実録素人ドキュメント 私を作家にして下さい -佐藤菁南ブログ--「私を売れっ子作家にして下さい!!」ロゴ
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こんにちは、菁南です。
まずは皆様に訂正しておかなければならないことがあります。
以前の記事で、宝島社の担当Kさんのことを“天然爆弾”などと表記してしまいました。
そのせいで彼女が天然であるというあらぬ誤解のもとに、上司からいじられるという経験をしてしまったようです。
なのでここで訂正しておきます。

彼女はけっして、天然などではありません。

Kさんいわく「天然とドジとは違う」ということです。
「天然ではないが、ドジであることはしぶしぶ認める」らしいです。
自己申告を鵜呑みにするならば、彼女は“天然”ではなく“ドジっ子”なのです。
なるほど……!!
“天然”が“天然”を自覚していたらそれは“天然”ではなく緻密な自己演出、つまりは“計算高い女”ということになります。
合コンなどの席で「あたし天然だしぃ」とのたまう女性を思い出してみてください。
そういう女性がはたして天然だといえますか??

否!!

ですよ。
多くの場合そういう女性はたんなる“無知のごまかし”であるか、あるいは男の気を引こうと“天然アピール”をしている計算高い女性に過ぎません。
お盆休みを前に赤で修正指示を入れた原稿のPDFをメールで送ってきて、数時間後にふたたび「すいません!追加で原稿を発見してしまったので送ります!」というメールが届き、「え……まだあるのかぁ。しょうがないなぁ……ってか、修正指示多くね?」と添付ファイルを開いてみたら最初に送られてきたファイルと同じ内容の原稿だった……などというキュートな異次元体験をさせてくれるKさんの行動に計算が隠されてるでしょうか??

自信を持って否!!

です。

誰がなんと言おうと否!!全身全霊で否!!

です。
僕は深く深く反省しました。
“天然”はそもそも“天然記念物”を略した言葉であり、“天然記念物”とは人々の善意と努力によって保護されるべきものなのです。
そして嘘は嘘でも、優しい嘘はときとして人を幸せにできるのです。
僕は優しい嘘をつく善意の人になろうと思います。
というわけで、

Kさんは天然ではない。

と訂正の上、謝罪させていただきます。

Kさん、ごめんなさい。
今後ともよろしくね!
……てへぺろ。

さて告知です。
FM長崎さんのラジオ番組に電話出演させていただきます。
なんだか知名度のわりに異様にラジオ出演が多いわたくしでございます。
かわいがってくれる地元マスコミの皆様には感謝の念を禁じえません。
はっきりした掲載日がわからなかったのでここで事前告知はできませんでしたが、先日は長崎新聞さんのコラム『水や空』でも取り上げていただきました。
コチラからバックナンバーがご覧いただけます。
どうもありがとうございました。
このまま長崎に移り住んだらローカルタレントぐらいにはなれるのか?
と勘違いしてしまうほどの厚いサポートに感謝です。

というわけで、FM長崎さんのほうも、聴取可能な地域にお住まいの方はぜひともお耳を拝借したく存じます。

8月22日(水)
FM長崎 『Lai Lai -来来-』 12:00~13:00
子供のころはまともに読書したことすらなかったくせに、上から目線で読書感想文におすすめの一冊を紹介させていただきます。
12:20前後に出演予定です。

