ご存じの方も多いかと思いますが、僕はミュージシャンを志して東京にやってきました。

新聞奨学生という制度を利用していたため、新聞販売店に住み込みで働きながら音楽専門学校に通っていたのです。

故郷長崎に彼女を残してきており、上京当時は遠距離恋愛でした。

その彼女が、ゴールデンウィークの休暇を利用して東京に遊びに来ることになったのです。

住居となっていた新聞販売店の二階の部屋には部外者を連れ込んではいけなかったので、ホテルを取らないとなりません。

いまみたいにインターネットも普及していない時代です。

じゃらんもトリバゴもありません。

そこでタウンページですよ、タウンページ。

黄色くて、ぶん殴ったら誰かを殺せそうなほど分厚いあれです。

彼女は何泊かする予定だったし、お金もないのでできるだけ安いホテルを、と思い、タウンページを熟読した末に見つけたのが南千住のホテルだったというわけです。

ただね、上京してまだ一か月ぐらいしか経っていない時期ですし、南千住といってもピンとこないんですよ。

渋谷新宿あたりならなんとかわかるけど、それ以外は地名を聞いてもなんのイメージもない。

でも路線図を見てみたら自由が丘からは中目黒で日比谷線になるものの、ほとんど乗り換えなしで行けそうです。

僕が住んでいるところからは一時間ぐらいかかっちゃうけど、安いしまあいいかと予約の電話を入れたのでした。

当日は彼女に先にチェックインさせ、僕は仕事を終えてから南千住に向かいました。

上京してたった一か月、日々の移動といえば東横線の自由が丘~渋谷間を往復する程度だったにもかかわらず、僕はなんとなく東京を知ったつもりになっていたのです。

未明に新聞配達をしていても怖い目に遭ったことはなかったし、東京恐るるに足らずみたいな、ちょっと舐めた心境になりかけていました。

でもそれは、たんに僕がたまたま配属された自由が丘近辺の治安が、都内でも飛び抜けてよかったというだけの話だったのです。

駅を出てすぐの高架下で、向こうからよたよたとゾンビみたいな足取りで歩いてくる酔っ払いの影を見ながら、とんでもないところに来ちゃったなと思ったことをよく覚えています。

あとは駅の近くにあった鯛焼き屋が美味しかったような。

そんなディープな足立区の洗礼を受けて以来、なんと20年ぶりの南千住です。

こちらのイベントでは僕の本のお買い上げ特典として、これまでレコーディングしたイメージソング4曲を収録したCDを進呈します。

あとあくまで僕に限ってですが、他店でお買い上げの既刊にもサインします。

ただしほかの作家さんのでもいいから、くまざわ書店で一冊は本を買ってね。

 

そして19日南千住に来られないよという方に。

17日(木)にもはやすっかりおなじみ、船橋のときわ書房本店にお邪魔して『鉄道リドル いすみ鉄道で妖精の森に迷いこむ』のサイン本を作らせていただく予定です。

ときわ書房はサイン本のネット販売も行っているのでどうぞご利用ください。