―――夢を、見た。




「かわいいわね~」




木目調の落ち着いた雰囲気の家。

見なれた場所に、僕はいた。




「えぇとっても。祥吾(しょうご)さんにそっくりだわ!」

「そうかしらぁ?目が咲苗(さなえ)さん似よ」

「まぁとにかく…おめでとう、咲苗さん」


「ありがとうございます…」




赤ん坊を抱いた女性が、はにかんだ。



そこにいる人たちは、僕が見えないみたいだった。


…でもその前に僕は言葉を失った。



祥吾。咲苗。

間違えるはずもない、両親の名前だった。

ということは、必然的に腕に抱かれている赤ん坊は、



『僕、 なのか…?』



なぜ、こんな夢を僕は見ているのだろう。

…ありえないのだ。

まだ物心のついていない歳。

記憶があるはずもないのだ。

なぜ―――――





『それは俺が"みせて"いるからだよ』






背後から男の声がして、僕はばっと振り向く。



そこには 怪しいなりをした青年が一人、

異様な雰囲気を漂わせ、静かに佇んでいた。



透き通るように白い肌。

光までをも吸い込む、黒の服。

そして…口角を上げて嗤う、狐のお面。


どこからみても怪しいことに変わりは無い。



『お前…誰だ?』



知らずの内に、僕は在り来たりな質問をぶつけていた。

自然に一歩、そろりと足を引く。




『俺はこの世界の住人。名前は―――そうだな、』

九尾の妖狐と名乗った男は僕に歩み寄った。




『 "九尾の妖狐" 、とでも名乗っておこうか』



ひゅ と、無意識に息を飲んでいた。


そんな僕を見て、男は更にこちらを覗き込んでくる。




『君は…三島 祥太。だね?』




ほぼ断定した言い方でそう言うと、

ふいに体を起こしてパチンと指を鳴らした。




それを合図とするように

僕の視界が急に薄れてくる。



『        』




意識が遠のく前、そいつが何かを言った気がした。









To be continue...






底知れぬ黒しか存在することのない世界。

耳鳴りがするほどの無音の空間。



その中に、君と二人。



淡い空色の髪。
汚れ無き白い肌。
華奢な手足。
小さく柔らかな唇。

まるで壊れた人形を扱うように優しく触れる。



自分よりも細いその躯を抱きしめる。

誰にも奪われないように。

強く、強く、強く、強く、強く。



愛してるよ、と僕は彼に囁きかける。


深く刻み込むように。

何度も、何度も、何度も、何度も、何度も。




くつり、と。
僕は確かに笑っていた。




細めた双眸を喜びに染めて。




『OnLy to mE』



(僕の瞳に映るのは、いつだって君一人)








闇に輝くその朱は、

 闇に埋もれた碧〈ボク〉を照らした―――








夕暮れ時の神社に、1人。

僕は眼下の景色を眺めていた。



時が移ろうと共に黄昏に染まる町。

時を告げる愛の鐘の音。

友達と別れ、家路を急ぐ子供逹。



「――― …そろそろ帰るか」



腕の時計を見るとかれこれ1時間は経っている。

案外 長い間、物思いにふけっていたらしい。


僕はゆっくりと自分の家へ向かって歩きはじめた。



- * - * - * - * - * - * - * - * - * - * - * -



誰もいない、薄暗い畳の部屋に帰る。

風呂に入り食事を済ませた後、
部屋の隅にあるパソコンの電源を付けた。

起動するまでにコンポで曲を小さく流す。

哀愁漂う、ヴァイオリンの音が部屋に響き渡った。



僕は三島 祥太(みしま しょうた)。

両親はいなく、顔も知らない親戚からの送金で1人暮らしをしている。

年齢は今年で14歳。
本来ならば中学生だが、しばらく学校に行っていない。

まぁ要するに不登校だ。



別にいじめられたとかではなかった。

『ここに居辛い』
『ここには居場所がない』―――

そう思っているうちに、自然と学校にいかなくなった。

それだけだった。



そうして変化の無い毎日を送っている僕には、
もうひとつの【顔】がある。



【謎の天才小説家"九尾の妖狐"】



僕は、ネット上で ブログ小説家"九尾の妖狐"として名を馳せている。

幅広いジャンルの小説を書き
爆発的な人気を誇っている一方で、

年齢、性別共に伏せられている
謎の人物として有名なのだ。



学校や近所の人で僕のこんな面を知る人はおそらく―――、



「いや、1人いたな…」



そう呟きながら、
ブログの感想やリクエストが寄せられているページを開く。

3時間かけてやっと全て目を通し終え、
僕は自らの小説創作に取り掛かった。






To be continue...






貴方は私を深く愛してくれた。


けれど私は 貴方を愛したままではいられない。



愛せば愛すほど、貴方を壊したくて堪らなくなる。



私が愛すことを

世界が、

この身体が、

許してくれないから。






だから私は貴方を壊すの。

愛してるから、殺すの。






だからお願い。

もう一度だけ聞かせて。






あなたの声で。






『お前だけを愛してる』って―――