昔書いていた詩(106) 「ピンポールカメラ」 | たろうくん(清水太郎)のブログ

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八王子の夕焼けの里でniftyの「清水中世史研究所」(八王子地域の中世の郷土史)とYahooで「清水太郎の部屋」として詩を書いてます。


    ピンポールカメラ

 山で何をなくして
 何を拾いたいのか

 沸き上がるガスの中で
 腐食されたピンポールカメラの針穴から
 無制限に引き延ばされた二重写しの峰々

 山肌と貴女の 心の襞に立てば
 何時か何処かで 記憶の冬の谷に
 埋没した合言葉が 蘇生する

 ああ 山で 何を失くして
 何を拾いたいのか

 やがて貴女は
 群青色の変色した
 都会に帰ってゆく
 ひとりで いつも歩いている

 誰にも聞かれない
 言葉の持ち主より
 一番遠く離れた登山者


    樹皮

 暁の天空に
 直立する 私

 樹に 貴女の名前を
 愛の斧で 刻まれ
 傷心のケヤキとなった 私

 樹皮を剥ぎ
 貴女の言葉や 記憶を
 ゴミ捨て場の テ―プレコーダーで
 再生してみても

 不自然に 明るい空を
 印画してしまった 私は
 冬枯れ田圃の
 ガラス氷のような
 朝を迎える