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ブログ歳時記~夏の俳句、夏の季語、夏の名句
 
【夏】(なつ)
琴の春三味の夏となりにけり  大伴大江丸
夏くれば夏をちからにホ句の鬼  飯田蛇笏
プラタナス夜もみどりなる夏は来ぬ  石田波郷
帆船を見て胸騒ぐ夏・夏・夏   角川春樹
 
【初夏】(はつなつ)
初夏の乳房の筋の青さかな  野村喜舟
 
【五月】(ごがつ、さつき)
水の上五月のわかきいなびかり  大野林火
目つむりていても吾(あ)を統(す)ぶ五月の鷹  寺山修司
ガードレールに腰かけてゐる五月病   林 誠司
 
【六月】(ろくがつ)
六月や峰に雲置くあらし山  松尾芭蕉
六月の女すわれる荒筵  石田波郷
 
【麦の秋】(むぎのあき)…麦秋
神を説く人が戸口に麦の秋
 
【青田】(あおた)
父ありて明ぼの見たし青田原  小林一茶
 
【炎天】(えんてん)
炎天を槍のごとくに涼気すぐ  飯田蛇笏
炎天の遠き帆やわがこころの帆  山口誓子

水脈の果て炎天の墓碑を置きて去る  金子兜太

 
【日盛り】(ひざかり)
日盛りに蝶のふれ合ふ音すなり  松瀬青々
 
【南風】(みなみかぜ、なんぷう、みなみ、はえ〉…南吹く、白南風、黒南風
南吹くカレーライスに海と陸  櫂未知子
 
【旱】(ひでり)
大海のうしほはあれど旱かな  高浜虚子
 
【虹】(にじ)
頭(ず)に載せて水運ぶなり虹の中  久米正雄
 
【雲の峰】(くものみね)…峰雲
雲の峰いくつ崩れて月の山  松尾芭蕉
雲の峰に肘する酒呑童子かな  与謝蕪村
月山に速力のある雲の峰  皆川盤水
 
【夏の月】(なつのつき)
夏の月御油より出でて赤坂や  松尾芭蕉
市中はもののにほひや夏の月  野沢凡兆
動きゐて雲静けさよ夏の月  長谷川かな女
 
【夏の星】(なつのほし)

草枕の我にこぼれよ夏の星  正岡子規

 
【短夜】(みじかよ)

短夜や浅井に柿の花を汲む  与謝蕪村

 
【梅雨】(つゆ)
抱く吾子も梅雨の重みといふべしや  飯田龍太
 
【五月雨】(さみだれ)

五月雨を集めて早し最上川  松尾芭蕉

湖の水まさりけり五月雨  向井去来

五月雨や大河を前に家二軒  与謝蕪村

 

【雲海】(うんかい)
雲海や鷹のまひゐる嶺ひとつ  水原秋桜子
 
【夏の川】(なつのかわ)…夏の河、夏川、夏河
夏河を越すうれしさよ手に草履  与謝蕪村
処女のごと自由奔放夏の川  菖蒲あや
 
【雪渓】(せっけい)
雪渓をかなしと見たり夜もひかる  水原秋桜子
叫ばぬ石ひとつとてなし大雪渓  長谷川秋子
 
【暑し】(あつし)…暑さ
暑き日を海に入れたり最上川  松尾芭蕉
邪鬼が踏む大和盆地の暑さかな  角川春樹
 
【涼し】(すずし)…涼気、門涼み、夕涼み
命なりわづかの笠の下涼み  松尾芭蕉
芭蕉翁の脛をかじつて夕涼  小林一茶
涼しさや蚊帳の中より和歌の浦  夏目漱石
炎天を槍のごとくに涼気すぐ  飯田蛇笏
門涼み西瓜のごとく冷えにけり  野村喜舟
死闘もよし「三太刀七太刀碑」の涼しさ  鍵和田秞子
 
【日盛り】(ひざかり)
日盛りの海しづかなり火焔土器  角川春樹
 
【夜の秋】(よるのあき)
西鶴の女みな死ぬ夜の秋  長谷川かな女
 
【夏の海】(なつのうみ)…夏潮
島々や千々に砕きて夏の海  松尾芭蕉

夏潮の今退く平家亡ぶ時も  高浜虚子

夏の海潜りて君を抱きにけり  林 誠司

 
【滝】(たき)…瀧、瀑布
滝の上に水現れて落ちにけり  後藤夜半
滝落ちて群青世界とどろけり  水原秋櫻子
千年の留守に瀑布をかけておく  夏石番矢
未来より滝を吹き割る風来たる  夏石番矢
 
