こんにちは。
 
世界のワイン業界においてもっとも名声の高い資格である
マスター・オブ・ワイン(MW)
 
このワイン業界の最難関の資格に合格した、
日本在住の日本人マスター・オブ・ワインは
大橋健一MW、たった1人です。
 
今回はその大橋MWにご登壇いただく
とてつもなく貴重なテイスティングセミナーを
講師を務めているワインスクール、
レコール・デュ・ヴァン主催にて開催させていただきました。
 
テーマは……
「日本人として熟知したいワイン5選~その特性と必然性を探る~」

大橋MWが自らセレクトしたワインをご紹介いただきながら、
テイスティングおよび解説をしていただくという……
めったに体験できない、素晴らしい学びの時間となりました。
{3B50FC17-B279-4D55-A2BF-48AAF1013235}定員100名の会場は超満員。
皆さん、万難を排して、この貴重なセミナーに駆けつけてくださいました。
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どんなストーリーが繰り広げられるのか、、、本当にワクワク。
 
今回は、我々が意識するべき3つの項目に沿って
講義が進められましたので、順にご紹介したいと思います。
 
まず一つ目は
◆官能表現の差の存在
 
「どういうことだろう?」……と考えている間もなく
沢山のお魚料理の写真が次から次へとスクリーン上に
登場します。
 
・舌平目のムニエル、
・ブイヤベース、
・川魚の塩焼き、
・中国の魚介の蒸し煮「清蒸鮮魚」……
 
と、実に多岐にわたった料理の数々。
 
よくよくお話をうかがってみると
これらは世界各地がイメージする「seafood」の写真なのだとか。
我々日本人は「シーフード」というとすぐに生のお魚が
並べられた「お造り」の画を想像してしまいがちです。
しかし、そのイメージが浮かぶ人は世界をベースに考えたら
どのくらいいるでしょうか?ほんの一握りにすぎないはずです。
 
ということは、「シーフードに合うワイン」というお題がでたとき、
どんな提案ができていないといけないのか?
 
小麦粉をたっぷりつけてバターでソテーする舌平目のムニエルと、
お醤油と山葵でいただくお造りでは、マリアージュのお相手も
まったく変わってくるはずです。
 
自分たちの常識が世界の常識ではない ということ、
そして、日本のスタンダードと海外のスタンダードの
差をしっかり理解する必要があることを、
「seafood」の例でとても分かりやすくお伝えいただきました。
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自分自身を思い返してみると、
これまで海外の様々なレストランを訪問する機会がありましたが、
どんな店舗にうかがっても、
・「日本の料理がいちばん繊細で上品」
・「出汁の旨みが分かるのは日本人だけ」……
などといった余計な概念や先入観を持ってしまい、
結局は、料理においてもマリアージュにおいても
「やっぱり日本のレストランが一番レベルが高い」
という主観的な感想を抱いてしまっていました><
 
でもその感覚を持っているのは、世界中のほんの島国の
マイノリティーな我々だけであって……
まさに井の中の蛙的発想で「食」をとらえていたのではないかと、
はっとさせられた体験でした。
 
 
さて、そうこうしているうちに……
◆国際的観点の必要性 
というテーマに移り、
テイスティングの準備が進められます。
 
今回セレクションいただいた5種は、大橋MW自らが
選んでくださった、いま我々が熟知するべき品種!ということで
どんなラインナップが登場するのかドキドキワクワク。
 
しかもブラインドというから、「よし!頑張って当てるぞ!!」と
心の中で意気込んでみたのですが……
 
「テイスティングの際は‟絶対にあてるな”とよく言われます。
当たったことを喜ぶのは、全く意味がありません……」と、
無駄なモチベーションを一蹴するひとことが。
 
独りよがりな考え方でテイスティングを行うのではなく
誰がみても正しいアプローチとなるように分析して
いく必要があるということなのです。
 
「探偵のように探り、法律家のように答えよ」――これがMWの掟なのだとか。。
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気を取り直し、探偵気分で、目の前の5種の白ワインと対峙します。

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①まずは1番から。

香りのボリュームはそれほど大きくはなく、やや酸化的な

造りをしており、フレッシュに感じさせるため軽く発泡を

残しているが、酸の量はそれほど多くなく、予測される産地は

冷涼すぎず、暑すぎず……といった解説を聞きながら

様々な産地と品種を頭の中に巡らせますが、

なんだか、迷宮入り。

 

こちらの回答は、イタリアはヴェネト州のピノ・グリージョ。

 

自分では蜜っぽいアロマや黄色い果実のニュアンスが

あると思い、シュナン・ブランでは?と思ってしまって

いたのですが、しょっぱなから撃沈です><

 

では、なぜピノ・グリ―ジョなのか?

なぜヴェネトなのか?

 

その答えが下記にありました。

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イギリス: CH > SB > PG

アメリカ: CH > PG

 

いま、イギリスやアメリカはじめ世界のあちこちで

ピノ・グリは大人気。人件費がかからずコストが

良心的で、アダプタビリティが高く、多様なスタイルに

変化するこの品種が非常に魅力的なのだとか。

 

しかも、ピノ・グリの産地として我々がイメージする、

アルザスというのは、世界的にみたら、実はマイノリティー。

 

イタリアではトレンティーノ・アルト・アディジェ州もあがりますが、

いまイギリスで売れているのは、まさにヴェネト州の

ピノ・グリなのだそうです。

 

ヴェネトのピノ・グリ……はじめてテイスティングしました。

 

ますます食が多様化している昨今において

ピノ・グリは押さえておくべき品種のひとつなのですね。

 

 

②そして2番のテイスティングへ。

 

