あをあをと星が炎えをり鬼やらひ   相馬遷子(そうま・せんし)


「鬼やらい」は節分の夜に寺社などで行われる鬼払いの儀式。
もともとは宮中行事だが、庶民の生活に浸透して、節分の夜の豆撒きをも指すようになった。

この句は、おそらく寺社の鬼やらいであろうが、私はこの句を読んで、子供時代の豆撒きの風景を思い出した。
子供時代、冬の夜空をしげしげと眺めることはあまり多くない。
節分の夜は窓や玄関を開け放って、豆を撒く。
窓を開けると途端に冬の夜のつめたい外気が吹き込んでくる。
上を見上げると、冷たい夜風の中を星が爛々と輝いている。
ぞくっとするような身震いをするのは、寒さばかりではない。

「あをあをと」星が燃えているのは美しく厳しい表現だ。
この夜があければ、立春となる。
最後の冬を惜しむかのように、冬星は青く燃えているのだ。