目を覚ます。時計を見ると9時半を回ったところであった。また、遅刻である。
ここ最近の自分はとてもタルんでいる。
生活リズムもバラバラ、家事も何かと後回しにしがちだ。
恐らく勉強の方も前期に比べればできていない。
トレーニングだってやったりやらなかったりの毎日だ。
ああ、怠惰だ。いつまでこんなことを続けるつもりだ。いつまで立ち止まるつもりだ。
どうでもいい一時の欲望に振り回されるな。本当にやりたいことだけにしぼってやれよ。
そしてやりたいことの前にやるべきことを先にやれ。
義務を果たしてこその自由だ。それを忘れてはいけない。

age quod agis. ~やるべきことをやれ~

上手くいかないものである。
働くという行為はとても複雑で、とても難しい。
この3ヶ月間自分なりに試行錯誤を繰り返してきたつもりであったが、どうやらまた空回りだったようだ。
他人からの評価はいつだって理不尽だ。
積み上げてやっと形ができたと思えば、それは真っ向から否定される。
まったく伝わっていなかった。自分の考えが。自分のやり方が。
評価はいつしか固定観念に変わり、自分の印象になる。定着したが最後、他人はもう本質を見てくれない。
正直怒りを覚えた。
自分達にも非があるというのに、気づくどころかそれすら人のせいにする。
心が折れそうだった。
それでも、どんなに辛くても、負けず嫌いな自分が心のどこかにいるんだ。
ここで折れるわけにはいかない。
逆境こそチャンスだ。現状こそ乗り越えるべき壁だ。
ここで負けるのは格好悪い。
なにも自分に非がないとは言わない。もう知っている。
コミュニケーションが足りなかったんだ。もっと自分から伝えようとすれば良かった。
それに気がついたのだからあとは動くだけだ。
世界は変わらない。だったら自分から変わってやる。
いかん。これはいかん。
一人暮らしを始めて早3か月、私こと種向和也はある重大なことに気が付いた。

”人と、話せない...!”

話せないと言うと語弊があるが、正確にいうと会話における技術が失われつつあるのだ。
人と話をするときにまごついてしまう、自分から話題を振れない、それだけではない。
話しているときの表情、自然なアイコンタクトもできなくなっている。
別にもともとよくしゃべるような人間ではないがここまでひどくはなかった。
理由をあげるとすれば、おそらく一人暮らしで実家にいた頃より人と話す量が圧倒的に減ったことが原因だろう。
家族との日常的コミュニケーションがここまで重要だったとは、いろいろとショックである。
とまあそんなことをグダグダ考えていても仕方がない。なんとかしなければ。
新生活でいろいろと変わったんだ。この際自分自身もっと社交的になろう。
節度はもちろん守るが性格的にももう少しアクティブになってみようと思う。

今回もやはりだめだった。敗因は数学。決着は1月の時点で、いや、小学校の時点で決まっていたのかもしれない。俺には計算能力が圧倒的に欠如している。こればかりは2,3年そこらでどうにかなる問題ではなかった。
家族、先生、友人へ連絡をいれる。平静を装うも、声が震えてしまう。
辛い、また面倒を掛けさせてしまう。そうした罪悪感が胸を締め付ける。
自分としてはやりきったつもりだったが、やはり悔しさが沸き上がってくる。
そりゃそうだ。そんな簡単に納得できるほど甘い考えでは臨まなかったのだから悔しくて当然だ。
でも、そこに後悔はない。俺は戦いきったから。
3年間おつかれ。よく戦いきった。よく諦めなかった。
ゆっくり休んでいてくれ。
君の想いも、努力も全部俺が受け継いで行くよ。

こうしてまたひとつの夢が終わった。
この先もまたどこかで間違えて遠回りをするかもしれない。空回りして迷惑をかけるかもしれない。
でも、俺は止まってられない。ここで諦めたらこいつらが報われない。夢があるんだ。
例えその道が遠回りになったとしても、俺は歩き続ける。ゴールに向かって。







2015年1月1日の朝4時。
ふと目を覚ました。
いつもなら机に向かうか本を読むかするのだが今朝に限ってはどちらもやる気にならなかった。
飲みかけの缶コーヒーを飲み干し、最近買ったばかりのコートを着て家を出た。
特に何するでもなくただ風に当たりたかった。しかし、空には雲が薄くかかり、星がよく見えない。これではつまらないと俺は歩き始めた。これもまた目的のないただの散歩である。
さすが年明けの早朝だけに歩く人はおろか車一つ走ってはいなかった。辺りは静まり、イヤホンから流れる音と足音だけが聞こえてくる。
その中で俺は今現在心の隅にひっかかっているものについてあれこれ考えていた。将来のこと、家のこと、自身の現状とその分析。一つ一つじっくり考えた。そうするにつれてさっきまで曇って見えなかった光が少しずつだが見えてきたように思える。
東の空が明るくなり始めた頃、俺は家に着いた。部屋に戻り一言つぶやく、いろいろ結論が出た中で特に心に止めるべきことばを、
   "Age quod agis.
                     ー 己のやるべきことをなせ "