「でも、何か足りない。」
その日の夕焼けは、戦艦の中で見た。
彼の心は何か浮かばれない。
実際いきなりの大活躍、しかもかなりの有名な部隊に入隊。
何も不満は無いはずだった。
「でも、何か足りない。」
そんな彼の心はすっかり冷めてしまっているようだ。
この戦艦の皆は自由時間で、各々自由に行動している。
リチャードはもともと正式なブレイクのパイロットの部屋に居た。
そこはロベルトとの相部屋だった。
その部屋は凄く散らかっていて、今ロバート共に掃除をしていた所だった。
もともとロベルトももう一人の男も整理整頓ができない連中だったらしい。
ロベルトは今何やっているかというと、テレビで彼の好きなアイドルを見ていた。
「まったく。呑気な・・・・・・。」
「ロベルトさん、そんなもの見てないで手伝ってくださいよ。僕一人じゃとても大変ですよ。」
とロベルトに言ったが見事に無視された。
ロバートは
「あいつはコーディネータの歌姫を見ると他には何も感じなくなってしまうのだよ。」
と少し哀愁を込めて言った。
ふとリチャードはそのロベルトが夢中になっているザフトの歌姫を見た。
そこには綺麗な黒髪で、顔はアジア系で、かなりの童顔だった。
少し垂れ気味で大きな茶色の目をしている。
「どっちかと言うと・・・・・・、可愛い系ですね・・・・・・。」
リチャードはかなり落胆した声で言った。
「しかし、その歌声はかつてのラクスの再来とも言われているぞ。」
といきなりロベルトが言った。
「彼女、イヴはな、かつてのラクスのように政治的な力を持っていてな・・・・・・。」
と延々イヴと言う女の子の説明を真顔で始めた。
「いつもこうなんですか?」
ロバートに聞いた。
「ああ。」
と即答された。
やっとロベルトの説教も終わり、掃除の方もロバートが手伝い終わり見えてきた。
「ご苦労さん。いや、助かったよ。」
と暢気に言われて、リチャードはかなりムカついたが、怒る余力がもう無い。
「またよろしくな。」
と言われたが、
「嫌です。」
と即答した。
いままで掃除していたリチャードは改めて中を案内された。
戦艦の中はとても広く、設備も充実している。
艦内の案内が終わったところでパイロットスーツを渡された。
そこで、ふと思い出した事があった。
「そういえば、侵入者が着ていたパイロットスーツってなんか・・・・・・見たこと無いタイプでした。」
そう、リチャードが見たパイロットスーツはザフトの物でなく、ましてや地球連合の物でもない。
「どんな形だったんだ?」
とロバートが聞いた。そこで、リチャードが説明するとロバートは驚いた。
「成る程・・・・・・だから基地の場所もばれてしまったのか。」
と呟いた。
理解できないリチャードは説明を求めた。
そこで仕方なさそうな顔をしてロバートは説明し始めた。
「いいか?この世界には連合とザフト以外に第三勢力があるんだ。」
その言葉にはリチャードも大変驚いた。
しかしロバートは説明を続ける。
「もともと、オーブっていう国が援助する軍隊でな、ユリウス軍っていう軍なんだ。その軍は人数が少なく、部隊も少人数であまり知られてないんだけど、間違いなく連合やザフトに匹敵する力をもっている。」
そういう説明を聞きリチャードはさらに驚いた。
少人数でザフトや連合と互角となるということは一人一人がエースパイロットということだ。
「そのユリウス軍の目的ってなんなんですか?」
とリチャードは質問した。
しかし、返答は
「分からない。ただユリウス軍の連中は情報収集が巧く、大体いつも連合やザフトの情報はいつも筒抜けだ。」
と言った。
「じゃあ基地にザフトが攻めてこられたのは・・・・・・。」
「ユリウス軍の連中が情報を手に入れ、それを流したんだろ。ユリウス軍の作戦は非常に巧みだからな。」
改めてリチャードはユリウス軍の恐ろしさを知った。
「じゃあ・・・・・・ブレイクシステムのデータをユリウス軍が手に入れたら・・・・・・。」
「大丈夫だと思うぜ。彼奴ら戦闘しても、戦闘不能にするだけで撃墜まではしない。かつてのフリーダムのように・・・・・・。」
フリーダム、それは百年前の伝説の機体である。
しかし決して殺しはせず、あらゆる機体を戦闘不能ナチュラルとコーディネータとの戦いを終結させた伝説の機体だ。
「ユリウス軍の一人一人がフリーダム並だと思って良いかもな。」
ロバートのその言葉にリチャードは背筋が凍るような気がした。
人数が少ないのが唯一の助けだと気がついた。
「ユリウス軍の幹部は未だ不明。しかし元地球連合少将の小狼と、ザフトのアダムと言われている。」
二人とも知っている名である。
2年前の戦争の時の両陣営のエース同士だったのだ。
停戦と同時に二人は行方をくらました。
そんな二人がユリウス軍を立ち上げたのなら、その真意はますます分らなくなる。
「怖いですね。そのユリウス軍ってのは・・・・・・。」
かなり気が弱ったようにリチャードは言った。
しばらくして警報が鳴った。
「敵か!」
艦内にいる者は所定の配置につく。
「パイロットは指示があるまでMSで待機。」
リチャードたちはすぐにスーツに着替えて、MSに乗り込んだ。
「敵は何機だ?」
ジョバンニは聞いた。
レーダーに映っているのは10機ほど。
「この識別コードは・・・・・・ユリウス軍のスターライツが10機です。」
「何!こんな時に・・・・・・。」
ジョバンニはパイロット達に指示を出した。
「いきなりですか。まさに噂をすれば影だ。」
ロバートのその言葉は、とても頼りなかった。
「く・・・・・・怖い。」
リチャードは怖気づいてしまった。