「祖国と青年」4月号では、アジア自由民主連帯協議会会長のペマ・ギャルポさんのインタビューで、アジアにおける中国の脅威の実態について明らかにされていますが、中でも象徴的なのが中国の「真珠の首飾り戦略」です。
中国は良くも悪くも、こういう遠大な構想を立てて着々と手を打っているということを、私たち日本人はしっかり認識しておく必要があると思います。
ペマさんのインタビューから、その「真珠の首飾り」に関する箇所をご紹介します。
――インド洋においては、中国はパキスタン、スリランカ、バングラデシュ、ミャンマーと、インドを取り囲むように港湾施設を建設しているそうですが、その実態についてお聞かせ下さい。
ペマ パキスタンのグワダル、バングラデシュのチッタゴン、ミャンマーのシットウェーなどで、中国の投資によって次々に近代的な港湾施設が建設されており、そのほとんどに中国海軍が関わっています。中国側は商業用港湾施設だと説明していますが、例えばグワダルの港を見てみると、中国海軍の軍人の姿ばかりです。こうした戦略は八〇年代末から進められ、ほぼ完成に近づいています。これらの拠点を線で結ぶと、ちょうどインドを取り囲むような形になることから、「真珠の首飾り」戦略と呼ばれています。
シットウェーには中国海軍の燃料補給基地が整備され、同時に雲南省まで繋がるパイプラインも敷設されています。チッタゴンでは約九〇億ドルを投資して港湾施設を造っていますが、完成すれば現在の三倍の荷揚げ能力になり、さらに二〇一〇年に中国とバングラデシュは両国を繋ぐ交通インフラを整備することで合意しました。今後、チッタゴンが中国の貨物輸送の重要拠点になることは間違いありません。その他の周辺国との整備も進んでいます。
こうした交通網の基盤となるのが、二〇〇六年に全通した青蔵鉄道です。チベットのラサからバングラデシュに向かう路線のほか、ウイグルのカシュガルからピサを経てキルギスタン、カザフスタンへと繋がる路線、パキスタンを通過してアラビア海に出る路線、いずれも石油輸送を睨んでの鉄道建設であり、遅くとも二〇五〇年には完成します。そして、青蔵鉄道の建設・管理は軍が主導しており、事実上の軍事路線です。
しかし一方で、こうした「真珠の首飾り」のインド包囲網は、確かに四、五年前から中国の有利に展開していたのですが、その中国の優位性がここ最近になって変わりつつあるように感じています。
例えば、ミャンマーは中国の傲慢なやり方に限界を感じ、これまでのように中国一辺倒ではなくなりました。アメリカとの関係を改善し、民主化の方向に軌道修正しようとしています。また、スリランカも一時の中国との熱烈な関係はなくなりましたし、モルディブという小さな島国でも、中国が昨年十一月に首都マレに大使館を置いたのですが、そのことに反対する運動が起こりました。