日食グラスを覗くと

暗闇の中に
右上を何かにかじられたような黄色い太陽が
ぽつんと浮かび

その丸い黒影が
しだいに太陽を蝕みながら左下へ移動するにつれ
太陽は細い弧となってゆく


そして

ついに光のリングが完成した!


誰からとも無く
歓声があがった




隣人たちは
「あー よう見えたな」と
満足げにそれぞれの家の中に戻ってゆく


夫も
「じゃ 行ってきます」と
玄関の門をあけた



その時 ふと夫が足元をみて
「あっ・・」と小さく声をあげる

みると
コガネムシが玄関脇にひっくり返って
手足をバタバタさせていた



私は夫を送り出した後も
しばらく玄関先でたたずんでいた




皆が日常の営みの中に帰ってゆき
さっきまでのお祭り騒ぎがうそのように
あたりは静寂に包まれた