Borderlands 2(以下2)でBorderlands(以下初代)のPCだったRolandがHandsome Jackに射殺されてから5年、Borderlands 3(以下今作)で2のPCだったMayaがTroy Calypsoに殺害された。
「前作のPCが敵に殺害される」といった部分は同じだが、実際に受ける印象は大きく異なる。
まず、2での事件。Borderlands The Pre-Sequel、通称1.5、前日譚の発売前ですら次のことが物語から読み取れる。
Rolandを直接殺害したのは、大企業Hyperion社CEOであり、エイリアンの遺跡Vaultを巡って、PCや惑星Pandoraに住まうモノと明確に敵対するHandsome Jack。
PCらVault Hunterに懸賞金をかけてまで、始末しようとしてくる敵対者だ。
Rolandが殺害されるのと時を前後して、PC・初代PC Siren Lilith・その恋人の初代PC Rolandは、特殊能力であるSirenを持つ少女AngelをHandsome Jackの手から救い、そして殺した。
このAngelは初代から登場する。プレイヤーのナビゲーターの役割を担っており、PCから見れば脳内に直接語りかけてくる存在で、好き嫌いは兎も角、身近なナビゲーションAIだった。
初代から登場するため、RolandやLilithも面識がある。
2でAngelに導かれたPC達は、AngelがAIなどではなく、Lilithと同じ特殊技能Sirenを持つ生身の人間で、Handsome Jackの「野望実現」と「暴走する力の制御=娘の保護」を兼ねた機械に接続されるHandsome Jackの実子であることを知る。
Angelは解放を望んでおり、PC達としては、Handsome Jackの野望を止めるために解放=死を与えざるを得ない。Handsome Jackは実子であり、野望の手段であるAngelを喪えない。
Handsome JackはAngelを捕らえる施設中枢との戦闘中に「懇願」の通信を送り続けてくる。
この関係性の状況から、結果的にHandsome JackはAngelを喪い、Angelを殺害した復讐としてRolandを自らの手で銃殺し、Angelと同じSirenであるLilithをただただ手段として攫い、PCには「懸賞金取り下げ=自分の手で確実に復習する」と宣戦布告をして去る。
物語開始時から今まで、生身も明確な喜怒哀楽も晒したことのないHandsome Jackが初めて「剥き出し」になった瞬間だった。
次は今作での事件、2 PC Mayaの殺害になる。
Mayaを直接手にかけたTroy Calypsoは、姉であるTyreen Calypsoと共にVaultの力を狙う、PCの敵対者。
Tyreen Calypsoは物語開始早々、Lilithが初代から持ち続けているSirenの力を吸収し、問題なく使いこなす衝撃のデビューを飾っている。
しかし、ここで敵意を向けられているのは、直接手にかけたTroy Calypsoではない。
PC側のNPCであるAvaが敵意の中心にある。
Sirenの力を持つ2 PC Mayaと面識のある元Siren Lilithは、Calypso Twinsに対抗するためにMayaを召集した。その際についてきたオマケがAvaだ。
AvaはMayaに師事しているが、Vault自体やVault Hunterに憧れを抱きすぎており、現実が見えていない。思慮のない発言が多いのをプレイヤーは1時間も経ずに体感する羽目になる。
こうした存在は存在そのものが危険だ。
そのため拠点に留守番させ、PCとMayaは銃を手に、数あるVaultのうち1つを開いた。そこへ置いてきたはずのAvaが現れ、言葉が通じないほどの興奮状態に陥ってしまう。MayaとAvaを置き、PCはVaultに入場する。
プレイヤーがVaultを堪能したのち、Vaultから退場すると、突如Calypso TwinsがLilithの力を使ってワープしてくる。
Calypso Twinsの狙いはPCら3人ではなく、VaultのGate GuardianであるThe Rampagerの死体に残された力で、Tyreen Calypsoはそれを吸い上げ始める。
ここで逃走を選択した元Vault Hunter Mayaだが、Vault Hunterに幻想を抱きすぎるAvaが食ってかかってしまう。隙が生まれてしまった。
Lilithの力でワープしたTyreen CalypsoにAvaが捕らわれ、Mayaと距離を取られる。すかさず、MayaはTroy Calypsoに裸締めをかけて捕らえ返すも、MayaはTroy CalypsoによってSirenの力どころか「全て」を吸われてしまい、1冊の本を遺して灰燼と化してしまった。
2 PCであるMayaが、プレイヤーにとっては出会って間もない謎のクソガキのために呆気なく退場してしまう、ただただ後味の悪いシーンとなった。
その上アレは、2でのRolandに続き、旧知の友Mayaをも亡くした元Siren Vault Hunter Lilithに対して強く当たり散らし、積極的に敵意を稼いでくれる。
Calypso Twinsに向けられる敵意を逸らす、Tank的な役割を担っているのがAvaだ。
Rolandの死を巡ってはCatharsisを感じたが、Mayaの死はCatharsisを伴わないTragedyで終わってしまった。Avaへの敵意だけが止まらない。
「前作のPCが敵に殺害される」といった部分だけが同じで、残った感情も受ける印象も、何もかもが異なるのだった。
今後発売されるであろうDLCにおいて、Lilith・Maya・Avaの掘り下げがあることを願う。