今日は、麻布十番に来ている。
麻布十番にある、精神分析医の斎藤学氏が運営している「さいとうクリニック」のデイナイトケアが、5月末で25年の幕をとじるため。
(なくなるのはデイナイトケアという仕組みだけで診察は続けるそうだが。)
斎藤学氏は、アルコール依存や摂食障害治療の第一人者。
アダルトチルドレン、共依存、ネグレクトという言葉を日本に紹介し、児童虐待やDVを誰も問題視していなかった頃に警鐘を鳴らし、手弁当で国会に通い、児童虐待防止法の制定を推進したひとり。
精神療法もカウンセリングもまだ一般的ではなく、精神病院でのみ行われていた時代に、セラピーを生きづらい人が誰でも受けられるものとして日本に広めた人。
専門家主義を否定し、当事者が語り合う中で回復する場である自助グループを日本に広めた人。
(薬物依存の自助グループであるダルクは、斎藤学氏の患者だった人が作ったもの)
べてるの家は、さいとうクリニックを真似て作ったと向谷地さん(べてるの家を作った人)が言っていたらしい。
私は、この斎藤学氏と二十年前に出会ったことで、人生が変わった。
そのへんの話は、斎藤学氏との共著『ヘンでいい。』に書いた。
今でこそ、いろんなセラピーや、スピリチュアルなワークやら、自己啓発やらが巷にはうんざりするほど溢れているけれども、20数年前には気功やヨガですら怪しいと言われていたのだから。
コーチングもまだなかった。
瞑想をやっている人なんて、ほとんどいなかった。
(その頃に私は、フリーライターとして、そういうのを紹介する記事を書いていたのだが。)
心の問題とまではいかなくても、生きづらいと感じている人は、どこにも行き場がなかった。
家族の問題、いじめ、差別、ひきこもり、リストカット……etc.
二十数年前はLGBTもまだ認知されていなくて、ゲイだということを親に否定されて自殺する人もいるくらいだった。
だから、麻布十番にある「さいとうクリニック」は、日本中から行き場がないありとあらゆる人が集まってきていた。
精神科クリニックというイメージとは全く違う。
エリートや高学歴やアーティストなどの方々も多かった。
フツーよりまともで優秀でちゃんとしている人達。
頑張りすぎて生きづらさを感じている人達。
年代も多種多様。
児童虐待の被害者も加害者も、DVの被害者も加害者も、アルコール依存も摂食障害も区別なく、同じ場で語り合っている。
地下1階から8階までのビルの中では、当時は日本中でここでしか受けられない最先端の心理療法やグループワークが朝から晩まで開催されていて、それを健康保険で一日中受けられる。
(これをデイナイトケアという)
お昼ご飯も夕ご飯もついている。(デイナイトケアの費用に含まれている。)
図書館も仮眠室も保育室もあって、子供を虐待してしまうお母さんはここに来れば、子供を預けて一日中好きなことができる。
また、一日分のデイナイトケアの費用を払えば、その中で診察もカウンセリングもソーシャルワークも受けられる。
また、このビルの中では、常にオープングループが開催されていて、輪になって当事者達が自分の問題を話し、人の話に耳を傾けている。
(言いっぱなし聞きっぱなしで、助言も批判もしないことが原則)
そうやって、自分以外の多種多様な人の話を浴びるように聞いている内に、世界観や価値観や視点が広がっていき、勝手に回復していく。
(私がそうだった)
一日のプログラムのうちのメインイベントは、斎藤ミーティング。
数十人(時には100人以上)のメンバー(クリニックに通っている人)の前で、マイクを使って自分のことを話し、斎藤先生からコメントをもらえるグループ。
追い詰められていて、他の治療施設では見当はずれのクスリを処方されるだけでどうしていいかわからなかった人が、斎藤先生のアドバイスや助言でどれだけ救われていったか。
(斎藤先生は、自分は治してない、患者が勝手に治ったと言うのだが)
もう、どれもこれも想定外の助言や関わり方で、普通の治療法とは全く違う。
その彼のやり方をたっぷり10年くらい、浴びるようにそばで見続けることができ、それが私の今やっているセラピーの基盤となっている。
思えば、なんて贅沢な経験をさせてもらったのだろう。
斎藤先生には感謝以外の言葉が浮かばない。
こんな経費がかかるデイナイトケアを25年も続けていたのだから、それだけでも信じられない。
25年続けたのが奇跡だ。
こんな場所はこれまでもなかったし、これからもないだろう。
それをリアルタイムで経験できた。
自分の人生はなんて幸せなんだろうと。
