【原 文】
有人(あるひと)の會
ためつけて雪見にまかるかみこ哉(かな)
いざ行(ゆか)む雪見にころぶ所まで
ある人興行
香を探る梅に蔵見る軒端(のきば)哉
此間(このあいだ)美濃・大垣・岐阜のすきものとぶらひ来りて、歌仙、あるは一折(ひとおり)など度々に及(およぶ)。
【意 訳】
或る人の会、
ためつけて雪見にまかるかみこ哉
いざ行む雪見にころぶ所まで
ある人の俳諧興行にて、
香を探る梅に蔵見る軒端哉
この間、美濃・大垣・岐阜の俳諧を愛する者たちが訪ねて来て、歌仙を巻いたり、または半歌仙を巻くこと数度に及ぶ。
【注 釈】
〇有人…十一月二十八日、名古屋昌碧亭での会。
〇「ためつけて」…「ためつける」(紙子の皺をのばす)。
〇ある人興行…防川(ぼうせん)亭の連句の興行。
〇歌仙あるは一折…「歌仙」は三十六句の連句。懐紙二枚に記録する。「一折」は懐紙一枚に記録するもので「半歌仙」とも。