(滋賀県長浜 琵琶湖)
かくれけり師走の海のかいつぶり 松尾芭蕉
11月の池袋第二谷端川句会の兼題が「かいつぶり」だった。
ついこの間、琵琶湖に行ってきたので、自信満々で作句をしたが、結局、駄句ばかりでどうにもならなかった。
私の中で、「かいつぶり」を理解していなかったのである。
それは句会の皆もだいたい同じで、かいつぶりの「色」について議論になった時、私が、
かいつぶりは白でしょ。
と言ったら、数人が、
黒でしょ。
と言った。
あとで調べてみると「白」でも「黒」でもなかった。
私は琵琶湖の岸から遠くから眺めたので、「白」だと思ってしまったし、「黒」だと思っていた人は、上野不忍の池の「キンクロハジロ」のことを思い浮かべたようだ。
なんだかよくわからない句会になってしまった(笑)。
また、「かいつぶり」というと、
潜る
ということばかりに頭が行ってしまう。
さらに、どうしても、
琵琶湖
の強いイメージがあり、句が出来たとしても、どこかで見たような句になってしまう。
掲句を見た時、
そうだよな~、こういう素直な感じでいいんだよな~。
と思う。
敢えていうなら、
かくれたる
と、中句へつなげて、「一句一章」にするのではなく、
かくれたり
と強く言いきり、「二句一章」にしているのが、芭蕉らしい上手さである。
一句の調べに「張り」が生まれている。
おそらく、この句の季語は「師走」になるだろうが、それでも「かいつぶり」の持つ雰囲気がよく滲んでいる。
おそらく、この「海」は「琵琶湖」であろう。
「琵琶湖」は古来より「鳰の海」(にほのうみ)と呼ばれていた。
※「鳰」は「かいつぶり」のこと。
そう考えてみれば、「かいつぶり」の句としては、
くぐる
も当たり前だし、
海
も当たり前。
この句の命は「師走」ということになるだろう。
冬靄の琵琶湖…。
師走となり、人々は慌ただしく動いている。
それに較べかいつぶりは呑気(?)に水に潜っては浮かび、まるで遊んでいるかのようである。
この風景は、古来より詩歌人が愛した琵琶湖の風景だ。
この風景が多くの人々の悲しみや寂しさを癒してくれた。
そしてこれからもそうなのだろう。
と私は鑑賞したい。
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