工藤夕貴がアメリカで女優として奮闘しているドキュメンタリーを見たとき、彼女のアイメークに何が起きたのか、と思った記憶がある。
アイライン上下しっかり目を囲むようにかいていた。
わかる。
現地の人たちと話していると、ただでさえ目鼻立ちがくっきりしているにも関わらず、完全な金髪女子以外のブラウン交じりの人たちの目は、ラインで囲まれているように見えるほど、まつ毛の生え際が表に出てきているのだ。
それをアメリカに長く住む日本人は手に入れようとするのだろう。アイラインでくっきりとしたラインを、のっぺりとした顔に存在する目に施すのだ。
だから、会ってすぐにわかる。この人はアメリカに長くいる人か、それとも数年だけちょこっと暮らしてまた日本に引っ越す人なのか。
しかし、その目はおそらく現地のアメリカ人には受け入れられているのだろう。むしろ、私たちみたいに、日本のメイク術を保持し、べろんとした目をさらけ出している方が、『いかにもジャパニーズ』になっているに違いない。
以前、22歳の時、学校からの研修プログラムでスペインに数か月滞在したことがある。当時日本では、青味がかったピンクの口紅に水色のアイシャドーというのが流行っていた。
私もそのメイクをスペインでもやっていたのだが、ある時、道端ですれ違った御年70歳くらいであろうおばあちゃんのメイクと全く同じであると気付いたのだ。
ばーさんの色使いか・・・
慌ててシャドーも口紅も変えた。
その国には、その国の流行と当たり前がある。
ぐるり目をアイラインで囲むのが、この国のアジア人の当たり前だとしたら・・・。
まずは洗面所で試してみることにした。何も知らず、そこに居合わせた旦那。
「笑わせようとしてんのか」と聞いてきた。
「自分探しの最中や」と答えると、鏡をのぞき込み、
シンプルにおもろい
と言われた。
今日は言い返せない。
今日は旦那が正しい。ポチっとおおきに。