(山形県山形市 山寺(立石寺))
閑さや岩にしみ入る蝉の声 松尾芭蕉
(しずかさや いわにしみいる せみのこえ)
NHK「ブラタモリ」で知ったことだが、実に興味深かったので、書き留めておきたい。
この有名な句は「おくのほそ道」の山形県山形市「山寺」で詠まれた、俳句史上屈指の名吟である。
で…、この、
芭蕉が詠んだ岩はどういう岩か?
という話が出て、それは、
デイサイト質凝灰岩(でいさいとしつ・ぎょうかいがん)
であることを知った。
「デイサイト質凝灰岩」とは、簡単に言えば、
デイサイトを含んだ凝灰岩
である。
「デイサイト」は安山岩と流紋岩の中間の組成の火山岩で、溶岩が固まって出来た石、「凝灰岩」は火山が吐き出した火山灰が堆積した出来た石である。
(デイサイト質凝灰岩 ※山口県立山口博物館HPより拝借した写真)
「デイサイト質」というのが、私には難しいので、「凝灰岩」にのみ焦点を当てて話を進めてゆく。
写真を見てわかるように、この石は白い粒(火山灰)が凝縮して出来たもので、密度が薄く、石全体に小さい穴がたくさんある。
「ブラタモリ」で言っていたが、音楽室の壁に「小さい穴」がたくさんあるのは、音響効果の為で、無数の穴が音を適度に吸収したり、反射させることが出来るからなのだそうだ。
そう考えてみると、山寺の石(凝灰岩)も「蝉の声」を「適度に吸収し、適度に反射している石」と考えていい。
芭蕉は、この「凝灰岩」だからだったこそ、
岩にしみ入る蝉の声
を感じたのではないか。
芭蕉は「地質学」の知識はもちろん持っていなかったが、直感的に、この地の「地質」を見抜いた、と考えられる。
周囲の蝉の声から、風土の本質を直感的に見抜いた、と言える。
(玄武岩)
例えばこの「玄武岩」(げんぶがん)などの密度の濃い、重々しい石であれば、蝉の声をはじいてしまう。
山寺がもし玄武岩で出来ていたら、この名吟は生まれなかった…、と考えることが出来る。
こういうところを見ても、芭蕉恐るべし! と思うのである。
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