海上警備行動と憲法9条2項の拘束 | 月刊誌『祖国と青年』応援ブログ

月刊誌『祖国と青年』応援ブログ

青木聖子とその仲間たちが、『祖国と青年』や日本協議会・日本青年協議会の活動を紹介したり、日々考えたことを綴ったりします!
(日本協議会・日本青年協議会の公式見解ではありません。)

 「祖国と青年」5月号では、元海上自衛隊の伊藤祐靖さんが、能登半島沖工作母船追跡時の貴重な経験についてお話いただいています。


 もともとは憲法改正DVDで、憲法9条の問題点として、この能登半島沖事案で立入検査をする際、自衛官が防弾ベストの代わりにマンガ雑誌を腹に巻いていたというエピソードを紹介していたのですが、その詳しい背景が、伊藤さんのお話から分かると思います。


 ただ、この事案と憲法9条はどのような関係にあるかということに関しては、必ずしもはっきりと表れているわけではありませんので、その点に関して少し補足をしておきたいと思います。




 まず、能登半島沖事案は初めて「海上警備行動」が発令されたケースになります。これがかかると警察と同等の武器使用が認められます。つまり、犯人の行動を止めるための発砲が認められるわけですね。これは逆に言えば、護衛艦は普段、いくら高性能の武器を搭載していても、一切使えないということです。


 そして、いわゆる「軍隊」として武器を使用できるのは、「防衛出動」が発令された時です。これは今まで一度も出されたことはありません。海警行動は能登半島沖事案を含めて二度あります。


 あれ? 「みょうこう」は防衛出動で出港したのでは? と勘違いする方もいるかもしれませんが、あれは「防衛出動」ではなく「緊急出港」です。海警行動もかかっていませんから、不審船を見つけてもただ追跡することしかできず、海保に連絡して海保に対処してもらうわけです。


 さて、外国の軍隊には交戦規定「ROE」はありますが、海警行動、つまり警察と同じ程度にしか武器を使用してはいけないなどという規定は存在しません。では、なぜ日本だけこんなへんてこりんなシステムになっているのでしょうか。


 憲法9条2項で「交戦権」を否認しているからです。「交戦権」を認めない国が「交戦規定」を作れるはずがありませんね。そして自衛隊は、武力攻撃事態と存立危機事態においてのみ必要最小限度の「武力の行使」が認められることになっています。


 では、「みょうこう」が警告射撃をしたのは何なのか? あれは武力の行使ではないのか? といった疑問が当然出てきますが、あれは「武器の使用」なのです。つまり、警官が発砲するのと同じだから、「武器の使用」であって、「武力の行使」ではない、というわけなのですね。


 9条2項に「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」とあるため、「自衛隊は戦力ではない」という詭弁を弄さざるを得ず、同じく「国の交戦権は、これを認めない」とあるため、交戦規定を作ることができない、ということなのです。