

今回のテーマは Pureness です。80年代初めに、イギリスでネオアコといわれる音楽が登場した頃から、従来からある商業的な匂いの付いたポップミュージックとは違った音楽が目立って登場するようになります。 またそれらのアーティストたちをそのままの姿で育てようとするインディーズ・レーベルも台頭してきます。
と言うわけで。。。
EVERYTHING BUT THE GIRL / Old Friends (1991)
イングランドの大学で出会ったというふたり、トレイシー・ソーンとベン・ワットが、エヴリシング・バット・ザ・ガールとしてデビューしたのが1982年。 84年のデビュー・アルバム『Eden』は、ジャズやボサノバの要素を取り入れたアコースティックなポップ・アルバムです。あの時代の音楽としてはとてもお洒落でした。ネオアコを代表する音楽のひとつであったのは間違いないですね。
そんな彼らも、1990年のアルバム『Language Of Life』では、ジャズ・フュージョン系の大御所プロデューサー、トミー・リピューマを迎えてLAにて録音。 これが従来のファンの一部からは評判が芳しくなく、僕自身もあまり好きではなかった記憶があります(このアルバムはそれ以来ずっと聴いていない)。
ですが、91年発表の次のアルバム『Worldwide』では原点回帰とも言える素朴な味わい持った音を展開。これは好きなアルバムです。アルバム冒頭に収められた曲「Old Friends」をはじめ、EBTGらしいホッとするような曲がいくつもあります。随所でプログラミングが使われてはいますが、それがセンス良く使用されているため違和感はありません。
トレイシー・ソーンの優しく包み込むような、けれどどこかダークでもある歌声は魅力的です。
THE SUNDAYS / Goodbye(1992)
ブリストルの大学で知り合ったというハリエット・ウィーラー(vo) とデイヴィッド・ガブリンを中心に結成されたサンディズ。 89年に、スミスやアズテック・カメラが所属していたことで知られるインディーズ・レーベル、ラフトレードからデビューします。音的にはスミスの影響下にあったギター・ポップ・バンドです。
シングル「can't Be Sure」がヒットした後、メジャー・レーベルが争奪戦を展開しますが、彼らはインディペンデントのラフトレードを選択します。 デビュー・アルバムのジャケットデザインからして地味なものであったし、いわゆるポップ・スターを目指して結成されたバンドでないことは、あらゆる事象から容易に想像出来ました。
「今の世の中、目的があまりにも不健全で、金に対する思惑が見えすぎている」と言う言葉を、メンバーのデヴィッド・ガブリンが当時残しています。90年に、渋谷クアトロでの来日公演に行ったのですが、大学の音楽サークルのバンドのようなピュアな佇まいが、鮮烈な印象として刻まれています。演奏技術は確かなものでしたが、何よりもヴォーカルのハリエットの透明感のある歌声が魅力的でした。
"天使のような” なんて表現はチープですが、間近で聴いた彼女の歌声はそういった類のものでしたね。エネルギーが外には向かわず、内に向かっていた印象です。
97年に3枚目のアルバムを発表してから、彼らの活動の情報は途絶えましたが、残された3枚はどれも決して褪せることのない素晴らしいアルバムです。
EDDI READER / Cinderellas Downfall (1992)
スコットランド出身の女性シンガー、エディ・リーダーは、プロとしてのキャリアをスタートする以前は、ストリート・ミュージシャンとして活動していた時期もあるひとです。その時代に培った Pureness が、もしかしたらフェアグラウンド・アトラクションを解散へと導く要因にもなったのかな、と。
→ フェアグラウンド・アトラクション
フェアグラウンド・アトラクションが、1988年に発表した1st・アルバム 『The First Of Million Kisses』は、英国の音楽賞 BRIT AWRD で年間最優秀賞を受賞。現在でも新たなファンを生み出している素晴らしいアコースティック・ポップ・アルバムです。しかしグループはたった1枚のこのアルバムを残して解散してしまいます。大きな成功を掴んだのに何故?と考えること自体が俗物の証しなのかもしれません。
音楽の世界でもたまに耳にするシンデレラ・ストーリー。成功を掴んだことよって失うものと言うのは、それを経験したものにしかわからないというのはあるでしょう。彼女はスターであることよりも、ひとりのシンガーとしての道を選んだという事です。