【清水】(しみず)
ともし火のゆれるほど湧く清水かな  中島木鶏
朝日さすすだれの外の岩清水  飯田蛇笏
 
【夏行】(げぎょう)…夏(げ)
しばらくは滝に籠るや夏(げ)の初(はじめ) 松尾芭蕉
 
【田植】(たうえ)…田植歌
風流の初めや奥の田植歌  松尾芭蕉
もたいなや昼寝して聞く田植歌  小林一茶
 
【鯉幟】(こいのぼり)…吹流し
雀らも海かけて飛べ吹流し  石田波郷
日本の空の長さや鯉のぼり  落合水尾
折り皺をそろへて泳ぐ鯉のぼり 本間節子
 
【祭】(まつり)…祭髪、祭笛
どぜう屋に席を見つけし祭かな  草間時彦
路地に生れ路地に育ちし祭髪  菖蒲あや
叩かれて女乱るる祭の夜  長谷川秋子
帯巻くとからだまはしぬ祭笛  鈴木鷹夫
 
【夏芝居】(なつしばい)…土用芝居、涼み芝居、夏狂言、水狂言、水芸
川のある方にわく雲夏芝居   久保田万太郎
 
【更衣】(ころもがえ)
ひとつぬひで後に負ぬ衣がへ  松尾芭蕉
長持に春ぞくれゆく更衣  井原西鶴
越後屋に衣さく音や更衣  宝井其角
お手討の夫婦なりしを更衣  与謝蕪村
ぬいで丸めて捨てて行くなり更衣  夏目漱石
まほろばの風ふところに更衣  日下野由季
 
【プール】
ピストルがプールの硬き面にひびき  山口誓子
 
【菖蒲湯】(しょうぶゆ)
菖蒲湯や菖蒲寄り来る乳(ち)のあたり  加舎白雄
 
【行水】(ぎょうずい)
行水をかくし合ひけり家二軒  野村喜舟
 
【塩田】(えんでん)

塩田の百日筋目つけ通し        澤木欣一

 

【昼寝】(ひるね)
昼寝しに暑き二階に上りけり  草間時彦
 
【端居】(はしい)
端居して濁世なかなかおもしろや  阿波野青畝
 
【釣堀】(つりぼり)
釣堀にかんかん帽の志賀直哉  増成栗人
 
【甚平】(じんべい)
甚平や一誌持たねば仰がれず  草間時彦
 
【団扇】(うちわ)
仏壇に尻を向けたる団扇かな  夏目漱石
このところ働き過ぎの団扇かな  草間時彦
 
【夏帽子】(なつぼうし)…夏帽、パナマ帽
夏帽を振つてをりしがかぶりけり  吉田一穂
丸善の玄関に立つパナマ帽  本間節子
 
【捕虫網】(ほちゅうあみ)
おほかたは父の手にあり捕虫網  内田 茂
 
【花氷】(はなごおり)
花氷女の嘘もうつりけり  野村喜舟
 
【蚊帳】(かや)
君を送りて思ふことあり蚊帳に泣く  正岡子規
 
【繭】(まゆ)
かげぼふしこもりゐるなりうすら繭  阿波野青畝
 
【水泳】(すいえい)…泳ぎ
愛されずして沖遠く泳ぐなり  藤田湘子
 
【初鰹】…初松魚
目には青葉山ほととぎす初松魚  山口素堂 
 
【冷奴】(ひややっこ)
箱膳にのらざる鉢や冷奴  野村喜舟
冷奴水を自慢に出されたり  野村喜舟
 
【素麺】(そうめん)
さうめんの淡き昼餉や街の音  草間時彦
 
【心太】(ところてん)
ところてんの叩かれてゐる清水かな  夏目漱石
 
【葛切】(くずきり)
葛切や少しあまりし旅の刻(とき)   草間時彦
 
【白玉】(しらたま)
白玉のよろこび通る喉の奥  水原秋桜子
 
【冷し酒】(ひやしざけ)…冷酒
ガリレオもガリレイもなし冷し酒  作者失念
 
【焼酎】(しょうちゅう)
焼酎のただただ憎し父酔へば  菖蒲あや
 
【ソーダ水】(そーだすい)
ソーダ水つつく彼の名出るたびに  黛 まどか
 
【初鰹】…鰹
目には青葉山ほととぎす初鰹  山口素堂
 
【土用鰻】(どよううなぎ)
土用鰻息子を呼んで食はせけり  草間時彦
 
【鱧】(はも)…祭鱧
大粒の雨が来さうよ鱧の皮  草間時彦
 
【若鮎】(わかあゆ)
若鮎の二手に分かれ上りけり      正岡子規
 
【金魚】(きんぎょ)…金魚玉、金魚鉢、金魚売
水替へて鉛のごとし金魚玉  飯田蛇笏
 
【鮑】(あわび)
鮑動く北西も北北西もなく  辻井 喬
 
【ほととぎす】…閑古鳥、時鳥、杜鵑、不如帰
野を横に馬牽き向けよほととぎす  松尾芭蕉
憂き我をさびしがらせよ閑古鳥  松尾芭蕉
ほととぎす鳴くや湖水のささ濁り  内藤丈草

