「小説家になろう」にて陽輝さんからいただいたアイディアを小説化したものです。Pixivにも並行してUPしていますが、デジモン小説ということでこちらにもUPしていきます。
今回は筆が乗ったので一気にいけましたが、フロ02がコラボ中ですし、こちらの更新は基本ゆっくりかと。
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2002年の夏、お台場小学校のパソコン室。誰もいないその部屋で、一番奥、窓際から2番目のパソコンだけがディスプレイを明々と灯らせていた。
と、そのディスプレイがひときわ光を放ち、合計6個の人影がディスプレイから飛び出してきた。
「ふうー。今日もよく働いたな」
そう言って伸びをするのはゴーグルをつけた少年。5年生で、名前を本宮大輔という。
「おれ、はらへった~!」
その横で跳びはねているのは、ぬいぐるみ大の青い生き物。名前をチビモンといい、大輔のパートナーである。
この場にいる3人の子ども達には、それぞれ別世界の住人であるデジタルモンスター――デジモンがパートナーとして存在していた。
「今日の復旧作業は終わり。続きはまた明日がんばろう!」
「みやこさんはまだまだげんきそうですね」
こぶしを振り上げる少女――6年生の井ノ上京に、パートナーのポロモンが感心する。
「結局、今日はタケルさんもヒカリさんも来られませんでしたね」
そう言う火田伊織は、最年少の3年生。腕に抱えていたパートナーのウパモンが、身動きして伊織を見上げた。
「しかたないだぎゃ。ふたりとも、いえのようじがあるってゆうとったがや」
3人と3匹は、別世界デジタルワールドの復旧作業をして帰ってきた所だった。
彼ら3組にもう2組を加えた10人は、つい先日までデジタルワールドをめぐる戦いを続けていた。敵であったデジモンカイザーが消滅してからは、デジタルワールドの傷をいやすために村や橋の復旧作業を手伝っている。
「だいすけ~、はやくかえろうよ~。はらへったよ~」
チビモンが大輔にしがみつき、駄々をこねる。
「わーったよ。それじゃ、京も伊織もまた明日な」
大輔はランドセルを担ぐと、チビモンを腕に抱えてパソコン室を出た。
――ピロリン
ポケットの中で電子音がしたのはその時だった。
チビモンを片腕で抱いたまま、大輔はポケットからディーターミナルを出した。
「だいすけ、メール?」
「ああ……」
チビモンの言葉に生返事をしながら、器用に片手で操作する。
メールの「From」欄は『不明』。
「文章」欄には一文だけ。
『スタートしますか? しませんか?』
その下に『YES』と『NO』の選択肢。
「なにこれ? ゲーム?」
「かもな。押してみるか!」
大輔はほとんど考えもせず『YES』を選んだ。
それに反応するように、今度はポケットに入っていたD-3が光り出した。
「何だ!?」
大輔とチビモンは目を丸くして、光を放つD-3を見つめる。
そのD-3から女性の声が聞こえてきた。
『本宮大輔くん。あなたの未来を決めるゲームはスタートしました』
「え……?」
何故大輔の名前を知っているのか。
そもそもこの声は誰のものなのか。
大輔達が反応に困っている間に、D-3の光は消えうせた。
すぐにまた『不明』からのメールがディーターミナルに届く。
『お台場海浜公園駅 17:20発 新橋方面のゆりかもめに 乗って下さい』
17時20分?
大輔は急いでもといたパソコン室に飛び込んだ。
「京! 今何時だ?」
突然戻ってきた大輔に驚きながら、京がパソコンの時間表示を見る。
「えっと、17時4分だけど?」
あと16分。走って行ってもぎりぎり間に合うかどうかだ。
「だいすけ、どうするの?」
チビモンが大輔を見上げた。
大輔は手に持っているD-3とディーターミナルを見つめた。誰か分からない人物からの指示だ。けれど、その「誰か」はD-3を通して話しかけてきた。だとすると、デジタルワールドに関係する人物である可能性が高い。
「大輔さん、ずっとD-3見てどうしたんですか?」
伊織が不思議そうに聞いてくる。同じ選ばれし子どもである京や伊織にはメールは届いていないらしい。
本来ならここで相談するべきだが……その時間はない。
「ちょっと俺、行ってくる!」
そう言って再度パソコン室から駆け出す。
「行ってくるって、どこへよ~!?」
京の叫び声が背後で小さくなっていく。
チビモンを肩にしがみつかせて、大輔は全力で駅に向かって走った。