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日本の歴史には、その時代、その時代に「呼び名」がある。

旧石器時代
縄文時代
弥生時代
古墳時代
飛鳥時代
奈良時代
平安時代
鎌倉時代
室町時代
安土桃山時代
江戸時代
明治時代
大正時代

と、まあ、こういう風になるだろう。
昭和、平成の時代はよくわからない。
昭和時代、平成時代と呼ぶべきだろうか。

飛鳥時代以降は、いわゆる「政治の中心地」の存在する地名が、時代の「呼び名」になっている。

飛鳥
奈良
鎌倉
室町
安土・桃山
江戸

がそうである。
「平安時代」は「京都」がそれにあたる。
が…、なぜか「京都時代」「京時代」とは呼ばない。
帝(天皇)が住み、政治を行う「平安京」が時代の「呼び名」となっている。
これは少しイレギュラーな扱いになっている。
それとも京都の室町と同じように、「平安」という地名があるのだろうか。
京都の地名には暗いのでよくわからない。
まあ、平安京は建物と言うより、「都」そのものを平安京といったから、地名と言えば言えなくもない。
また、明治以降は「元号」がその時代の「呼び名」となっている。

古代は、その時代を特徴する「もの」が時代の「呼び名」となっている。
旧石器時代は「旧石器」、縄文時代は「縄文土器」、弥生時代は「弥生土器」、古墳時代は「古墳」…、という具合にである。

さて、ここからが「本題」で、「弥生土器」のことについてである。
縄文土器は「縄の模様」に特徴がある土器だから「縄文土器」と呼ばれている。

では、弥生土器はなぜ弥生土器というのか。
答えは「弥生町」で見つかったからである。
「弥生町」は東京都文京区にあり、今の東京大学農学部、根津神社のあるあたりである。
明治17年、このあたりで、初めて「弥生土器」が発見された。

が、弥生土器には、これといった特徴が見つからなかったに違いない。
そこで発掘した地名・弥生町から「弥生土器」と名付けた(…と考えられる)。
たしかに「弥生土器」にはこれといった特徴がない。
しかし、それでも、この命名には「安直さ」を感じる。

ちなみに縄文土器はE・S・モースが明治10年に、大森貝塚を発見した時、一緒に発見されたのが最初らしい。
まあ、縄文土器にしても弥生土器にしても長い歴史の中で、以前から、誰かが見つけていただろうが、「考古学」という視点で見つけ、時代を特定したという意味で「最初」なのであろう。
それはそうとして、ならば、「縄文土器」も「大森土器」でいいではないか、とも思ってしまう。
もちろん名前としては「縄文土器」のほうがいい。
つまり、「縄文土器」「弥生土器」という命名に「統一性」があるべきだ、と思うのである。
縄文土器は土器の特徴から。
弥生土器は見つかった地名から。
というのは不自然である。

さらに、先日、本を読んでいて、ある事実を知った。
弥生町には江戸時代、水戸藩中屋敷があって、当時ははっきりとした「地名」が存在していなかった。
明治になって、(ようやく)地名をつけることとなった。
このへんも「安直」である。

幕末の水戸藩主で、徳川慶喜の父でもあり、「烈公」という名で知られる徳川斉昭の和歌、

名にしおふ春に向かふが岡なれば世にたぐひなきはなの影かな

という和歌があり、そこに「弥生」つまり「三月」という「前書き」があった。
そこから「弥生」という町名をつけた、というのである。
これも「安直」なものを感じる。
「風雅」といえば風雅だが、もう少し、歴史や風土や地形、気象などを考慮してつけてもよかった気がするし、和歌から付ける…、しかも「和歌そのもの」ではなく、「和歌の前書」から取ったというのも不思議である。
まあ、明治という時代は何事も「急いだ時代」だったから、しかたがなかったのかもしれない。
つまり「弥生」とは「三月」という意味で、「三月土器」ということになる。
ちなみに和歌の中の「向かふが岡」(向ヶ丘)は、当時のここ一帯の地名である。

しかも…である。
その見つかった場所が、今、どこだったのかわからなくなっているらしい。
今、「弥生式土器発祥の地」という石碑が建っているそうだが、

たぶん、ここだったろう…。
まあ、このあたりのどこかだったのは間違いないし…。

という理由でしかないらしい。

つまり、すべて「適当」という感じがしないでもない。
こういうのを「弥生時代」と呼んでいいのだろうか、という気がする。
ただ、「語感」はいい。
「縄文」という語感の荒々しさに対して、やさしい感じがする。

まあ、そういうことを感じた。


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