日食の瞬間は
もっと暗くなるのではないかと想像していた



思ったほど暗くはならなかったものの
気づくとあたりは
灰色がかった深緑色をしており
少し異様な空気に包まれているようにも思えた


その時俄かに
さあーっと一陣の風が通り抜け
私はぶるっと寒気を感じた


再び日食グラスをのぞくと
光のリングは少し形を変えていたものの
黒い影はまだ
太陽の上におおいかぶさっていた


私は

太陽の「陽」のパワーと
月の「陰」のパワーが
一点に重なり

そこからエネルギーシャワーとなって
体中に降り注がれていることを意識しながら
しばらくじっと立ちすくんでいた



まもなく太陽は
次々と風に流されてくる雲に
すっぽりと覆われてしまった



私はようやく我に返ったように
体の向きを変えて
部屋に戻ろうとした


その時ふと

先ほど玄関先にころがっていた
コガネムシのことを思い出した


見ると
コガネムシは
仰向けになって
身動きもせずころがっていた


そういえば
コガネムシは
太陽の象徴だと聞いたことがある


私は
家に戻ってティッシュを持ち出し
その上にコガネムシをのせた


すると
コガネムシの手足が
もぞもぞと動いた

まだ生きていたのか・・・