1970年のダッチ・インベイジョン | Get Up And Go !

Get Up And Go !

音楽を中心に、映画、文芸、スポーツ など・・・。

より高く! より深く! けれど優雅に・・・ 冗談も好きなんですけどね (*゚.゚)ゞ






ブリティッシュ・インヴェイジョンならぬダッチ・インヴェイジョン。 ロックの歴史を紐解けば、一応そういった記述も残されています。 この場合のインヴェイジョン (invasion∶侵攻) とは、アメリカのヒットチャートへのそれを指すのが一般的です。 オランダ (Dutch) のロックが、アメリカのマーケットを席捲した時期があったということ。 いや、席捲は大げさかも。 ちょっとしたブームがあったと言うことですね。

SHOCKING BLUE / Venus
ショッキング・ブルーの 「ヴィーナス」。 1970年に、全米No.1ヒットとなったこの曲を知らないという人は少ないでしょう。 80年代にはバナナラマがカバーし、こちらも全米No.1ヒット。 日本人歌手によっても何度かカバーされ、ヒットしたものもあります。

この曲は有名でも、ショッキング・ブルーがオランダのバンドであることを知らないという人が現在は多いような気がします。「ヴィーナス」 は、オランダのアーティストとしては初めての全米No.1ヒットです。

1969年夏にヨーロッパ各国でヒットしていたこの曲に目を付けたのが、アメリカ・フィラデルフィアのプロデューサー、ジェリー・ロスです。 新たに起ち上げたレーベル 「コロッサス」から発売すべく、版権を獲得しアメリカでもリリース。1970年2月に、全米で1位に駆け上がります。 楽曲の衝撃度は大ヒットに値するものであったと思います。






TEE-SET / Ma Belle Amie
ジェリー・ロスは、コロッサス・レーベルとして3組のオランダ人アーティストのシングルの版権を獲得しています。 ショッキング・ブルーの大ヒットに続いたのが、ティー・セットなる5人組グループによる 「マ・ベラミ」 です。 こちらの曲は 「ヴィーナス」 ほどのキャッチーさはありませんが、R&Bテイストによる深みを感じさせる曲です。 この曲も全米で5位となる大ヒット。 ジェリー・ロスの選択は正しかったわけです。 コロッサス以外のレーベルも当然、オランダ人アーティストの発掘を始めるわけですが、1970年のアメリカ音楽業界にはちょっとしたダッチ・サウンド・ブームが訪れたわけです。

ところで、オランダという国を皆さんはどのようにイメージされるでしょうか。 チューリップ、風車、運河の街 など、教科書に載っているようなことしか思い浮かばないのですが。 あとはサッカーぐらいですかね (かつて小野伸二選手がオランダ・リーグで活躍)。 当たり前のこととして、音楽もそこにはあるわけです。 ロックバンドとしてすぐに出てくる名前は、フォーカスとショッキング・ブルーぐらいでしょうかね。

*「マ・ベラミ」 のPVは、当時のアムステルダムで撮影されたものです。






GEORGE BAKER SELECTION / Little Green Bag
コロッサスの3番目のヒットとなったのが、ジョージ・ベーカー・セレクションの 「リトル・グリーン・バッグ」 です。 全米最高位21位なので、3曲の中では最も低い順位ですがとてもキャッチーで印象に残る曲です。

おそらくですが、日本では当時よりも現在のほうが広く知られている曲だと思います。 テレビCMでは何回も使用されているので耳にしたことがあるはずです。 僕はクエンティン・タランティーノ監督のデビュー作 『レザボア・ドッグス』(1993) の中で初めて耳にしました。 映画のタイトル・バックに流れるこの曲はとても鮮烈でした。 タランティーノ監督のセンスには唸るものがあります。






SHOCKING BLUE / Never Merry A Railroad Man
アメリカにおけるダッチ・サウンド・ブームは、「ヴィーナス」 の大ヒットが引き金になったわけですが、現在ではショッキング・ブルーはいわゆる一発屋 〈One Hit Wonder〉として語られてしまうことの多いバンドです。 確かに以後リリースした楽曲はアメリカでトップ40入りすることが出来なかったわけですが。 「ヴィーナス」 のインパクトがあまりにも大きかったがゆえに、一発屋の印象が際立ってしまうわけですね。

ショッキング・ブルーの音楽スタイルは、アメリカのサイケデリック・ロックの代表格・ジェファーソン・エアプレインからの影響を感じさせるものですが、ジェファーソンよりもわかり易くポップです。 そのあたりに、日本では一発屋では終わらずに、74年の解散までに数曲のヒットを出した要因があるように思います。 それからハンガリーとドイツの混血だという紅一点ボーカル、マリスカ・ヴェレスの魅力も、バンドの大きなウリとなったのは間違いないと思います。

「悲しき鉄道員」 という邦題のついたこの曲は、アメリカではTop100にも入ることが出来ませんでしたが、日本では50万枚を超えるヒットとなっています。