建築を学ぶ者は一度つくばへ足を運ぶべし①(つくばの中心は日本的空洞である) | セグウェイで街に出よう

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「みちのコミュニケーション」を楽しもう。一番身近な公共空間である「みち」から始める、まちを「わたしたちごと」と思えるアクティビティ。小さな公共への意識を育む「セグウェイガイドツアーinつくば」のブログです。

実はつくばには有名な建築家が設計した施設や公園などが数多くあります。
つくばの建築をまとめた本も出されているくらいです。
筑波研究学園都市の建設がたくさんの有名建築家も関わった大きな国家プロジェクトであったとも言えます。
https://www.amazon.co.jp/つくば建築フォトファイル-つくば建築研究会/dp/4990273109

このブログでも、時おり、つくばの有名建築物を紹介していこうと思います。
今回は、そのひとつ、つくばセンタービル・広場についてです。
セグウェイツアーの発着地点でもあります。

 


つくばセンタービルは、ホテル、商業施設、コンサートホール、多目的スペースなどがはいる複合的な建物です。L字型に設計されていて、その真ん中には広場が作られています。

設計したのは、磯崎新さん。建築に携わる方なら誰もが知るであろう有名な建築家です。
磯崎新さんは、ポストモダンの代表的建築家で、つくばセンタービルはその代表作だと言われています。

「ポスト・モダン」ということなのですが、まず「モダン=近代」というと合理性や機能性を重視した無駄を排した簡素なイメージがありますが、「ポスト・モダン」ですので、そうしたものとは一線を画そうということになろうかと思います。

たしかに、つくばセンタービルは、一般的な商業的な建築物とは一線を画す特徴的な建物です。よく見ると、様々な装飾が施されていたり、何かを象徴しているようなものが配置されていたりと、とても凝った造りになっています。
 
 
遠目でみると全体的には硬質でモダンな雰囲気がありますが、近くで見ると、建物の壁面の随所に重厚な石の角柱や円柱が使われていて、ヨーロッパの古典的な建造物を思わせる部分があります。



真ん中の広場はミケランジェロが作ったルネサンス期ローマのカンピドリオ広場というところを模したもので、その広場の壁面に積み上げられた石は筑波山、その横を流れる池は霞ヶ浦を暗示させるものだと言われています。ヨーロッパのバロック的な雰囲気の中に、つくば・茨城の郷土的な自然を想起させるものが組み込まれた不思議な空間となっています。

また正三角形や正方形、円形などが組み合わされた窓や空間など幾何学的なデザインも組み込まれている箇所も随所にあります。正三角形の窓は北にある筑波山を向いていて、三角同士で向かい合っているようです。

さらには、建物内部の装飾には、マリリンモンローのボディラインをイメージした曲線(モンローカーブというそうです)を使ったものが随所にあるそうです。
ホテルオークラつくばさんのブログを参照↓
http://okuratsukuba.tsukuba.ch/e65226.html

ということで、つくばセンタービルは、一言でいうと、古典的、近代的、未来的な様々な要素がふんだんに散りばめられたパッチワークのような建築物です。実験的といってもいいのかもしれません。

ある意味で、ロボットテクノロジーのような最先端の科学・未来的なものと田園風景や昔ながらの伝統的な暮らしとが混ざり合い、また多様な国の人々も暮らしていて、色々な要素が混ざりあってとらえどころのないつくばの街を象徴しているといってもいいかもしれませんね。

建築が好きな方にはとても見応えのあるものだと言えるでしょう。


ところで、中心にある広場。
カンピドリオ広場を模したものでありますが、本来のカンピドリオ広場は丘の上に、高いところにありますが、つくばセンターの広場は低いところにあります。中心があまり目立たない造りになっています。空洞的な空間なのです。
本来まちの中心の広場ですから、ひとがたくさん集まるように高く目立つようにしたほうがよかったのではないかと思う面もありますが、
実は、中心が空洞的、人目にあまりつかないようになっているというのは、ある意味で、とても日本人的なものでもあります。

東京の中心は、広大な森に囲まれた皇居です。発展し、時間とともに激しく様変わりする東京の都市の中心に、昔から変わらぬ伝統を守り続け、古くからの祭祀を受け継がれている天皇陛下の住まいがあるのです。時間がとまっているかのような、神話の世界へとダイレクトにつながる空間が東京の中心にはあるのです。

中沢新一さんの「アースダイバー」によると、古来の日本人は、集落の中心にまず死者をまつる墓を作ったそうです。自分たちが中心ではなく、死者を、西方浄土へつながる空間を真ん中にそえたのです。
神社などもそうでしょう。きっと集落の真ん中に作られることが多かったのではないかと思います。

伝統的な日本庭園などもある意味中心は空洞的です。日本庭園の中心は池です。池が中心にあり、人はその周りに回遊するような造りになっています。

人ではないもの、無へと、聖なるものへとつながる、静かな空間を自分たちの中心に置くという謙虚な姿勢。古来から続くとても日本人的なものです。
ポストモダン。アンチ近代。近代以前の、日本的伝統。つくばセンター広場もそんな発想が影響しているのかもしれません。

おおくぼ