よろしくお願いします。

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 小さな黄色い傘が雨を弾きながら、自らも弾むように遠ざかっていく。
「危ないから、手すりの近くに行っちゃ駄目だぞ」
 豊中文雄ははしゃぐ我が子に注意を促し、隣を歩く妻の明美に微笑みを向けた。
「血は争えないって、このことね」
 文雄と、父とよく似た息子の奏太を交互に見ながら、明美は苦笑している。
「おうい、早く早く!」
 芝生の上に伸びた遊歩道を歩く奏太が、両親を振り返って飛び跳ねた。芝生のそばには低い手すりがあり、その向こう側には『宝来号』の堂々たる威容がそびえる。
 横浜港大さん橋国際客船ターミナルの細長い屋上フロアは、多くの人で賑わっていた。たんに散歩に訪れただけという近隣の住民もいるだろうが、雨天ということを考えると、おそらくほとんどが中国船籍の大型クルーズ客船を目的にやって来たのだろう。明朝には出港してしまうので、マニアの間で話題沸騰の『宝来号』をゆっくり見る機会は、今日しかない。
「本当に『クイーンメリー2』にそっくりだ」
 文雄は首と肩で傘の柄を挟み、首から提げた一眼レフのデジタルカメラを構える。
「奏太!」息子にカメラ目線を要求し、『宝来号』と同じフレームに収まるように構図を切り取った。
 シャッターを切る。
「上手く撮れた?」
駆け寄ってきた奏太が、文雄からカメラを奪い取った。ファインダーの液晶画面を覗き込み、不服そうに口を尖らせる。
「全部写ってないよ」
「そりゃ当然だ。この船は二三〇メートルもあるんだから、もっと遠くからじゃないと、全体は写らないんだ」
「二三〇メートルかあっ。僕は五十メートルを九秒で走れるから、二三〇メートルは何秒かなあ」
 体育テストの五十メートル走でようやく十秒を切ったことを誇りにする息子は、このところ、なにかと言えばそれを比較の基準にしている。
「何秒かわからないけど、とにかく大きいだろう」
 指を折りながら計算する息子の相手もそこそこに、文雄は『宝来号』に向けてカメラを構えた。濡れた地面に構わず膝をつく夫の姿に、妻は呆れている。
「すごい。すごいぞこいつは……」
 シャッターを切りながら、ひたすら感嘆の息が漏れる。
 文雄は子供の頃から大型客船が好きだった。小学校二年生のときの家族旅行で『さんふらわあ』に乗って、名古屋・鹿児島間を往復したのがきっかけだ。美しいペイントを施された巨大な鉄の塊が、波しぶきを上げて悠然と海を走る姿に圧倒され、大きくなったら客船の船長になりたいと憧れた。幼い夢が叶うことはなかったが、憧れだけは今も強く残っている。大さん橋国際客船ターミナルに海外からのクルーズ客船が入港するたびに、文雄は妻と息子を連れて見物に訪れていた。今では息子の奏太も、すっかり大型クルーズ客船のファンだ。
「遠くから見たらまるで『クイーンメリー2』だ」
 ファインダーから顔を上げ、うっとりと船体を眺める。
「あなた、何度も同じこと言っているわね」
「だって、そうじゃないか。おまえも見ただろう」
本家本元の『クイーンメリー2』が横浜に寄港した折にも、当然駆けつけた。『クイーンメリー2』はこれまでに二度、横浜に寄港している。ただしそのときには大さん橋国際客船ターミナルではなく、大黒ふ頭への入港だった。あまりの巨大さに、ベイブリッジの下を通過することができなかったためだ。結局そのことが徒となり、三度目の寄港地は大阪になり、その後は長崎・大阪と交互に寄港するようになった。本牧で婦人服の店を営む文雄は、比較的時間に融通が利くものの、さすがにそこまで出かけていくことはできない。
もう二度と見ることができないと思っていた船が、目の前にいる。サイズこそひと回り小さいものの、優雅でありながら雄々しいフォルムはそのままだ。
 文雄は家族そっちのけでウッドデッキのフロアを歩き回り、夢中でシャッターを切り続けた。
「明日も……必ず来るぞ」
 巨大な船体を眺めながら、決意を鼻から吐き出す。
 大型客船を見物するならば、やはり入港と出港は押さえたい。遠くから聞こえる汽笛、小さな影に過ぎなかった船体が、岸に近づくにつれてどんどん大きくなってくる迫力。旅立つ船を見送りながら、その行く先に思いを馳せるロマン。それらを体験できなければ、大型客船見物の醍醐味は半減するというものだ。
 残念ながら、今朝七時の入港に居合わせることはできなかった。得意先への配達の準備に追われていたためだ。しかし明日はとくに予定がない。出港の予定は明日の午前七時だ。朝に弱い奏太はぐずるかもしれないが、もうそうなったら一人でも出かけてくるつもりだった。
「最初は馬鹿にしていたくせに」
 近づいてきた妻が、すっかり童心に返った夫を笑っている。
「まあな、たしかにそうだが、これほどそっくりだとテンションが上がっちまうよ」
『宝来号』の情報は雑誌やインターネットで仕入れていたが、文雄は当初、冷ややかだった。あまりにも外観が『クイーンメリー2』に似すぎている。またあの国お得意の物真似かと呆れた。
 しかし動画サイトに載せられた進水式の映像で、初めて動く『宝来号』を見たとき、そのあまりの美しさと、水しぶきを高々と舞い上げる力強さに、文雄はすっかり魅せられてしまった。
「明日は早起きだ」
 文雄はカメラを構えながら、すでに横浜港を後にする『宝来号』の雄姿を描いていた。朝五時に目覚ましをかけて、六時にはターミナルに到着する。ベイブリッジと同じファインダーに収まる『宝来号』の画は、なんとしても押さえたい。
「危ないわよ、奏太!」
 妻の声で我に返ると、奏太が芝生を突っ切って手すりのほうへと駆けていた。慌てて後を追い、息子の身体を抱き留める。来るたびに思うが、ここの手すりは低すぎる。家族連れも多く訪れる場所だというのに、安全対策はとらないのだろうか。
「なにやってるんだ。危ないだろう」
 諭してみるが、息子は上の空だ。船のほうに向かって、大きく手を振っている。視線を同じ方角に向けてみると、港に接岸したサイドデッキからも、同じように手を振る姿があった。
 幼い、金髪の女の子だった。船員の制服を着た、浅黒い肌の男の腕に抱かれ、小さな手を左右に動かしている。
 今この瞬間、世界と繋がっているんだ。
 湧き上がる実感に、胸が膨らんだ。
「パパ、僕もあの船に乗りたいな」
「うん。いつか乗ろうな、必ず」
 しっかり頷くと、文雄は息子と一緒になって手を振り続けた。

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『消防女子!!』アウトテイク集も今回でひとまず終わりです。
今はやり終えた充実感と、反応の薄さへの徒労感に浸っているところです。
自分にお疲れ様でした!!
とCCレモンで乾杯!





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