任天堂が発表した今後の事業戦略について
前エントリ「任天堂株が下げ転換、岩田社長のビジネスビジョンに失望」の※欄で、様々なご意見をいただいたので、この点につきもう少し考えてみた。
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まず自身で明確に述べているように、今回の発表で、任天堂はゲーム会社ではなくなった。
ゲームは今後も作るとはいえ、それは彼らのミッションの一部に過ぎない。任天堂はゲーム企業を超えた何者かであり、彼ら自身の言葉で言えば「笑顔創造企業」、そうしたものになることを公式に宣言した。あまりマジメに受け取られてはいないようだが、任天堂の歴史上、最も重要な発表の一つだった。
それでは「笑顔創造」とは何だろう。誰の、どんな笑顔なのだろう?
岩田氏指導下の任天堂の原点は、Wii/DSの強烈な成功体験に違いない。
Wii Fitや脳トレの大成功は、ゲーム機が子供の玩具の域を超えて、世の普通のオトナたちのためのものに変わった瞬間だった。「笑顔」とはもともとはゲームを遊ぶ子供の笑顔だ。だがそれと同じかそれ以上に、Wii Fitや脳トレを楽しむ大人の笑顔になったのだ。
Wii Fitや脳トレは新しいカテゴリの製品だった。
Wii Fitは時に「世界一売れた体重計」と揶揄されるが、もちろんタダの体重計ではない。Wii Fitは「愉快な」体重計なのだ。体重計を使うのは体重を量るためであって、それ以上でも以下でもない。だがWii Fitは違う。使うのが楽しいから体重を量ってしまうのだ。逆転の製品だった。
今時風の言葉で言えば、Wii Fitや脳トレは日常生活をゲーミフィケートするハードであった。「笑顔創造企業」としての任天堂とはつまり、こういうことをする企業なのだ。
・キッズにゲームを。オトナにゲーミフィケートされた日常を。
・愉快なハードがそれを助け、ユーザに笑顔をもたらす。
・任天堂はそのためのハードとソフトを作り出し、それを世に問うていく。
おそらく任天堂はそこに天命と、そして将来の金鉱を見出したのだ。
任天堂はQ3で醜悪な決算を出した。惨めな内容だった。
それでも任天堂がブレていないのは、このビジョンがあまりにも魅惑的だったからではないか。憧れが心に満ちるあまり、今そこにある存亡の危機すらつまらぬ些事に見えているのではないか。
Wii/DSからはじまり、Wii U、そして今回の健康路線は、任天堂の目から見れば全く首尾一貫したものだ。任天堂の立場に立ってはじめて、彼らの戦略を意味あるものとして理解することができる。
ゲーマーとしての立場から見る限り、任天堂のやることは至るところがチグハグで、不適切で、いきあたりばったりのように見えてしまう。今回の発表で任天堂が語った戦略は、控え目に言ってもぱっとしないものに見えただろう。発表の後で株価が下落したが、それも無理はなかった。任天堂の説明は全く不十分だったからだ。きちんと説明できていれば市場の反応も違ったろう。
説明不足だった観は否めないとはいえ、この任天堂の戦略は非常に面白いものだし、マジメに考えるのに値する。成功するかどうかはさっぱりわからないけれど。
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…あえて気になる点を挙げるとすれば、そこにゲーマーの居場所がないことかもしれない。
いまさらなことだし、些細な問題かとは思うが?
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まず自身で明確に述べているように、今回の発表で、任天堂はゲーム会社ではなくなった。
ゲームは今後も作るとはいえ、それは彼らのミッションの一部に過ぎない。任天堂はゲーム企業を超えた何者かであり、彼ら自身の言葉で言えば「笑顔創造企業」、そうしたものになることを公式に宣言した。あまりマジメに受け取られてはいないようだが、任天堂の歴史上、最も重要な発表の一つだった。
それでは「笑顔創造」とは何だろう。誰の、どんな笑顔なのだろう?
岩田氏指導下の任天堂の原点は、Wii/DSの強烈な成功体験に違いない。
Wii Fitや脳トレの大成功は、ゲーム機が子供の玩具の域を超えて、世の普通のオトナたちのためのものに変わった瞬間だった。「笑顔」とはもともとはゲームを遊ぶ子供の笑顔だ。だがそれと同じかそれ以上に、Wii Fitや脳トレを楽しむ大人の笑顔になったのだ。
Wii Fitや脳トレは新しいカテゴリの製品だった。
Wii Fitは時に「世界一売れた体重計」と揶揄されるが、もちろんタダの体重計ではない。Wii Fitは「愉快な」体重計なのだ。体重計を使うのは体重を量るためであって、それ以上でも以下でもない。だがWii Fitは違う。使うのが楽しいから体重を量ってしまうのだ。逆転の製品だった。
今時風の言葉で言えば、Wii Fitや脳トレは日常生活をゲーミフィケートするハードであった。「笑顔創造企業」としての任天堂とはつまり、こういうことをする企業なのだ。
・キッズにゲームを。オトナにゲーミフィケートされた日常を。
・愉快なハードがそれを助け、ユーザに笑顔をもたらす。
・任天堂はそのためのハードとソフトを作り出し、それを世に問うていく。
おそらく任天堂はそこに天命と、そして将来の金鉱を見出したのだ。
任天堂はQ3で醜悪な決算を出した。惨めな内容だった。
それでも任天堂がブレていないのは、このビジョンがあまりにも魅惑的だったからではないか。憧れが心に満ちるあまり、今そこにある存亡の危機すらつまらぬ些事に見えているのではないか。
Wii/DSからはじまり、Wii U、そして今回の健康路線は、任天堂の目から見れば全く首尾一貫したものだ。任天堂の立場に立ってはじめて、彼らの戦略を意味あるものとして理解することができる。
ゲーマーとしての立場から見る限り、任天堂のやることは至るところがチグハグで、不適切で、いきあたりばったりのように見えてしまう。今回の発表で任天堂が語った戦略は、控え目に言ってもぱっとしないものに見えただろう。発表の後で株価が下落したが、それも無理はなかった。任天堂の説明は全く不十分だったからだ。きちんと説明できていれば市場の反応も違ったろう。
説明不足だった観は否めないとはいえ、この任天堂の戦略は非常に面白いものだし、マジメに考えるのに値する。成功するかどうかはさっぱりわからないけれど。
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…あえて気になる点を挙げるとすれば、そこにゲーマーの居場所がないことかもしれない。
いまさらなことだし、些細な問題かとは思うが?