昨日はバレンタインデーでした。
この仕事を始めてからめっきり義理チョコなどをもらわなくなりまして……などという書き出しにしようかと思っていたんですが、有楽町三省堂の新井さんにもらっちゃいました!!
義理チョコ!!(そんな声高に叫ぶことではない)
ほらほらほらほら!!わーい!!
でもねーこのパッケージ、「ちょうどいい大きさ! スーパー“E”カップ」って書いてあるんですよ……(不満げ)。
ちょうどいいのはBかCだろ!!
というか大きさよりも問題は感度だろ!!
と私は力説したい!!!
どうもこんにちは、菁南です。
どうでもいいけどこのおっぱいチョコ、3つ並べると『トータル・リコール』に出てきたミュータントの売春婦みたいになりました。
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ほんとにどうでもいい話でした。
さてさて、もう過ぎちゃいましたがバレンタインの思い出話でも書きましょうか。
バンドやってたときの話です。
上京してから初めて組んだバンドではメンバー全員が右も左もわからないような状態でして。
どうやったらライブの動員を増やせるのかといろいろ試しました。
そういう作戦を考えるのはおもに僕の役目だったわけですよ。
ほかのメンバーはプロ志向とはいうものの、まだ大学生だったりして意識が低い部分があったんですね。
でも僕は大学辞めて単身上京してるから、それこそ人生かかってるぐらいの意気込みなのです。
悔いの残らないように、できることなんでもやってやろうって感じだったんですわ。
だから格安のレコーディングスタジオを見つけてきてレコーディングをブッキングするのも僕、ライブハウスにプロフィールとデモテープを持ち込んで、ライブをブッキングするのも僕がやっていたんです。
そんでもって動員の多い対バンがいると揉み手しながら「いやあ、かっこよかったっすよ~……ところでどうやってお客さん増やしてるんすか?」みたいにすり寄っていったりね。
良い曲を良い演奏で聞かせていれば、そのうちお客さんが増えるとか、たまたまライブを見かけたレコード会社や事務所の人が声をかけてくれるなんていうのが甘ったれた幻想だっていうのは、何回かライブやればすぐにわかります。
お客さんは目当てのバンドが終わったら潮が引くようにハケていくし、多忙な業界の新人発掘担当は、話題になっているバンドだけを観にくるものなのです。
で、渋谷のegg-manというライブハウスで、あれはまだ夜の部に上がる前の昼の部に出てたときのことでした。
対バンにものすごい動員のあるバンドがいまして。
これはすごいな、こんだけいたら僕らの番でも少しはお客さん残ってるだろうなと期待して、そのバンドの後にステージに上がってみたらホールがガラガラ。
ものの見事に帰っちゃった、というか、外でメンバーと話すために出ていっちゃってたんです。
うちのほかのメンバーは「けっ、あいつらまるっきりGLAYじゃねーか」みたいに小馬鹿にしてましたが、商売にしようと思うのなら数字がすべて!! いくら演奏がヘボかろうと、GLAYにそっくりでオリジナリティ皆無だろうと、動員で負けてるうちはなーんも言える立場じゃねーだろっ!! と、僕一人で機材の片づけを始めたそのバンドに例のごとくすり寄っていったわけです。
「いやー、かっこよかったっすぅ~」
「あ……ありがとう」
若干引き気味のTERU似ヴォーカルさん。
対バンライブというと、一般的には和気あいあいと仲良くやっているような印象があるかもしれませんが、実際には楽屋でもバンド単位で固まっていて、そんなに話す機会がなかったりします。
バンドマンってわりと人見知りが多いし、お互いにライバル心もありますしね。
二回三回と対バンすると打ち解けますけど、一見さんのバンドになれなれしく話しかけると驚かれたりするものなのです。
でも僕は負けませんよ。
「どこを拠点にライブやってんすか?」
「ギターのエフェクト何使ってんすか?」
「ドラムセットは自前?」
などと重戦車の勢いでずけずけ入り込んでいきます。
で、肝心なことを切り出すのです。
「お客さんもすげー多かったっすけど、どうやって動員増やしてんすか?」
「それは企業秘密だよ」
「そう言わずにちょっとだけでも教えてくださいよぉ~」
ほとんどおもちゃをねだる駄々っ子のように粘って、粘って、ようやく聞き出せたのが下の二点でした。
①『バンドやろうぜ』という雑誌に無料で写真とライブ情報を掲載できるバンド告知板というコーナーがあり、そこに毎月掲載している。
②ライブに来たお客さんとピクニックや食事会などの企画を立てている。
