イメージ 1

















(東京都市ヶ谷)

焼酎のただただ憎し父酔へば      菖蒲あや


今日は東京・市ヶ谷のアルカディア市ヶ谷で、「春嶺」700号祝賀会に出席した。
「春嶺」…と言えば、

岸風三楼(きし・ふうさんろう)

である。
「春嶺」初代主宰。

手をあげて足をはこべば阿波踊

の人である。
この人は実に優れた俳人である。

が…、私にとっては「春嶺」といえば、三代目主宰の、

菖蒲あや

である。
親しかったわけではない。
私の母方の実家が墨田区京島で、あやさんは同じ地域に住んでいた。
それだけに、親しみが湧いた。
東京の下町である。
そういう下町ならではの句が多かった。

墨田区の俳人 富田木歩と菖蒲あや
白粉花(おしろいばな) 菖蒲あや
朝顔市 菖蒲あや
祭り 菖蒲あや

菖蒲あやさんは苦労の人だった。
幼い頃に母を亡くし、酒癖の悪い父親と、そりの合わない継母と貧しさの中で暮らした。
 
墓もなき母の忌日の野菊咲く
泣きたくなる父に代りて炭かつぎ
尻の汗疹かゆしと女工笑ひあふ
蝶来たり路地の奥より産声す
処女のごと自由奔放夏の川

しかし、俳人協会賞も受賞し、「春嶺」主宰として、晩年は幸せに暮らしたようだ。
見た目、本当に下町のおばさん、おばあさん、という感じだった。
私の祖母を見ているようだった。
そのころ、私はこの業界のペーペーで、遠くで見かけただけだったが…。

私は、読んで泣きたくなる句が三つある。

蝉時雨子は担送車に追ひつけず    石橋秀野
南瓜煮てやろ泣く子に父の拳やろ    磯貝碧蹄館

そして、掲句である。
子どもの素直な叫びだろう。
子は親を選べない…、そういう悲しみがある。