【原 文】
 旧里(ふるさと)や臍の緒に泣(なく)としの暮
宵のとし、空の名残おしまむと、酒のみ夜ふかして、元日寝わすれたれば、
 二日にもぬかりはせじな花の春
  初  春
 春立(たち)てまだ九日の野山哉
 枯芝ややゝかげろふの一ニ寸


【意 訳】
 旧里や臍の緒に泣としの暮
大晦日の夜は、今年最後の空の惜しもうと、酒を飲み夜更かしをして、元日の朝は寝坊してしまい、
 二日にもぬかりはせじな花の春
  初春
 春立てまだ九日の野山哉
 枯芝ややゝかげろふの一ニ寸


【注 釈】
〇宵のとし…大晦日の夜、除夜。

〇空の名残…服部嵐雪「若水」に「そらの名残おしまんと、旧友の来りて酒興じけるに、元日のひるまでふし、明ぼのみはづして…」という詞書がある。 
〇〈枯芝や~〉…「やや」はようやく。