皇太子殿下は昨日、56歳のお誕生日をお迎えになりました。
お誕生日に際しての記者会見のうち、終戦70年に関して述べられたお言葉をご紹介します。
戦後70年という節目の年に,先の大戦に関する様々な展示やお話を見聞きし,戦争によって日本を含む世界の各国で多くの尊い人命が失われ,さらに多くの方々が大変つらく悲しい思いをされたことを再認識し,大変痛ましく思うとともに,改めて戦争の悲惨さと平和の尊さに深く思いを致しました。そして,歴史の教訓に学び,このような痛ましい戦争が二度と起こらないようにしなければならないとの思いを強く致しました。
天皇皇后両陛下には,昨年4月には,ご訪問になったパラオ共和国で,また,先月はフィリピン共和国において,国籍を問わず先の戦争で命を落とされた方々に対して,心を込めて慰霊をなさるとともに,平和への強い思いをそのお姿で世界にお示しになりました。私たちも,そうした両陛下の平和を思うお気持ちをしっかりと受け継いでまいりたいと思っておりますし,また,私たちのみならず,多くの方々が両陛下のご訪問を通じて,先の戦争についての理解を深められたのではないかと思います。私自身,昭和40年以降,毎年のように,夏の軽井沢で,両陛下とご一緒に沖縄豆記者の皆さんにお会いしたり,戦後引き揚げてきた方々が入植した軽井沢にほど近い大日向の開拓地を両陛下とご一緒に何度か訪れるなど,戦争の歴史を学び,そして,両陛下のお気持ちに直接触れてきております。また,両陛下からは折に触れて,私たち家族そろって,疎開のお話など,戦時中のことについてうかがう機会があり,愛子にとってもとても有り難いことと思っております。
御文庫附属庫や玉音放送録音原盤の話については,その場所を実際に拝見したり,玉音放送録音原盤で昭和天皇の肉声をはっきりうかがうことが出来,深い感慨を覚えました。戦争を知らずに,平和の恩恵を生まれたときから享受してきた私たちの世代としては,各種の展示や講演,書物,映像など,過去の経験に少しでも触れる機会を通じて,戦争の悲惨さ,非人道性を常に記憶にとどめ,戦争で亡くなられた方々への慰霊に努めるとともに,戦争の惨禍を再び繰り返すことなく,平和を愛する心を育んでいくことが大切だと思います。そして,そうした努力を次世代にも受け継いでいくことが重要だと思います。
同時に,世界では,いまだに紛争が続いている地域がいくつもあります。そのような紛争の惨禍が終結し,いつの日か世界全体に平和が訪れることを願っております。