※次回4コマは10月12日(火)更新。以後毎週火曜日に更新します。
「佐藤君、小説家になったらいいんじゃない?」
小学校六年生のときの担任だった金子先生は、僕の作文を読んでそう言いました。
そのとき、僕はこう答えたことをよく覚えています。
「やーだ!!」
当時の僕は読書といえばせいぜい少年ジャンプという子どもで読書にはまったく親しんでおらず、先生の発言の意図すらもよく理解できていませんでした。そのうえ、ただ原稿用紙に向かって文字を紡ぐ小説家という仕事を最上級に“イケてない”ものと捉えていたふしがあり、先生の言葉を運動が苦手な子どもに対しての慰めのように感じて、少しむっとした記憶すらあります。
今となっては金子先生に謝らねばなりません。
それどころか、多大な感謝を捧げなければならないでしょう。
これまで5年に及ぶ投稿生活の中で気持ちが折れそうなときにはたびたびあの言葉を思い出し、自分には小説家の素養があるんだっ!!と言い聞かせてきたのですから。
というわけで私、佐藤菁南はこのたび第9回『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞を受賞いたしました。
現在は編集者さんや選考委員の先生方からいただいたアドバイスをもとに、出版に向けて改稿作業を続けているところです。
締め切り直前の追い込みでしんどいとき、ひたすら「1200万、1200万……1200万で高級風俗……」とうわごとのように念じて乗り切ってきた経緯を考えると、優秀賞100万円というのは正直ものたりない結果ではあります。
しかしこれはすぐ有頂天になるお調子者の僕にとって、もっとも良い結果だったのかもしれないとも思います。
大金を手にしたらあれをしようこれをしようとひたすら煩悩に突き動かされて執筆を続けてきた僕が実際に大金を手にしてしまったら、それこそ遊び呆けて次回作を書かないまま数年が過ぎてしまうかもしれません。
あるいは吉原の風俗街に120回通って、4ヶ月であっという間に散財してしまったかもしれません。
それとも川崎のピンサロに2,000回通って、毛じらみまみれになったかもしれません。
いやいや渋谷の昼キャバに4,000回……(以下自粛)。
とにかく、ようやくここまで辿り着くことができました。
予定していた2年よりはだいぶ掛かってしまいましたが、ひとまず第一のハードルはクリアです。
……って、読書経験も乏しいただのバンドマンが2年で作家になるってどんだけ無謀な計画だったんだよ!!と、今となっては自分の浅慮が空恐ろしくなりますが(笑)。
こんなアホな僕がどうにかこうにかここまでやってこれたのも、ときには辛辣な言葉で批評や助言を与えてくれた友人たちや、このブログを通じてあたたかい励ましの言葉をくれた顔も知らない皆様、あとはなんかよく知らないけど見守ってくれた皆様のおかげです。
本当に本当に、どうもありがとうございました。
周囲の誰も信じてくれない、応援してくれないという状況だったならば、5年間書き続けることができたとは到底思えません。
社交辞令抜きに、そして僕自身の好悪すらも抜きして、これまで僕の人生に関わってくれた皆様方には感謝いたします。
いや本気と書いてマジで。
皆様一人一人に焼肉をご馳走したいぐらい。
そんなことしませんけど。
ってかできませんけど。
さて、浮かれてはいられません。
これからが本当の意味でのスタートです。
受賞作『羽根と鎖』は宝島社より来年刊行予定です。
筆名は“菁”の字がPC・携帯電話等では変換できず、検索する際に新人作家として不利になるというアドバイスから“佐藤青南”になります。
発売されたあかつきには、ぜひぜひ購入してやってくださいませ。
そしてAmazonなどにがんがんレビューを書き込んで、僕の本がまるで大ベストセラーのように偽装してやってくださいませ。
そして僕をホンモノの売れっ子作家に育ててください。
そうすれば僕は晴れて吉原の風俗に……(以下自粛)。
まー、とにかくですね……言いたいことは、今後ともよろしくお願いします!!ってことです。
と、こいつ長文を締めるのが面倒くさくなってきやがったなという雰囲気を露骨に漂わせつつ、受賞のご挨拶とさせていただきます。
水嶋ヒロには負けないぞ!!!
2010年10月5日
佐藤菁南(青南)
(僕の作品の冒頭部分が読めます。あとは選評とか、受賞コメントとかもろもろ)