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醒井宿は「湧水の里」である。
宿場町のあちらこちらに清らかな水が湧いている。

「居醒(いさめ)の清水」…というのが、この地名の由来らしい。
ヤマトタケルが熱病で倒れた時、この霊水で体毒を洗い流した。
それによって体調が回復したことから、「居醒」と呼ばれるようになった。

町には、そのほかに、十王水、西行水が湧いている。
西行水にまつわる伝説が面白い。

西行法師が東遊の時、この泉のほとりの茶店で休んでいた。
茶店の娘が、西行に恋をし、西行の発ったあと、西行が飲み残した、この泉の水でたてた茶の泡を飲むと不思議にも妊娠し、男の子を産んだ。
その後、西行が関東からの帰途、またこの茶店で休憩した。
娘よりその話を聞き、西行は、その男の子に向い、

今一滴の泡変じてこれ児をなる、
もしわが子ならば元の泡に帰れ

と祈り、

水上は清き流れの醒井に 浮世の垢をすすぎてやみん

(みなかみは きよきながれの さめがいに うきよのあかを すすぎてやみん)

と詠むと、児はたちまち消えて、泡に戻った。

という話である。

このブログで何度も書いているが、西行は、

和歌即真言
(わかそくしんごん)

と言った。

自分の和歌は、(天地や森羅万象さえも動かす〉真言である。

と言っている。
自分の和歌が人生や、森羅万象と一体となることを望んだ男だ。
とても信じられる話ではないが、西行ならではの伝説ではある。