「祖国と青年」3月号、今月の主張 | 月刊誌『祖国と青年』応援ブログ

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青木聖子とその仲間たちが、『祖国と青年』や日本協議会・日本青年協議会の活動を紹介したり、日々考えたことを綴ったりします!
(日本協議会・日本青年協議会の公式見解ではありません。)

 「祖国と青年」3月号の巻頭言は、「日本は国家の非常時に対応できるのか」と題して、別府正智さんが書かれていますので、以下、ご紹介します。



フランス大統領の憲法改正宣言


「我々はテロに対応するために、憲法を進化させなければならない。憲法の条項はもはや適当ではない」


 パリ同時多発テロから六日後の昨年十一月十八日、フランスのオランド大統領は議会で演説し、憲法改正への着手に言及した。未だテロ首謀犯の確保に至ってない中での発言である。


 この度のテロに対するフランスの対応は極めて迅速であったと聞く。百三十人以上の死者を出す大惨事の中にあって、治安当局と軍隊の共同展開や救命救急活動により被害拡大を抑え、多くの国民の命を救うべく懸命な努力が行われた。同時に、危険人物への令状なしの家宅捜索やカメラ等の監視活動を三千カ所以上行い、警戒を続けた。このような動きを可能にしたのは、「非常事態宣言」を発動し、非常事態法に基づく措置がなされた為である。


 しかし、現行の非常事態宣言は特別法に基づくため、令状なしの家宅捜索等は、憲法裁判所の判断次第で問題視される可能性がある。その為、憲法上の位置付けを明確にすることが必要であり、憲法改正の発言へと大統領は踏み切ったのである。


 既に、本年二月十日、令状なしの家宅捜索を可能にする非常事態宣言の発動要件を緩和する等の憲法改正案が下院で採決され、今後、上院での審議へと移る。フランスは、テロへの対応に奔走する最中、同時並行で非常事態に対応できない国家の法改正にも眼を向け行動する。国民を守る国家の在り方を見せつけられた。


 憲法は、言うまでもなく国の基本法である。本立って、末はじめて定まる。国の基本法を正さずして、社会の安定を築き、国民の命を守ることはできない。フランスの対応に、そのことを改めて教えられる。


 誰もが等しく抱く戦後日本への疑問


 前号の「憲法の時間です!」でも取り上げたが、映画「海難一八九〇」は弊誌読者も鑑賞した方が多いであろう。日本とトルコの友好を描いた作品だが、一方で、独立国家として当然の「国民の命を守る」行動を何故日本だけが出来ないのか、在外邦人救出を巡る史実を基に描かれた場面は、観た者へ痛烈な問いを突き付ける。


 当時、救援機派遣を決断したトルコのオザル首相に、直接交渉した森永尭氏(伊藤忠商事イスタンブール事務所長)は、この救出劇において誰もが等しく抱く疑問を、後に両国関係者に問いかけた人物でもある。なぜ日本は救援機を出さなかったのか、そしてトルコはなぜ救援機を出したのか。


 この問いに対する日本側の回答は、「航空機の安全が保障されなかったから救援機を出さなかった」であり、トルコ側の回答は「日本人の安全が保障されなかったから救援機を出した」であった。森永氏は、「安全の保障がなかったから」という全く同じ理由で真逆の結論が出されたことに慨嘆している(『トルコ 世界一の親日国』明成社)。


 戦後日本で謳われる「国民の命を守る平和主義」が、実際には国民を守って来なかったことを如実に表している。この度成立した安全法制も、前号でも解説した通り、在外邦人の救出には未だ厳しい現実がある。


 国民の命を守る憲法改正を一刻も早く


 我が国にはテロによって未だ還ることのできぬ在外邦人がいる。北朝鮮による拉致被害者である。


 先日、北朝鮮が拉致被害者らの調査を打ち切った。日本政府が北朝鮮の核実験と事実上の弾道ミサイル発射に対して独自制裁措置を決めたことに対し、日朝間合意を破棄する裏切り行為と非難し、拉致被害者らの再調査を担当してきた特別調査委員会の解体を発表した。言語道断である。


 日本は戦後一貫して偽りの平和主義で塗り固められた現憲法の下で、国民の命を守れないという現実に向き合わぬままでいる。国民を守る憲法に一刻も早く改めなければならない。