〔20〕超絶執念! 再来のケルベロモン | 星流の二番目のたな

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デジモンフロンティアおよびデジモンアドベンチャー02の二次創作(小説)中心に稼働します。たまに検証や物理的な制作もします。
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「ったく、せっかく支えてやったのにビンタはないだろ、ビンタは!」

「拓也が目の前にいるからいけないんでしょ!」

 線路を歩きながらも、拓也と泉の口論は絶え間なく続いている。相変わらずの森の中だが、リラックスできる雰囲気ではない。

 他のメンバーは、巻き込まれないよう距離を取って歩いていた。ブイモンがちらちらと二人の様子を見ている。

「……大輔、あのままでいいのかな?」

「あー、大丈夫なんじゃないか? ケンカするほど何とかって言うし」

「あれのどこが仲良さそうなんだよ」

 大輔の答えに、何故か純平が反応した。

「俺もよく知らないけど……よくそう言うだろ」

「俺は全然そうは思わないね」

 一方的に話を断ち切って、泉達の方へ駆け出す純平。大輔は訳が分からず頬を掻いた。

「きっと、泉さんが他の男の子と仲良くしてるのが嫌なんだよ」

 友樹がこっそり耳打ちする。そういう気持ちなら大輔にもよく分かるが……純平の態度は、何となくそれだけではないような気がした。

 で、その中身はというと……やはり考えても分からないのだが。

 ブイモンが大輔をつついた。

「そんなに気になるなら直接聞けばいいじゃんか」

「あ、それもそうだな! 俺ちょっと行ってくる!」

 大輔はにっと笑って純平を追って走り出した。

「おーい、純平!」

 その声に拓也達三人が振り向く。


 タイミングを狙いすまして、拓也達の向こうから黒い影が跳びかかった。

「っ! 伏せろ!」

 大輔が叫ぶと、拓也達が慌ててしゃがみこんだ。そのすぐ上を影が行き過ぎる。

 拓也と大輔の間に着地する影。ボコモンが声をあげた。

「あー! あれはケルベロモンじゃ!」

「……誰だっけ?」

 ネーモンと一緒に、友樹が首をかしげる。

 ケルベロモンが唸り声を上げた。

「炎の町での戦い、忘れたとは言わせんぞ!」

「ああ! あの時吹っ飛ばしたケルベロモンか!」

「なんだそうか! いやー、悪い。忘れてたわ」

 ブイモンと大輔が、そろって苦笑する。対してケルベロモンの表情は怒りにゆがんでいく。

「お前らのせいで炎の町はスキャンできないし、トレイルモンにはひかれるし……許さんぞ!」

「また返り討ちにしてやるさ。いくぞ、ブイモン!」

 大輔がD-ターミナルとデジヴァイスを取り出した。

「僕も手伝う!」

「私も!」

 友樹と泉もデジヴァイスを手に駆け寄る。

 途端、ケルベロモンがにやりと笑った。

「今だ、ハグルモン!」

 そばの茂みから、顔のついた歯車が飛び出した。

 驚く間もなく、ハグルモンが口から小さな歯車を吐き出した。

「《ダークネスギア》!」

「うわっ!」

 大輔は思わずD-ターミナルで顔をかばった。

 しかし、何も起こらない。同じように目をつぶっていた泉達も、拍子抜けしている。

「なんなの、今の?」

「さあ。それより進化だ進化!」

 大輔がデジヴァイスをブイモンに向けた。


「デジメンタル・アップ!」

「ブイモン、アーマー進化!」

「燃え上がる勇気、フレイドラモン!」


 ……ブイモンのままである。

「あ、あれ? 大輔、デジメンタルが来ないよ?」

「んなわけあるか。もう一度、デジメンタル・アップ!」

 いつもならD-ターミナルからデジヴァイスへ、デジメンタルが転送される。しかし、何の反応もない。

「僕達も進化できない!」

 友樹の悲鳴。デジヴァイスをいじっていた泉が声をあげた。

「何これ! デジヴァイスが変よ!」

 まさか、と思い大輔もD-ターミナルを開く。

 そこにデジメンタルの表示はなく、意味不明の文字列で埋め尽くされていた。

 純平も泉のデジヴァイスをのぞき込み、目を見開いた。

「ウイルスだ! コンピュータウイルスで、デジヴァイスがおかしくなってる!」

「じゃあさっきの歯車が」

「やっと気づいたか!」

 拓也の言葉をケルベロモンが遮る。

「その機械さえ動かなきゃ、お前達は何もできないからな! ハグルモンを見つけてきて正解だったぜ!」

 ハグルモンに自分の意思はないのか、ケルベロモンの横で黙って浮いている。

「借りは返すぜ! 《ヘルファイア》!」

 緑色の炎が大輔達を襲う。逃げろ、と拓也が叫び、全員が散り散りに走った。炎は草や木に燃え移り、森を毒々しく照らす。

 大輔とブイモンは木の陰にしゃがんだ。大輔がデジヴァイスを見る。D-ターミナルはやられたが、デジヴァイスは正常だ。でも、デジヴァイスだけじゃ。

 大輔の脳裏に、以前ヒカリを助けに行った時の事がよみがえった。あの時、タケルはデジヴァイスだけでパタモンを進化させていた。ブイモンも、同じ進化ができるかもしれない。

「そうだ、アーマー進化じゃなくて、普通の進化なら! D-ターミナルがなくてもいけるはずだ!」

 大輔の言葉に、ブイモンも頷いた。

「分かった! 俺、やってみる!」




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本当に忘れられかけてただろうケルベロモン。元気です。

細々とした部分ですが、前回の題名のつけ方を間違えてたので、修正しました。星流が個人的にこだわってる所なので、別に直さなくてもどうってことないんですけど……ま、一応。