
チャーリー・ワッツ亡き後、ローリング・ストーンズはスティーブ・ジョーダンをツアー・ドラマーとして起用。 9月26日からスタートした北米ツアーは、13公演目となった11月23日のフロリダ公演で無事終了となり、さらに12月6日にはチャーリーに捧げる形での小規模なロンドン公演も行われたとのこと。
結成60周年となる来年はどうなるのか。ミック・ジャガーは「皆にやる気があるなら」と言っているようですが。
今回のツアーで話題のひとつとなったのは、セットリストから 「ブラウン・シュガー」が外されたことです。ストーンズ側の判断によって "段階的に" と伝えられています。 ファンにとっては重要なことです。 ライヴでは、「ホンキー・トンク・ウィメン」 や 「ジャンピング・ジャック・フラッシュ」 等と共に人気の高い曲。 盛り上がるんですよね。 2014年の来日公演でももちろん演奏されました。
奴隷売買を歌った内容は、71年の発表当時から物議を醸しています。 いずれこの曲を歌えない日がくるのではないかという予感を、ミックもキースも持っていたのではないでしょうか。人種差別や性差別、ハラスメントに対し非常に敏感になっている昨今、ローリング・ストーンズの楽曲には、ターゲットになりそうな曲が多いですからね。
ブラウン・シュガー / Brown Sugar

ゴールドコーストの奴隷船は綿花畑を目指す
ニューオーリンズ市場で売られるそうだ
頬に傷のある年寄りの奴隷主は、いい気分でいるようだ
真夜中に女たちといる奴の声を聞いてみなよ
ブラウン シュガー
おまえはなんていい味なんだ
ブラウン シュガー
若い女はこうでなくちゃ
Gold coast slave ship bound for cotton fields,
Sold in a market down in new orleans
Scarred old slaver know he's doin alright
Hear him whip the women just around midnight
Brown sugar
how come you taste so good
Brown sugar
just like a young girl should


ゴールドコースト (黄金海岸) とは、西アフリカの地名。 そこからアメリカ最大の奴隷市場・ニューオリンズへと黒人たちは輸送され売買される。 買うのはもちろん金持ちの白人たち。19世紀の話です。 ブラウン・シュガーは黒人女性を意味し、奴隷の持ち主はその味を楽しむ、といった内容。もちろん性的な意味でです。2番も3番も、奴隷たちを犯す歌詞が続き、奴隷主は 「最高の味だ!」 と声をあげる。
この曲の内容が、例えば史実として書かれたドキュメンタリー本の類であるなら、B.L.M の運動家たちも声をあげることはないのかも知れません。 キース・リチャーズが言っているように、「奴隷制度の恐怖についてを訴えた」 として理解し。 しかしながら、それがキャッチーなロックナンバーとして仕上げられ、皆がライヴで盛り上がっているとしたら。 スキャンダルを売りにして巨大化した不良たち、ザ・ローリング・ストーンズでもさすがに苦しい。時代は21世紀ですからね。
ちなみにミック・ジャガーは 「現在であれば絶対にこの曲を書かない。 自己検閲するだろう」 と、95年の時点ですでに語っています。 キース・リチャーズは 「今はゴタゴタに関わりたくない」 と言っていますが、それは本音だと思いますね。 多くの時間が残されてはいないストーンズにとって、停滞はバンドの死を意味しますからね。やはりセットリストから外れたのは仕方のないことなのでしょう。
Brown Sugar (1971)
おなじみのシンボル、ベロマークのローリング・ストーンズ・レコード 第一弾シングル。 全米1位。 アラバマ州のマッスル・ショールズ・スタジオで録音されています。
誤解のないよう記しておきたいこと。 ストーンズ・ファンであるなら言う必要もないとは思いますが、ストーンズのメンバーに人種差別主義者はいないという事は断言しておきたいです。それは62年のグループ結成以来の、長年の黒人アーティストたちへの敬愛を示した態度をみればわかると思います。
ただし、女性蔑視を歌った曲については擁護の難しい曲もあります。 これはキース・リチャードがかつて言っていたことですが、「俺たちをとりまく環境のせいさ。 ホテルにはバカな女が多すぎる」 と。 キースの言うバカな女というのは、いわゆるゴールド・ディガー、金目当ての女ということです。あるいはストーンズのメンバーと寝たことを、仲間うちで名誉のようにして語る女たちのこと。
実際、かつてストーンズでは、メンバーが新しい恋人を連れてきたさい、彼女の気持ちが本物であるかどうかをメンバー皆で試したりしたこともあるそうです。 バンドをとりまく女性が、バンドを崩壊へと導くなんてことは有名無名を問わずどこにでもあることですからね。今後は、例えば 「スター・スター」 や 「アンダー・マイ・サム」 などが、そちら方面の活動家たちのやり玉に挙げられないよう願いたいところです。

