パーソナルトレーナー/写真作家 古川貴久 【Personal Trainer / Photoartist】 Takahisa Furukawa -5ページ目

パーソナルトレーナー/写真作家 古川貴久 【Personal Trainer / Photoartist】 Takahisa Furukawa

◆ピラティス・マスターストレッチ・ウェイトトレーニング
◆ポルトガル写真、東京浅草写真

 サッカーファンなら周知のことですが、現在ヨーロッパではユーロ2024が行われています。6月14日の開幕戦、開催国ドイツの圧勝劇を皮切りに、すでにグループステージの日程が全て終了しており、16強が出揃いました。ポルトガルは2勝1敗でグループステージを1位で通過し、ノックアウトステージでスロベニアと対戦します。日本ではAbemaTVで全試合が無料で配信され、さらに見逃し配信も視聴可能です。本当に便利な時代になりました。

 

 私もポルトガル戦は全て観戦しました。2020年の時(新型コロナ流行により開催は2021年)は結果のみをチェックしただけでしたが、フル観戦するのは2016年にポルトガルがユーロを制覇した時以来。私は当時ポルトガルのリスボンに滞在しており、パブリックビューイングにて現地のポルトガル人とともに優勝を喜びました。今回は日本でのテレビ観戦でしたが、聞き覚えのあるポルトガル国歌が流れてきた時は鳥肌が立ちました。印象的だったのは、初戦の国歌斉唱のシーン。今回でなんと6度目のユーロ出場となる不動のキャプテン、クリスティアーノ・ロナウドの笑顔でした。整列時はいつもの定位置、GKの横に斜めに立ち、斉唱中は喜色満面の表情を抑えようとはしませんでした。2022年のワールドカップでポルトガルはベスト8でモロッコによもやの敗戦を喫し、ロナウド時代の終焉を誰もが予想しましたが、その後新監督に就任したロベルト・マルティネス政権のもと、再び代表にカムバック。“ただで自分の居場所を他人に譲る気はない”という強烈なプライドを支えに、召集された試合は全てスタメン出場し、相変わらずの決定力の高さを見せ続けてきました。もう一度ポルトガル代表選手として、キャプテンとして、このような大きな国際大会の舞台に戻ってきたかったという彼の胸の内を伺い知れるワンシーンでした。

 

 グループステージ初戦の対戦相手はチェコ。元FCポルトの指揮官セルジオ・コンセイソンの息子、フランシスコ・コンセイソンのアディショナルタイムでの劇的ゴールでポルトガルが逆転勝利を収めました。親子二世代に渡るユーロでのゴールと劇的な幕切れがゆえに、メディアの見出しはその切り口が大半でしたが、指揮官のロベルト・マルティネスにとっては想定内の展開だったのではないでしょうか。交代カードの決断が非常に早く、そしてそれがずばりはまった形になりました。ポルトガル人監督がよく使う言葉で言えば、“JUSTO”(正当な)だったということになるでしょう。この試合でのポルトガルのフォーメーションは3-4-3。相手が2トップだったこともあり、3バックを敷いてきました。現地放送の紹介では3-5-2となっていましたが、正確には3-4-3です。ロナウドのほぼ1トップ状態でラファエル・レオンが左サイドでアイソレイト、ベルナルド・シルバが右サイドから中、左へと動き回る変則3トップ。序盤から常にポルトガルがポゼッションで上回り、攻勢に推移していましたが、なかなかゴールが割れない状況が続きます。自陣に引いてリトリートした相手をどう崩すのかという課題は、自分たちが相手よりも優勢のチームにおいて共通のものだということを再認識させられる展開でした。クロスが入ってもゴール前の人数が足りておらず、ニアに飛び込む選手が誰もいないという局面も何度もありました。ロナウドはファーポスト側でボールを待つのが好みで、では誰がニアに詰めるのかという課題は3試合を通じて今後修正したい部分ではないでしょうか。もしくは単純にファーに上げてしまえという選択もあります。この試合ではロナウドとヌーノ・メンデスがファーで重なることが度々ありましたが、たとえアーリークロスでも単純に上げてしまえば、この二人なら必ず勝てます。そこでゴールを狙うなり、中に折り返すなりすれば決定的なチャンスが生まれやすく、ポルトガルの1点目がまさにそんな展開でした。ファーでヌーノ・メンデスが中に折り返したところでチェコDFの足に当たりオウンゴール。たとえ詰められなくとも、バイタルエリアに混乱を来たすことも出来ます。攻撃のオプションとして意図的に取り入れたいところです。また、この日輝いたのは何といってもMOTMにも選出されたヴィチーニャ。彼は現在パリ・サンジェルマンに所属する選手ですが、FCポルト時代は、主に2000年代に活躍した“デコの再来”と言われた若き俊英です。最終ラインやサイドにボールがある時は常に顔を出し、まさにマエストロの如くゲームの流れを変え、支配していました。間違いなく今後のポルトガル代表を担っていく逸材の一人と言えます。