海外に行ったり、お金だしてするどんな体験よりも、深い経験をさせてもらった。
その「さいとうクリニック」のデイナイトケアが5月末で終わるというのだ。
クリニックは残っていて、斎藤先生や他のドクターの診察は受けられる。
でも、デイナイトケアという、一日中保険でさまざまなプログラムを受けられるというシステムがなくなる。(そりゃあ、そうだよね。経費がかかりすぎるもん。採算があわなくなって当然だ。)
ここ10年くらいは、私も何だかんだと忙しくなって足が遠のきがちだった。
でも、何かあるとふらりとクリニックに行き(日曜日以外は毎日やっていたから)、仲間や斎藤先生の顔を見て、面白そうなプログラムに参加し、仲間の話を聞いているだけで「無理しなくていい」と思えた。
そういえば数年前には、クリニックで呼吸法や瞑想やセルフケアのグループをやらせてもらっていたんだっけ。
そこで、自称ひきこもりのN君とも再会し、クリニックの外で私のやっている場にも来てくれるようになったんだった。
このデイナイトケアがなくなる。
あと数日で。
そして私より長くさいとうクリニックにいたN君も、きょう斎藤ミーティングで最後のシェアをするというから……。
それで行ったんだけど…。
あー
今日は本当に行ってよかった。
斎藤クリニックとデイナイトケアに救われた人達が地方からも多勢集まり、斎藤ミーティングでは部屋に入りきれない人が外まであふれ出し、床に座っている人や立っている人もいた。
100人近い人?
クリニックの当初から25年近く通って、今は教授になっている人が来て思い出を語っていた。
岐阜から来ている人もいた。
知っている懐かしい顔もいっぱいあった。
みんな死なないで生き延びたんだね!!
それだけで十分じゃないか。
ある人がこう言っていた。
「目の前に流れ着いた流木にしがみついたら、さいとうクリニックにたどり着いて、斎藤先生がいた。」と。
そう。
この流木にしがみつくことがなかったら、どこに流されていたかわからなかった。
たぶん、あそこにいた人達が、みんな同じように思っていたはずだ。
ある人が、斎藤先生が虐待された人に対して、「あなたは自分が可愛そうだと思っている特権階級だ」と言って怒っていたというエピソードを語っていたけど、
そうなんだよね、斎藤先生はどんなにひどい環境にいた人に対しても、絶対に同情したりすることはなかった。
そういえば、私は自分がウツだと思っていて(斎藤先生からは後にウツじゃないと言われたけど。笑)、症状的なことばかり話していたら、「私はあなたの症状に関心があるわけじゃないんだよ!
あなたそのものに関心があるんだよ!!!」と怒り出したっけ。
斎藤先生は、いつもいつも「私はただのおじさんだ。あなたには力がある」と、手放しで患者の力を信じていた。
今日もそんなことばかり言っていた。
あなたたちを変えることは、私には絶対にできない。変わる時は、あなたたちが変わりたいと思った時だ、とか。
あなたたちの方が、私より先を言っている、とか。
なんだか、斎藤先生や仲間の話を聞いていたら、泣けてきた。
みんなもそうだったと思う。
すすり泣きが聞こえていた。
あそこで過ごした時間と経験は、私にとって最大の宝だと思う。
あんな治療者も、あんな場も、他にはない。
どこにもない。
自分は本当に幸運だった。
斎藤先生、ありがとう。
下記が、斎藤学氏と共著で書いた『ヘンでいい。』
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「心と魂を調律するダイアローグセラピー」
人はそれぞれ独自の周波数を持って生まれてきます。
その周波数はあなただけの独自のもので、この地上にひとつだけの周波数です。
すべての人がそれぞれオリジナルの音(周波数)を持っていて、それが響き合い、交響曲のような美しい音楽を奏でているのが地球だと私は思っています。
その響きを思い出し、本来の自分にしか奏でられない音を奏で、自分にしか歌えない歌を取り戻すための三回セッションです。
(歌とか音とかはもちろんメタファーですが、つまり、自分の魂の個性を思い出すためのセッションです。)
1時間のセッションをスカイプを使って3週続けて行い、ダイアローグ(対話)とエネルギー調整で、自分が自分の人生の創造者であることを思い出していきます。
毎週1回スカイプでセッションし3週連続。
3回で2万円(税込・事前振込)。
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