うーん……②はきつい!! そんなホストみたいな真似はさすがに……と考えてしまった僕は、今考えればまだまだプライドを捨てきれないアマちゃんでした。
だってCDが売れなくなった昨今、アイドルやらタレントやらが軒並みファンとのバスツアーみたいなことをやってますもんね。
でも当時の僕にとっては「ナシ!!」。
ということで、①のみを実践してみることに。
ちなみに『バンドやろうぜ』という雑誌、もうないと思うんですけど、実は宝島社発行なんですね。
宝島社との浅からぬ因縁の起源が、そんなところにあろうとは……。
ともあれ、毎月毎月『バンドやろうぜ』を購入して、添付の申し込み用紙にバンドの宣伝文を書き、写真を添えて送るようになったのです。
ライブの告知だけをするほかのバンドと差別化するために、連絡をくれた人にはデモテープを無料プレゼントすることにしました。
いきなりライブに来るのはハードルが高いから、まずはデモを聞いてファンになってもらおうと思って。
どうやらそのコーナーは没がないらしく、毎月掲載されてましたね。
僕の住所と電話番号がまんま載っていたのだから、おおらかな時代だったものです。
ほどなく僕の家に山のようにデモテープ希望の手紙が届くようになりまして。
そしてときおり悪戯電話がかかってくるようになりまして。
深夜の電話で起こされて、ぜんぜん知らない人に「殺すぞ」って言われるの、たぶん経験ある人少ないと思いますけど、すげーへこみますよあれ。
まーそれはいいんですが、膨大な量の手紙にそれぞれデモテープを返送していくのが、それはそれはものすごい大変な作業だったのです。
まだまだPCはそれほど普及してない時代でしたから、マスターだけPC持ってる友達からCDに焼いてもらって、それを延々ラジカセでダビングし続けてました。
ただ、手紙は届くけどライブには来ない。
それはそうです。
北は北海道、南は沖縄ですよ。
むしろ首都圏の人からの手紙なんてほとんどない。
地方の人のほうが情報に飢えてますからね。
それでもいつかツアーで行くこともあるかもしれないし……などと自分にいい聞かせながら女工哀史の様相で作業を続ける毎日でした。
しかし、
もういい加減不毛過ぎやしねえか?
ってか、楽器触れてねーじゃん!!
やめちまおーか。
などと思い始めたある日、一人の女の子が埼玉からライブを観に来てくれたのです。
ミワちゃんという名前でした。
僕はめちゃめちゃ感激しまして、ライブ前後には彼女を丁重にもてなしたわけです。
もてなすっつっても、話すだけですけどね。
でも、発送作業に携わっていないほかのメンバーは喜びが薄くて「あ、そう」ぐらいの感じなのですよ。
おめえらふざけんじゃねーよ!!
一人のお客さんをライブに呼ぶまでがどんだけ大変だったかわかんねーのか!!
とさすがに憤りましたが、彼らには僕の喜びも怒りも実感できるわけがないのです。
思えばあの温度差が脱退の引き金になったなと思います。
そうこうしているうちにお客さんが一人増え、二人増え、あとはふんころがしが泥団子を転がすような勢いで増えていきました。
そしてバレンタインデーです(ここまで長かったな……と後悔)。
いつものようにライブ前、お客さんの相手をするのは僕だけでした。
コンビニ帰りのほかのメンバーは「ども」ぐらいで楽屋に消えていきます。
あーなんだよそのアーティスト気取り!!
ライブ前にお客さんに営業電話かけまくってんの誰だと思ってんだ!!
少しは分担しろや!!
と、かちんとなった僕に、ミワちゃんが恥らいながら紙袋を差し出したのです。
それは手作りのチョコレートでした。
メッセージカードも添えてあります。
うおおおお、ついにファンから手作りチョコをもらえるようになったよ!!
お母さーーーーん!! おいは東京で頑張っとるけん!!
と喜びに浸る僕に、ミワちゃんはあと三つ紙袋を差し出しました。
すべてに宛名が書いてあります。
メンバー全員分用意してくれていたのです。
まったく、あんなに素っ気ない対応する連中のために、申し訳ないねえ。
と思いながら楽屋に戻り、メンバーに配りました。
それぞれチョコを頬張りながらメッセージカードに目を通すメンバーたち。
これはさすがに嬉しそうです。
おれはこういうふうに書いてあったよとか、報告し合っています。
僕もヴォーカルのやつになんと書いてあったか尋ねました。
そいつはこう答えました。
「これは義理ではありません」
……世の中というのはそういうものです。
あーすんげ長文になって疲れた!!
おやすみなさい。
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