生活保護や児童相談所の仕事をしていた頃、

相談窓口につながった人たちから、

こんな言葉を聞くことがありました。

 

「何を相談したらいいのか分かりません」

「自分でも何に困っているのか整理できていません」

「全部が大変で、どこから話せばいいのか分かりません」

 

そう話す人は少なくありませんでした。

 

そして実際、

その感覚はとても自然なことだと思います。

 

問題が一つだけなら、

比較的整理しやすいかもしれません。

 

でも現実は、

お金の不安。

子どものこと。

仕事のこと。

家族のこと。

体調のこと。

将来への不安。

 

いくつもの問題が重なっていることがあります。

 

そうなると、

頭の中は常に忙しい状態になります。

何から考えればいいのか分からない。

どこから手をつければいいのか分からない。

 

だから、

相談先を探そうとしても動けなくなる。

そんなこともあります。

 

私は現場で、

相談する力がない人を見てきたというより、

整理する余裕がない人を見てきたように思います。

 

本当は助けが必要なのに、

頭の中がいっぱいになっていて、

何を伝えればいいのか分からない。

 

だから一歩が出ない。

そういう状態です。

 

だから時々は、

相談先を探す前に、

少しだけ整理してみてもいいのかもしれません。

 

難しいことではありません。

例えば、

今一番困っていることは何か。

今すぐ解決しなくてもいいことは何か。

 

誰かに話すとしたら、

まず何を伝えたいか。

そのくらいで十分です。

 

紙に書いてもいい。

頭の中で考えるだけでもいい。

 

大切なのは、

完璧に整理することではなく、

絡まった糸を少しゆるめることです。

 

現場で出会った人たちの中にも、

最初は何も話せなかった人がいました。

 

でも、

少しずつ状況を整理していく中で、

「実はこれが一番困っていました」

と話せるようになることがありました。

 

すると、

支援につながりやすくなることがあります。

問題が減ったからではありません。

 

問題の形が見えてきたからです。

 

私たちは、

困った時ほど、

すぐに答えを探そうとします。

 

どこへ相談すればいいのか。

どんな制度があるのか。

何をすれば解決するのか。

 

もちろんそれも大切です。

でもその前に、

自分が今どこに立っているのかを知ることも大切です。

 

地図を見る時に現在地を確認するように、

人生もまずは今の状況を整理するところから始まることがあります。

 

相談先を探すことは大切です。

でも、

その前に少しだけ現実を整理する。

それが、

次の一歩を見つける助けになることもあるのだと思います。