鯉跳ねて水しづかなりほととぎす  池西言水

あの声でとかげ食ふかやほととぎす  宝井其角
鳴くなれば満月になけほととぎす  夏目漱石
時鳥あれに見ゆるが知恩院  夏目漱石
 
【夏燕】(なつつばめ)
むらさきのこゑを山邊に夏燕  飯田蛇笏

夏燕空に縄張りなどあらず  林 誠司

 
【青鷺】(あおさぎ)
月濡れて青鷺青きものを産む  長谷川秋子
 
【大瑠璃】(おおるり)
この沢やいま大瑠璃のこゑひとつ  水原秋桜子
 
【蝉】(せみ)…蝉時雨、空蝉
閑さや岩にしみ入る蝉の声  松尾芭蕉
蝉時雨子は担送車に追ひつけず  石橋秀野
 
【蝸牛】(かたつむり)
夕月や大肌脱いでかたつむり  小林一茶
蝸牛甲斐も信濃も雨の中  飯田龍太
嘆くでもなし放浪のかたつむり  長谷川秋子
 
【蛍】(ほたる)…螢
草の戸に我は蓼食ふ蛍かな  宝井其角
移す手に光る蛍や指の股  炭 太祇
ほたる飛ぶあたりや里もありさうに  中島木鶏   
子ら寝落つよりいきいきと蛍籠  菖蒲あや
 
【蟻】(あり)

蟻の道雲の峰よりつづきけん  小林一茶

 

【蠅】(はえ)

やれ打つな蠅が手をすり足をする  小林一茶

 
【夏蝶】(なつちょう)
湖(うみ)より湧く夏蝶すぐに湖を忘れ  長谷川秋子
 
【蚤】(のみ)
切られたる夢はまことか蚤の跡  宝井其角
 
【万緑】(ばんりょく)
萬緑の中や吾子の歯生え初むる  中村草田男
 
【夏草】(なつくさ)
夏草や兵(つわもの)どもが夢の跡  松尾芭蕉

夏草やベースボールの人遠し  正岡子規

 

【夏野】

頭の中で白い夏野となつてゐる  高屋窓秋

 

【蚕豆】(そらまめ)
蚕豆のそんな青さでゐたいもの       落合水尾
 
【新樹】(しんじゅ)
しら雲を吹きつくしたる新樹かな  椎本才麿
 
【若葉】(わかば)
あらたふと青葉若葉の日の光  松尾芭蕉
 
【病葉】(わくらば)
わくら葉の柳散りけり不如帰  中島木鶏
 
【麦】(むぎ)
つかみあふ子供の長(たけ)や麦畠  向井去来
 
【今年竹】(ことしだけ)…若竹

若竹や夕日の嵯峨となりにけり  与謝蕪村

 

【卯の花】(うのはな)…花卯木
雪月花一度に見する卯木かな  松永貞徳
卯の花をかざしに関の晴着かな  松尾芭蕉
卯の花に兼房見ゆる白毛かな  河合曽良
卯の花も白し夜なかの天の川  池西言水
 
【杜若】(かきつばた)
杜若われに発句の思ひあり   松尾芭蕉
 
【河骨】(こうほね)
河骨やつひにひらかぬ花盛り  山口素堂
 
【向日葵】(ひまわり)
向日葵の空かがやけり波の群  水原秋桜子
向日葵や信長の首斬り落す  角川春樹
 
【牡丹】(ぼたん)
牡丹散つてうちかさなりぬ二三片  与謝蕪村
白牡丹といふといへども紅ほのか  高浜虚子
牡丹百二百三百門一つ  阿波野青畝
ぼうたんの百の揺るるは湯のやうに  森 澄雄
 
【玫瑰】(はまなす)
玫瑰や今も沖には未来あり  中村草田男
 
【茨の花】(いばらのはな)…花いばら

愁ひつつ岡にのぼれば花いばら  与謝蕪村

 
【夏萩】(なつはぎ)…青萩
夏萩にいま逢ひたしや墓洗ふ  長谷川秋子
 
【月見草】(つきみそう)
コンソメを冷やす時間の月見草  草間時彦
 
【椎の花】(しいのはな)
雷晴れや日にのぞかるる椎の花  飯田蛇笏
椎の花神も漢(おとこ)の匂ひせり  角川春樹
 
【泰山木の花】(たいざんぼくのはな)
ロダンの首泰山木は花得たり  角川源義
泰山木の花ボクサーの拳欲し  林 誠司
 
【朴の花】(ほおのはな)
朴ちりし後妻が咲く天上華  能村登四郎
 
【柚子の花】(ゆずのはな)
色欲もいまは大切柚子の花  草間時彦
 
【百日紅】(さるすべり)
碧天をうるほす紅やさるすべり  原 コウ子
百日紅ごくごく水を呑むばかり  石田波郷
女来(く)と帯纏(ま)き出づる百日紅  石田波郷
 
【糸瓜の花】(へちまのはな)
糸瓜咲いて痰のつまりし仏かな  正岡子規
 
【茄子の花】(なすのはな)
山かけて朝虹ちかく茄子咲けり  飯田蛇笏
 
【青芒】(あおすすき)
顔入れて顔ずたずたや青芒  草間時彦
合戦図美男ばかりや青芒  小島 建
 
【帚木】(ははきぎ)
帚木に影といふものありにけり  高浜虚子
 
【草田男忌】(くさたおき)
炎天こそすなはち永遠(とは)の草田男忌       鍵和田柚子