映画 『ロケットマン』 | Get Up And Go !

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ロケットマン (原題: ROCKETM
AN)(2019 / アメリカ)

● 監督:デクスター・フレッチャー
● 脚本:リー・ホール
● 制作総指揮 : エルトン・ジョン
● 音楽プロデューサー: ジャイルズ・マーティン
〇 出演:タロン・エガートン / ジェイミー・ベル / リチャード・マッデン / / ブライス・ダラス・ハワード


映画
イギリス郊外の町・ビナー。 不仲の両親のもと、愛を得られずに育った少年・レジナルド・ドワイトは、唯一 神から音楽の特別な才能を授かっていた。孤独はレジーを音楽にのめり込ませ、やがてその才能は育ち、認められ、王立音楽院に入学する。しかし傾倒していった音楽はロックであった。

エルトン・ジョンという新たな名前を名乗り、ミュージシャンを目指す中で、生涯の友となる作詞家・バーニー・トーピンと出会う。 そして、バーニーの詞にメロディをつけた名曲 「Your Song」 が生み出される。コンビで生み出されたいくつもの名曲を武器に、ライヴ・パファーマンスも成功させ、エルトンはスターへの階段を駆け上がっていく。





カチンコ
現在公開中の話題のミュージカル映画。 エルトン・ジョンの半生を描いた自伝的映画です。 監督は、クイーンの伝記映画 『ボヘミアン・ラプソディ』 を途中から引き継ぎ完成させたデクスター・フレッチャー。 主役のエルトンを演じたのは、『キングスマン』 のタロン・エガートン。 エルトン・ジョン本人が製作総指揮となっています。

こういった映画は、当然ながら音楽の部分が最重要となるわけですが、吹き替えなしで主演のタロン・エガートン自身がエルトンの名曲群を歌っています。 役者にしては、何て言うと失礼かもしれませんが合格点です (これもまた偉そうな言い方ですが)。

映画の中の楽曲のアレンジはジャイルズ・マーティンの担当です。 あのジョージ・マーティンの息子ですね。 エルトンは制作総指揮といっても、映画での楽曲の部分は口出しをせず、ほとんどふたりに任せたようです。




TARON EGERTON / Rocketman


洋楽を聴き始めた10代はじめ頃、エルトン・ジョンはすでに超の付く大スターでした。 当時の音楽雑誌で見たエルトンの写真でもっとも印象に残っているのは、映画の場面でも登場したスタジアムの大観衆の前で演奏する姿です。 毎週聴いていたラジオ番組 「アメリカン・トップ40」 では、出すアルバムは常に1位。 シングルもほとんど1位。 それが、映画で描かれた70年代のエルトンの印象ですね。 もっとも、その人気はアメリカ中心で、日本ではそこまでではなかったと記憶しています。

今回の映画を観て少しショックであったのは、ロックスター・エルトンの素顔の部分ですね。 ゲイとして生きてきたわけだから、辛い思いもしたであろうことは想像できるのですが、それが想像以上であったと。『ボヘミアン・ラプソディ』 でのフレディ・マーキュリーと重なる部分です。ドラッグに依存し、セックス中毒でもあり。





幼少時から両親に愛情を注がれることなく、孤独の中で育ったことも、エルトンの音楽的な才能を開花させた大きな要因だと思いますね。 よく言われることですが、"欠落こそがすぐれた芸術を生み出す源泉" であると。そんなふうに思ってしまいます。

精神的に涙顔のどん底にあっても、大観衆の待つスタジアムに出る瞬間に笑顔を作り、派手な衣装をまとって飛び跳ねるようにしてステージに出ていく道化師。

成功者となった自分を認めてもらいたくて、「一人前の大人になったよ」 とばかりに父親を訪ねても、幼少時と変わらない冷たい表情で迎えられるピノキオ。

映画はミュージカルという形で、そしてファンタジーとしても描かれています。 辛い内容ゆえに、それは正しい選択であったように思えますが、幻想は悲しさを浮き立たせる表現であったようにも思えます。ただ、この映画の持つ "悲しさ" を "美" へと昇華させているのは、何と言っても全編に流れるエルトンの音楽でしょう。




TARON EGERTON / Your Song


「Your Song」 「Goodbye Yellow Brick Road」 「Candle In The Windl」 「Rocketman」 ・・・。 バーニー・トーピンとのコンビによって生み出された名曲たち。 とりわけ、バラードは70年代を代表する名曲ばかりです。

バーニー・トーピンとの出会いがエルトンの救いであり、映画作品でも救いの部分として描かれています。 そういった意味では、映画タイトルは 「Your Song」 でも良かったと思うのですが。