前回に続いて、しつこく二宮金次郎を宣伝したいと思います。


私が、「二宮金次郎がひょっとしたら生活改善のモデル的人物なのかも」と思ってから読んだ本に、三戸岡道夫の「二宮金次郎の一生」という本があります。そこで以下の文章があってはっとしました。ちょっと長いですが引用します。


(54ページから引用)

 ある時一人の女中が、借金の申し込みにやってきた。

「いいですよ、お貸ししましょう。でも、どうやって返すのですか」

「お給金で返します」

「お給金はどのくらい貰っているのかね」

すると女中は、急にうつむいて黙ってしまった。金次郎が、

「どうしたのかね」

とたずねてみると、女中は小さな声で、

「実はお給金はかなり先まで前借して、すべて親に渡してしまっているのです」

とため息をつき、絶望的な眼で金次郎の顔を見た。金次郎はしばらく考えていたが、やがてにっこり笑うと、

「お給金で返せなくても、いい方法がありますよ」

「えっ、ほんとうですか」

女中は驚き、眼を輝かせた。

「あなたの仕事は台所でしたね」

「はい、そうです」

「それなら毎日ご飯を炊いていますね。そのとき使う薪を節約して、それで返せばいい」

「えっ、薪で?」

女中には意味がわからなかった。

「たとえばご飯を炊くのに五本の薪を使っていたら、これを三本で炊けるように工夫するのです。そしたら薪が二本節約できるではありませんか。その二本をわたしが買ってあげます。そうすれば返すお金ができるではありませんか。」

「そうですね」と女中は目を輝かせたが、

「でも…」

と自信なさそうであった。金次郎は、

「あなたがいまやっている炊き方では薪は節約できません。その秘訣を教えましょう。五本で炊いていたのを三本にするには、まず鍋の底についている鍋炭を落とすことです。そうすれば薪の燃焼がよくなります」

(なるほど)

というように女中はうなずいた。

「次に三本の薪は、火が鍋の底に丸く当るように置く。すると薪は完全燃焼して煙も出ず、火が鍋の底によく当ります。そうすれば薪を五本使わなくても三本ですみ、二本が節約できます。一日では薪二本と思うかもしれないが、これが十日になれば二十本、百日になれば二百本の薪が節約できるではありませんか」

口にこそ出さないが、これこそ金次郎心の奥に秘めている積小為大(小を積んで大を為す)の理念があった。

「わかりました。すぐやってみます」

「薪が完全燃焼すると、残りの火の火力も強く、よい消炭が出来ます。これであとのお惣菜ぐらいは十分煮ることができますよ。こうして節約した薪は毎月わたしが買ってあげますから、そのお金で返せばいい。ではお金をお貸ししましょう」

といって、金次郎は金を貸した。女中はうれし涙にくれるとともに、これまで考えてもみなかったご飯の炊き方、薪の節約方法を教えられて、なにか眼の前に別の世界が拓けたように感じ、台所仕事にやり甲斐を感じるようになった。


生改さんのかまどの改善を彷彿とさせませんか?


そして、この本では次のように続きます。


(58ページより引用)


 金次郎の節約は『けち』というのではなくて、それぞれの物の本質に従ってその持味を生かしていく(物の徳を生かす)ことが倹約となり、生活の合理化になるという、後の『報徳の精神』につながる考え方であった。そして、その合理化が積もり積もって大きな経済的効果となり、自分の上に還ってくるのである。


すごい。

「けち」という物事の見方を、見事に「合理化」という知的で誇れる精神の高みに昇華しております。


私は生活改善という運動が広まったことのひとつの要因として、ただ単にやっていたのでは、みみっちくて貧乏くさくて恥ずかしいかもしれない行為を、誇るべき先進的な行為に変えたことが大きいのではないかと思います。


話が一挙にとびますが、ベトナムで、ハノイ市3Rプロジェクトというものに関わりました。このプロジェクト、ハノイ市民にごみの分別をうながし、Reduce、Reuse、Recycleの精神を定着させ、生ゴミをコンポスト化することによって、ゴミを減らし、満杯間近のゴミ処理場を延命させるといった内容のプロジェクトです。


この導入時にJICAがやったことが、若い世代をターゲットにした大々的な宣伝です。

「ごみは汚い、ごみは行政に任せておけ」という観念があるままでは、プロジェクトが難航することは明らかでした。そこで、ベトナムの坂本龍一と呼ばれている作曲家にアップテンポでおしゃれな3Rソングを作ってもらい、その妻の歌手に歌っていただきました。このコマーシャルでは町の掃除婦・夫が歌とともにほうき片手に華麗に踊り、誰もが知っている有名なCMとなりました。


この最初の大宣伝が功を奏し、市民を一挙に巻き込み、行政がたじたじとなるような世論パワーの助けを受けて3Rプロジェクトが推進されています。ちょうど1年前からは、何と大学生が中心となって3RボランティアーズというJICAのプロジェクトを支援するボランティア団体が結成されています。(すごいですねえ)


ということで、蛇足ですが、最初のイメージ作りが肝心、ということで無理やり今日のブログをまとめてしまいます。


(雅)