香りは開いてはいるけれど、アロマティック品種まではいかない

セミアロマティック。①に比べるとタイトで、余韻はそれほど

長くなく、醸造スタイルは酸化と還元のあいだをいく

中間的アプローチ。そして、ほのかに感じられるボトリティスの

ニュアンスから……湿度のある産地が考えられますね、

というところまでサクサクと分析・解説されていきます。

 

ちなみに、こちらの回答はスペインはガリシア地方のアルバリーニョ。

 

余韻の仄かな磯のニュアンスからリアス・バイシャスの

アルバリーニョかと予想していたのですが、先ほど誓った掟を

瞬時に忘れ、心の中で「当たった!」と、ついぬか喜び><

 

ふと我に返り、探偵のように導きだすどころか、

感性と主観を駆使してテイスティングするクセが

鎖のように定着してしまっていることを身に染みて

実感したのでした。

 

では、なぜいまアルバリーニョなのか。という核心へ、

話題は移っていきます。

 

アルバリーニョといったら、スペインのリアス・バイシャスは

もちろん、ポルトガルのミーニョやオーストラリアなどが

あがりますが……いま日本国内でも、とても旬な産地が

ありますよね。

 

そう!新潟県。

 

塩尻のメルロー、北信のシャルドネ……といったような

適地適品種が定着しているところは、日本ではまだ

少ないけれど、新潟のアルバリーニョは一つのホープと

言えるのではないか、と大橋MW。

 

そして先ほどのシーフードの話に戻りますが……

国際的視野で考えた場合、このアルバリーニョこそ

シーフードのマリアージュのパートナーの候補として、

世界に通用する品種のひとつであろうという展望も

お話いただきました。

 

 

 

 

こんな形でテイスティングは進められていき……

 

③ギリシャ サントリーニ島のアシルティコ

④フランス ブルゴーニュのシャブリ プルミエクリュ

⑤日本が誇る、山梨 甲州

 

というラインナップがブラインドティスティングのあとに

次々オープンされていきます。

 

酸もアルコールもしっかり高くて余韻に海風の塩味を感じる

③ギリシャ サントリーニ島のアシルティコは、

いまイギリスではもっとも‟cool”と言われている品種のひとつなのだとか。

日本のマーケットでも売れ行きは順調に上がっており、

我々が押さえておくべき品種のひとつになっています。

 

確かに、オーストラリアから東京に進出したモダンギリシャ料理店

『APOLLO』さんなんかでも、気軽にアシルティコが楽しめるように

なりましたし、ここ最近のギリシャワインブームはまだまだ

続きそうですよね。

 

 

 

そして④では思いがけず、誰もが知るブルゴーニュの王道白ワイン、

シャブリ1erが登場。なぜ、ここでシャブリ?かというと……

 

日本でシャブリは多くの人に認知されていて、やはり根強い人気を

持っているから。

 

しかしながら、産地違い&生産者違いでシャブリの個性をしっかり

ハンドリングし、料理と合わせて提案できる人が

どれほどいるのでしょうか?

 

「シャブリと生ガキ」といった教科書的マリアージュが広く

語られていますが、せっかくそれを謳うならば、シャブリと牡蠣をもっと

積極的に追求して、世界を驚かせるような、魅力的なマリアージュを

提案できるようになったら、きっとドラマティックなマーケットを

生むようになるのではないか……と大橋MWはおっしゃいます。

 

非公式のグランクリュ「ムートンヌ」は、いま業界では

‟見えない爆撃”とも呼ばれているのだとか。

そのポテンシャルをしっかり見据え、シャブリの本当の

魅力を我々はもっと知るべきなのです。

 

熱い想いが込められたシャブリの提案、深く胸に残るものと

なりました。

 

 

 

⑤そして……最後は我が国のワイン用ブドウ品種の

ホープ、甲州が登場!!海外の方に一番露出があるであろう

寿司店のワインリストの現状データを見ると、日本ワインを

提案する機会、さらには甲州を提供する機会は、確実に

高まっていることが分かります。

 

香港でのメルシャンの売れ行きを鑑みても、

日本ワインは世界的に需要が高まってきており、

今後インフレを起こす可能性があるのだとか。

トップ銘柄は全く買えなくなってしまうかもしれないとまで

言われているそうです。

 

やはり、日本ワイン、特に甲州は我々が今飲んでおくべき

ワインの筆頭なのです!!そしてそれぞれの甲州が、

産地や造り手によってどう違って、どんな特徴があるのかを、

客観的に説明できるようにならなくてはいけないということを

強く感じました。

 

 

≪今回のラインナップ≫

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そしてアジェンダの最終項目へ……
 

◆世界多彩なキュイジーヌがある中での

唯一無二の提案の必要性

 

これからますます世界の人とワインや食事を楽しむ

機会が増えてくる中で、私たちは自分の常識に支配されず、

主観を客観に変えた見方をする必要があります。

 

そのことを理解したうえで……

日本ならではの個性や見解、オリジナリティーを

確立していく必要がある、ということを最後に

しっかりとお伝えいただきました。

 

今回の大橋MWの講義を受講させていただき、

 

・世界を意識した客観的な視野を持ち、

・食・ワインへの理解をさらに深め、

・他にはない、独自の視点で「食」の魅力を発信していく!!

 

……この3つが当面の私の目標となりました。

 

 

 

今回の講義では、「ワインの知識」という枠にとどまらず、
日本人として持つべき意識や世界観といった部分まで……
論理的かつ明快にお伝えいただき本当に刺激的な2時間でした。

 

 

 
講座後に行われた和気藹々とした懇親会も
皆様の素敵なお人柄が共鳴した温かい時間で、
ワインのご縁に心から感謝した夜となりました。
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大橋健一MW、関係者のみなさま……
貴重な機会を本当にありがとうございました!!