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比良八荒仏間の奥も湖の音 角川春樹
(ひらはっこう ぶつまのおくも うみのおと)
松尾芭蕉の『おくのほそ道』~日光の章でこういう「くだり」がある。
今この御光(みひかり)一天にかかやきて恩沢(おんたく)八荒(はっこう)にあふれ、四民安堵の栖(すみか)穏やかなり。
なほ憚り多くて、筆をさし置きぬ。
あらたふと青葉若葉の日の光
意味としては、
今、ここ日光は徳川大権現様の眠る地として、その御威光は天下に輝きわたって、
恵みの波はすみずみにまで満ちあふれ、四民が穏やかに暮らしている。
これ以上、私などが云々することは、おそれ多いので、このへんで筆をさし置こう。
(なんと尊いことだ。今、ここ日光にはまばゆい日差しが降り注ぎ、青葉も若葉も輝いている。)
というものである。
今回は「おくのほそ道」のことではない。
ここに「恩沢八荒」という言葉が出てくる。
「恩沢」というのは「恩恵」と考えていい。
八荒(はっこう)
とはどういうことか。
調べてみると、
東西南北の四方と、その間の四隅
と書いてある。
つまり、
東
西
南
北
北東
北西
南東
南西
のことで、もっというと、
・四方八方
・すべての方角
という意味で、さらに発展して、
世界のすべて
という意味にもなっている。
ここでふと、
比良八荒(ひらはっこう)
のことを思い出した。
俳句によく出てくる「春」の季語で、
「比良八講」の時期に、琵琶湖周辺に吹き荒れる季節風
のことである。
「比良八講」とは、
滋賀県比良の延宝寺で3月26日に行われる法華経八巻の講義、法会
のことである。
その頃の「強風」を「八荒」という。
この場合は「八方の方角」という意味ではなさそうだ。
どういう意味で「比良八荒」となったんだろうと考えた。
「比良八講」はわかる。
比良で行う八巻の講(法会)
ということだろう。
おそらく、
比良八講のころの荒い風
という意味で、略されて「比良八荒」なのかな~、と思った。
まあ、確証はないので、今度、人に聞いてみよう。