 

 第2戦目の相手はトルコ。相手が1トップであったため、ポルトガルのフォーメーションは4-3-3、もしくは4-2-3-1。CBには初戦に続き、ペペがスタメン入り。ロナウドの6度目の出場に話題が集まる中、ペペも5度目の出場で、かつ最年長出場記録を更新しています。実際のプレーを見ても、41歳という年齢を全く感じさせないプレー振りで、むしろフィジカルと経験の掛け合わせで凄みを増している印象でした。中盤のアンカーには現在プレミアリーグのフラムで活躍するパリーニャ。パリーニャは対人の守備の強さが特徴で、まさに潰し役。4バックで中央がCB2枚の時は彼がいると守備面で安定感が増すのですが、これがこの試合ははまりませんでした。前の試合でMOTMに輝いたヴィチーニャには当然マークが集中する中、なかなか彼をサポートするようなポジションが取れず、ポルトガルにとって前半は停滞した流れに終始しました。ポゼッションもスムーズでない中、指揮官ロベルト・マルティネスはパリーニャを前半で退かせ、後半からルーベン・ネヴェスを投入。その後は相手のマークする的が分散され、ヴィチーニャも比較的楽な形で前を向いてプレーする機会が増えました。後半はポゼッションも高まり、ポルトガルが圧倒する展開となりました。ただ、3-0というスコアで見るほどイージーではなかったという印象です。この試合のMOTMはベルナルド・シルバ。ロナウド、ラファエル・レオンが中央と左サイドのレーンからほとんど動かない中で、一人だけ左サイドから中央、右サイドまで衛星のように動き回り、1試合の走行距離が2戦ともに12キロ前後にも及ぶその豊富な運動量は、特に前線のローテーションの部分において存在感を示しました。ただこの試合においては、82分の交代の際にはトルコサポーターからも万雷の拍手が送られたペペでも良かったのではないでしょうか。

 

 2連勝ですでにグループステージ1位通過が決まり、迎えた第3戦目の相手はジョージア。結果から言えば、0-2でユーロ初出場のジョージアに歴史的勝利を献上することになるのですが、ポルトガルにとってこの試合の位置付けがチーム全体として難しかったのではないでしょうか。現場としては“消化試合”とは思ってはいなかったはずですが、ターンオーバーなのか、勝ちにいくのか、目的を一つに絞るべきでした。優先順位と言ってもいいかもしれませんが、そのゲームプランの曖昧さが、結果だけではなく、試合とチームの雰囲気にまで波及してしまった感があります。ターンオーバーを敢行するなら2戦連続フル出場のロナウドもスタメンから外し、常時バックアップメンバーに甘んじているゴンサロ・ラモスを起用した方が良かったでしょうし、ルーベン・ネヴェスがコメントしていたように“我々はグループリーグを完全な形で(3連勝で)終えたい”というのであれば、2~3人のメンバー変更はあってもほぼベストで臨むべきでした。GKのディオゴ・コスタはともかく、ロナウドも先発したことで、ピッチ上での選手間の温度差が浮き彫りになってしまいました。“ローテーションもダイナミズムもない、魂のないチーム”とポルトガルのとあるメディアがこの試合を断罪していましたが、そう批評されても仕方のない内容でした。ロナウドは当然勝利を最優先しますし、サブのメンバーで個においてもグループにおいても必然的にクオリティが落ちる中で、ロナウドがストレスを爆発させてしまったのは必然の成り行きだったのではないでしょうか。指揮官も選手たちも、次の試合に向けてこの敗戦の影響はないと口を揃えてコメントしていましたが、どこか連勝の良い流れが滞ってしまったという印象が拭えない結果でした。

 

 前述の通り、ノックアウトステージ、ラウンド16の相手はスロベニアに決まっています。ノックアウトステージに入れば、ポルトガルが圧倒的優勢という展開にはほとんどならないですが、ボールを持たされた時にどう崩すのかという課題は3試合を通して明確に見えましたし、ジョージア戦ではプランBのグループ構成の脆さも露呈してしまいました。プランAの中で3-4-3、4-3-3と相手によってフォーメーションを柔軟に変更し、そこをベースに選手の入れ替えによって違いを創り出していく、という戦い方が今後続いていくでしょう。まずはラウンド16。負ければ終わりなので、一戦一戦に集中を。第3戦目の悪印象が杞憂に終わることを願って、スロベニア戦を観戦したいと思います。