ギルティ | Get Up And Go !

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ギルティ (原題:THE GUILTY) (2018 / デンマーク)
● 監督・脚本:グスタフ・モーラー
● 脚本:エミール・ナイガード・アルベルトセン
〇 出演:ヤコブ・セーダーグレン / イェシカ・ディナウエ / ヨハン・オルセン / オマール・シャガウィー


ストーリー 映画
主人公は緊急司令室でオペレーターとして勤務する、警察官のアスガー・ホルム。ある事件によって、捜査の一線から外されるようにして、交通事故などの緊急搬送を手配する職務に就く。

ある夜、まさに今 誘拐をされている最中にある女性からの、携帯電話による通報を受ける。 事件解決の糸口となるのは、電話から聞こえる "音" からの情報。息遣い、車の走行音、背景にある音・・・。 解決のため、情報を捜査課に伝え、付近のパトロール・カーも動き出すが、自らも行動に出る。

通報者に指示を出し、捜査員時代の同僚にも連絡をし現場へと向かわせる。緊急指令室からの遠隔によって事件を解決しようとこころみる。





カチンコ
ちょっとこれまで観たことのない種類の映画です。 とても面白かったのです。 サスペンス、推理モノの好きな方には特に薦めたい映画です。 簡単に記事としてまとめてみました。 ネタバレ、多少ありますが、どんでん返しの部分はもちろん記事にしていません。

密室劇なんですね。しかも舞台は緊急司令室のみ。 画面に映る時間の9割以上を占めるのは主人公の警察官アスガーで、あとは数名の同僚。 そしてカメラ長回しによって、リアルタイムでドラマが進行。 そういった特徴を持った映画です。 画面に映らない出演者たち ー 通報者の女性と彼女の子供、犯人と思われる男、以前の同僚 ー なども重要な役ではありますが、それは声 (電話) のみの出演です。





日本のテレビドラマ 『相棒』 で、杉下右京が犯人からの電話の、その背景にある音から場所や状況を掴み、解決の糸口にする。なんていうのがあったでしょ。 それをちょっと思い出したのですが、この映画は電話のやり取りのみで進行し、事件の現場は映像としては一切出てこないんですね。

予備知識ほとんどなしで観たので、「もうそろそろ事件の現場の映像が出てくるはずだろう」 などと最初は少しイラついたりもしたのですが、気が付くと自分の頭の中には、これまで観てきたいくつものサスペンスやスリラー映画の場面をつなぎ合わせるようにして 「場面」 の映像が作られていました。

この映画は、観客である私たちが感覚を研ぎ澄まして、電話からの声とその表情、背景から聞こえる音などによって、事件の状況を想像していくわけです。 映画館で観るならば、その大きな暗闇の空間に投影にするようにして、自分の想像力によって描かれた 「場面」 が浮かび上がるのです。 すぐれた手法ですね。





見えないことって、感覚を研ぎ澄ませ、想像力を駆使する力を120%ぐらいには上げる効果があるでしょ。 そして想像する像はそれぞれ皆が違うわけですね。 昔よく聴いたラジオドラマを思い出したりもしました。 ハリウッドの凄い映像ばかりを観すぎていると、退化してしまう機能もあるのかなぁ、なんてことも考えてしまいましたよ。

もうひとつ、登場人物たちが皆、鬱積した何かを背負っているところも、人間ドラマとしての深みを与える結果となっています。 そこにタイトルである 「ギルティ」 の意味するとところがあるわけです。 けっしてハリウッド映画のサスペンス、"スター俳優がスカッと事件解決" とはなってはいない映画です。





主演のヤコブ・セーダーグレンは1973年スウェーデン出身。 これまでヨーロッパでは数々の映画賞にノミネートされ、またいくつかの賞も獲得した俳優です。『ギルティ』 の画面を支配したその "表情" で、役者としての実力を広く世界に示すこととなりました。

監督のグスタフ・モーラーもスウェーデン出身、1988年生まれなので、監督としては若手でしょう。2015年、デンマーク国立映画学校を卒業し、その仲間たちと作り上げたのが 『ギルティ』 とのこと。明らかに低予算映画ですが、才能の結集と映画への情熱が作り上げた傑作、と言って良いのでは。 この監督の名前は今後忘れないでしょうね。