(東京都大田区大森 JR大森駅前)

 

今日は大田区大森の「新山王句会」。

今日はなかなかいい句が多かった。

一人、開始時間を間違えて来られた方がいて、句会の終わりがやや遅れた。

私は結構、こういうことには大らかである。

 

ただ、夕方16時台、17時台は結構電車が混む。

遅れれば遅れるほどどんどん混んでくる。

大森から東京駅に出て中央線で帰ったのだが、4分くらい電車が遅れた影響もあるのか、新宿駅で大量に人が乗り込んで来てラッシュ状態だった。

やはり、新宿駅は17時前に通過をしたいものだ。

 

(東京都杉並区西荻窪)

 

西荻窪駅のすぐ近くに趣のある民家がある。

いかにも「武蔵野」という感じの民家だ。

改築されて今はレストランになっていて、このあたりでは結構有名な店だ。

一度入ってみたいと思って、ネットで調べたことがあるが、なんか「健康志向」のレストランのようなので、あまり興味が無く、いまだに入っていない(笑)。

 

【原 文】
金沢の北枝(ほくし)といふ者、かりそめに見送りて、この所まで慕ひ来る。

所々の風景過ぐさず思ひ続けて、をりふしあはれなる作意など聞こゆ。

今すでに別れに臨みて、
  物書きて扇引きさくなごりかな

 

【意 訳】
金沢の北枝という者がすぐそこまでと見送りつつ、ここまで慕って付いて来てくれた。

道中の風景を見逃さず句を作り、折につけ趣のある句を聞かせてくれた。

今、別れるに際し、
  物書きて扇引きさくなごりかな

ー「おくのほそ道」福井・天龍寺ー

 

「おくのほそ道」石川県の山中温泉で、旅の同行者・河合曽良が病を患い、芭蕉と曽良は別行動を取ることになる。

曽良に代わって、金沢の北枝(ほくし)という者が途中まで同行するが、福井県天龍寺のところで、芭蕉と北枝は別れることになる。

 

その時、北枝に贈った句が〈物書きて扇引きさくなごりかな〉という句である。

おそらく、扇に「一句」を、或いは「感謝」や「友情」を意味する言葉を書いたのだろう。

それを引き裂き、互いに持ち合い、これを「別れの記念」としよう、という意味。

天下の芭蕉にこんなことをされたら、誰でも大感激のはず。

北枝もきっと喜んだことだろう。

北枝はその後、蕉門(芭蕉門下)を代表する弟子の一人になった。

 

で、この句の「季語」だが、

 

捨扇(秋)

 

とされているようだ。

「捨扇」とは「秋になって暑さもおさまり使わなくなった扇」のことである。

が、「捨扇」特に「捨てる」という言葉が、この句にはない。

やや「危うい」季語の使い方である。

この句の原句は、

 

もの書きて扇へぎ分(わく)る別れかな

 

であったそうだ。

まあ、表現に違いはあるが句意に大差はない。

その上で「新版 おくのほそ道」(角川文庫)の「発句評釈」を引用する。

 

扇は句を書いてそのまま北枝に与えたので、事実へぎ分けたのでも引きさいたのでもない。

ただこのことばに惜別のたえがたい情をこめ、兼ねて捨扇の秋季をもたせたのである。

今日の俳諧論からいえば、扇を強いて秋季にしようとした無理な技巧と評されるかも知れない。

しかし、一面からいえば、当時鉄則として動かしがたい季の約束のもとに、これだけ巧みにいいおおせたのは、やはり芭蕉の手腕だと称してもよかろう。

 

少し話は変わるが、似たような季語に「秋扇」(あきおうぎ)がある。

「秋扇」は「秋になっても使っている扇」のことであるが、歳時記によっては「捨扇」或いは「捨扇」と同意の「扇置く」と一緒にしているものもある。

そうなった場合、一句の中に「秋扇」があった場合、「秋でも使っている扇」なのか「秋になって使わなくなった扇」のことか判断に悩む時がある。

 

ネットの「きご歳時記」から引いてみる。

 

〇秋扇(あきおうぎ、あきあふぎ)初秋
【子季語】秋の団扇
【解説】残暑に用いる扇や団扇のこと。

また、使われなくなった末に置き忘れられた扇や団扇のこともいう。

 

やはり「秋でも使っている扇」と「秋になって使わなくなった扇」の両方の意味がある、と解説している。

一方、「扇置く」という項目もある。

 

〇扇置く(おうぎおく/あふぎおく) 初秋
【子季語】団扇置く/捨て扇/捨て団扇/忘れ扇/忘れ団扇/団扇仕舞ふ
【解説】
秋風の通うころになって扇、団扇を必要としなくなること。

立秋 が過ぎても残暑は厳しく、扇や団扇はなかなか離せないもの。

扇をしまうころには秋も一気に深まり、空気も身にしむようになってくる。

 

これをみると「秋扇」「扇置く」は意味がやや被っている季語同士と言っていいだろう。

ちなみに「新版角川俳句歳時記」では、

 

〇秋扇

【解説】秋になっても用いる扇や団扇のこと。

しかし、次第に暑さが引くとともに手に取ることも減り、机上などに置き忘れられたりする。(以下略)

 

〇扇置く~捨扇

【解説】夏の間活躍して扇も、秋になって残暑が引き、秋風が吹くとともに手に取ることも減り、使わなくなくなってしまうこと。(以下略)

 

と、これもやや意味が被っている。

「秋扇」という句があった場合、どちらの意味で解釈するか?

それは、それ以外の言葉や文章で、どちらを言っているのか判断する…ということになるだろう。