昨日のことをもうちょっと書いてみたい。

アメリカ、そしてアメリカ大統領・トルーマンはなぜ日本に原爆を落としたのか。

よく言われているのは、

 

戦争を早く終わらせるため

 

と理由である。

確かにそれはあるだろう。

戦争が早く終われば当然、米兵の戦死者は減る。

それゆえ今でもアメリカでは原爆投下は正当だった、という考えもあるし、トルーマン大統領や、原爆を作ったオッペンハイマーを英雄視する人々もいる。

 

しかし、もう一つ「意図」があった、と言われる。

 

「ソ連」の日本侵攻の前に戦争を終わらせたかった。

 

というもの。

なぜ、ソ連の日本侵攻を阻止したかったか。

 

「共産圏」の拡大を阻止したかったから。

 

であろう。

そんな大国の都合で、何十万人もの命を理不尽に奪ったのか、と思うと怒りだったりやるせない思いが湧いてくる。

 

しかし、実際、戦争が長引いたらどういう歴史になっていただろうか。

ソ連と日本は昭和16年(1941)に日ソ不可侵条約を結んだが、昭和20年(1945)5月にドイツが降伏すると、ソ連に「余力」が生まれ、日本侵攻を本格的に狙い始めた。

同年2月のヤルタ会談(ソ連、イギリス、アメリカ)で、ドイツが降伏した3カ月後に「ソ連の日本参戦」の密約が決まっていた、という。

当時、アメリカは、日本を降伏させるためにはソ連の力が必要と考えていたのだろう。

 

しかし、その後、原爆製造に成功したアメリカに心境の変化が生まれたのだろう。

原爆によって日本をアメリカ単独で降伏させることが出来る。

そして、その後の統治はアメリカ主導で行いたい、と考えだ。

それゆえ原爆投下を急いだ、と考えることが出来る。

ソ連が日本に侵攻したのは8月9日、広島原爆投下は8月6日である。

 

もし、実際、アメリカが原爆を使わず、戦争が長引いていたら日本はどうなっていただろうか。

ソ連の侵略は「北方四島」に留まらず、「北海道」全体を完全に占領してしまっただろう。

ひょっとしたら「東北」まで占領されたかもしれない。

 

その状態になってから日本が降伏したらどうなっていたか。

ソ連の占領が既成事実としてある以上、今の朝鮮半島のように東日本をソ連、西日本をアメリカが統治…ということになっていたという可能性が高い。

そうなれば日本は東ヨーロッパが経験した悲劇を歩むことになっていたかもしれない。

ソ連侵攻の際、北方四島で苛烈な虐殺や強姦が行われた。

 

だからといって原爆が許されるものではない。

アメリカやソ連の横暴はもちろんあるが、すでに敗戦は決定的であったにも拘わらず、意地を張って降伏をためらった日本政府の責任も重大だ。

 

歴史というのはほんの少しのタイミングやずれで大きく変わってしまうことがなんとなくわかる。

 

 

林誠司~句会、講座一覧