村上龍と韓国ドラマとイ・ジョンジェ
春樹センセイが受賞や新刊で次々と話題を呼ぶ中、ちょっと印象の薄い龍センセイ(ゴメンナサイ)の最新刊は、
- すべての男は消耗品である。 Vol.10 大不況とパンデミック/村上 龍
- Vol.10なのですね、感嘆!
目次の中の
・韓国ドラマ『砂時計』とイ・ジョンジェ
・人妻と機会費用(書き下ろし)
というふたつのタイトルが気になったので、本屋で立ち読み(ふたたびゴメンナサイ)。
イ・ジョンジェという俳優さんは、日本での知名度はとても低いのですが、たいへんにディープなファン層をもつ人です。いわゆるイケメンというのではなく、かといってヘンな顔でもなく、普通っぽい感じなのですが、ツボに入ってしまうとすっぽりはまってしまう俳優さんなのです。
韓国では、タイトルにある「砂時計」というドラマで一躍スターとなり、知らない人はいないという有名人ですが、日本での活動は今まで控えめで、個人的には反日家なのではとひそかに疑っていたくらいです。
ところで、龍センセイがワタシのような日本の中年女性の生態の研究のために韓国ドラマを見るわけはないし・・・と思ったら、朝鮮半島が舞台の作品があることを思い出しました。きっと、そちらの資料集めの過程で視聴したのではないでしょうか。
タイトルに、イ・ジョンジェとあったので、彼のことが何か書いてあるのかと期待して読んでみたのですが、「好きな俳優」と書いてあっただけで、なぜ好きなのかとか、どういうところが良いのかなどには言及されておらず、光州事件のことはこのドラマで知った、などという話題が中心で、ちょっとがっかりしました。
「人妻と機会費用」のほうですが、”人妻”と”機会費用”という異質な単語の組み合わせのタイトルに引かれて読み始めたところ、機会費用(=opportunity cost 、それをしなかったら他にどんなことができたのか、そのできたであろうことにかかる費用)が高すぎるから、人妻を誘惑したり、人妻と交際したりすることは割に合わないというかなり常識的な結論で、もっとスリリングな展開を期待していたワタシはどっと腰抜け。
ここまでで、立ち読み終了。
残念ながら購入には至りませんでした。
目次を見て、
1●韓国ドラマ『砂時計』とイ・ジョンジェ
2 ●パキスタンとタリバン
3 ●セミのシャワーと朝青龍
4 ●社会的信頼と安倍晋三
5 ●官能と広東料理
6 ●ミシュランの星とサルコジ大統領
7 ●置き去りにされる人とショットガン
8 ●ねじれ国会と医療危機
9 ●イージス艦とNYフィル平壌公演
10 ●日本のゆっくりした衰退と大手既成メディア
11 ●笑顔とトッポギ
12 ●ヒューマニズムと貧困層
13 ●苦闘する勤務医とオタクの街の通り魔事件
14 ●巨悪の不在とタクシー運転手の缶ビール
15 ●北京オリンピックとプーチン
16 ●麻生新政権と北島康介
17 ●世界的大不況と投資銀行
18 ●救急患者のたらい回しと病院の受け入れ不能
19 ●派遣切りと外国人ホームレス
20 ●高度成長と猟奇的殺人事件
21 ●セックスと発泡酒
22 ●北朝鮮の飛翔体と日本の離島
23 ●人妻と機会費用
24 ●現在の消耗品と未来の消耗品
ひとつひとつのネーミングが上手いなあ、さすが言葉のプロだなあ、(龍センセイ自身はタイトル付けにはいつも苦労していると言っていますが)と思わせられました。
