に跳んで避けた。更に空中で両手を組み、足元のストラビモンへと振り下ろす。

「《トールハンマー》」

「《ベビーサラマンダー》!」

 迫った一撃は、フレイモンの妨害で左にそれた。着地体勢の崩れたアンドロモンを、ストラビモンが蹴飛ばし距離を取る。フレイモンの横に降り立った。

 フレイモンが敵に視線を向けたまま、ストラビモンに聞く。

「どうした? お前の攻撃が簡単に避けられるなんて」

 光の闘士の長所は速さにある。迫る攻撃を見切り、敵の反応より先に技を叩き込む。

 ストラビモンが顔をしかめた。

「あいつ、重量の割に妙に速い。雷のデータを取り込んでも、ここまでには!」

 言い終わる前に雷弾が発射され、二人は左右に分かれて跳んだ。

 フレイモンがふと壁の電流に目をやり、閃いた。

「そうか、電気の多い場所だから、奴の速度や攻撃がパワーアップしてるんだ!」

 属性に合った環境であれば、デジモンの能力は底上げされる。拓也達にも覚えのあることだった。

 この電流さえ止めれば、アンドロモンは弱るはず。

 頭突きをしてきた敵を、フレイモンが斜めに組み伏せた。

「俺が時間を稼ぐ! 動力源を探してくれ!」

「分かった!」

 ストラビモンが素早く答え、部屋を見回す。

 動力源になりそうなのは、壊れた台座くらいしかない。ストラビモンが駆け寄ると、台座の裏からユニモンが顔を出した。

「ユニモン、台座の中にまだ動いている機械はないか?」

「結構痛んでますけど……あ、ここは元気そうですね」

 ユニモンが一か所を前足で指した。ストラビモンがその横にしゃがみ込む。

 配線が垂れ下がる奥に、無傷の基盤があった。黒塗りのバッテリーパックの横から電気が絶え間なく流れ出している。非常電源なのか、ブリッツモンがここを守るために最後に残したエネルギーなのか、それは判断がつかなかった。とにかく、これを壊せば部屋を取り巻く電気は消える。

「いいんですか? 電気がなくなるってことは」

 ユニモンが心配そうにストラビモンに聞く。ストラビモンは硬い表情で頷いた。

「分かってる。だが、アンドロモンに対抗するにはこれしかない」

 ストラビモンは右手の爪を振り上げた。

「ブリッツモン、許せ!」

 鋭い爪が、バッテリーを切り裂いた。パン、と音を立てて、バッテリーは破裂した。

 直後、壁に走っていた電流が消える。弾ける音のしなくなった部屋は、一瞬静寂に包まれた。


「ごほっ。上手くいったみたいだな!」

 せき込みながら、フレイモンが叫ぶ。胸をかばい、右足を少々引きずってはいるが、まだ戦えそうだ。

 ストラビモンもフレイモンの横に並ぶ。

「代わりに酸素は発生しなくなった。長居すると窒息するぞ」

「その前に、敵を倒して脱出しろってことだな」

「あと、炎も最小限にな」

「あ゛っ……おう」

 物を燃やすには酸素を消費する、というのは拓也でも知っている知識である。むやみな技の使用は自分達の寿命を縮めかねない。相手が呼吸と無縁な機械であればなおさらだ。

 改めて敵に向き直る。有利なフィールドが解除されても、その表情に変化は見られない。アンドロモンはフレイモンめがけて走る。その勢いのまま、電気をまとった右手を振りおろす。

「《ミョルニルサンダー》」

 鈍い音がした。

 フレイモンは一歩も動かず、クロスさせた両腕を掲げていた。電気で肩まで痙攣けいれんしながらも、アンドロモンの腕を受け止めている。

 フレイモンはにっと笑った。

「いける!」

 その姿勢のまま体を熱し、炎のオーラをぶち当てる。アンドロモンは吹き飛ばされ、一回転して着地した。

 しかし、立ち上がる前にストラビモンが詰める。

「《リヒト・ナーゲル》!」

 背中を切り裂かれ、アンドロモンが咆哮を上げる。胸部の砲口から、雷弾を乱射する。多くは天井や壁に着弾し、爆発する。

 肩に迫った雷弾をぎりぎり避けて、フレイモンが駆ける。全身に炎をまとい、ひねりを加えて跳ぶ。

「《ベビーサラマンダー……ブレイク》!」

 回し蹴りが、アンドロモンの首を捉えた。機械人形は勢いのまま吹き飛び、壁に叩きつけられた。

 その体に、デジコードが浮かぶ。フレイモンがデジヴァイスを向けた。

「汚れた悪の魂よ、このデジヴァイスが浄化する! デジコード・スキャン!」

 デジコードが吸い込まれ、アンドロモンはデジタマとなって去っていった。



 気が抜けて、進化の解けた拓也はその場にへたり込んだ。輝二も珍しく、膝に手をつき深く息を吐く。

「けほっ。なんとか倒せたな」

 拓也の言葉に、輝二も顔を伏せたまま頷く。

 戦いの疲れもあるが、どうにも息が整わない。輝二がのどに手を当てる。

「せっかく短期決戦で済ませたのに、はあ、妙に苦しくないか?」

「なんだよ、俺はちゃんと炎最小限で済ませたぜ」

「そうじゃなくて、もっと別の」

「あああ! 二人とも上! 上!」

 ユニモンの悲鳴に、二人は天井を見上げた。

 先程の雷弾で、天井の痛みが激しくなっていた。ただでさえ丈夫でない建物である。建材の隙間から水が幾筋も流れ落ちてくる。

「やばぃっ!」

 拓也が言い終わる間もなく、天井が決壊した。泥水が一気に叩きつけてくる。

「この安普請め!」

 輝二が悪態をつきながら走るが、三歩もいかないうちに足をとられた。

 ユニモンがとっさに青白い光をまとい、二人を助けようとする。

「拓也さん、輝二さん!」

 だが、水の勢いに邪魔されて間に合わない。

 二人の体は、あっけなく濁流に飲み込まれた。




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気づけばフロ02もユナイトも雷の話。電気の描写ばかり書いています(苦笑)毎度のことですが、科学的におかしなところがあっても生温かい心でスルーしてやってください(汗)

味方の技が少ないので、最後一個足してしまいました。《ベビーサラマンダーブレイク》……今後も出てくるかは未定です←