
ノーザン・ソウル (原題: NORTHERN SOUL ) (2014 / イギリス)
● 監督・脚本 エレイン・コンスタンティン
○ 出演 エリオット・ジェームズ・ラングリッジ / ジョシュ・ホワイトハウス / スティーヴ・クーガン / アントニア・トーマス / リサ・スタンスフィールド 他
(新宿シネマカリテにて、現在公開中)
ストーリー

物語の舞台は、イングランド北部の町・バーンズ・ワース。 経済の低迷が続く1974年のこと。
高校生のジョンは、学校ではイジめられ家庭にも居場所はなく、鬱屈した日々を送っていた。 唯一の慰めは、通学時のバスで見かけるかわいい黒人の女の子。 そして唯一の反抗は、建物の壁にスプレーで落書きをすること。
そんなジョンを心配した両親は、町の若者が集う地元のユース・クラブへの参加を勧める。 大人たちが仕切る退屈なクラブへ気乗りしないまま参加したジョンであったが、そこでアップ・ビートのソウル・ミュージックに合わせて激しく踊る長髪の青年・マットと出会う。
クラブでも特に目立ち注目を集めていたマットは、それを面白く思わない悪童たちにケンカを売られるが、ジョンは咄嗟の判断によって彼を助けることとなる。 そしてふたりは打ち解けることに。
マットはイングランド北部のクラブでブームとなっていた "ノーザン・ソウル" シーンの中で、DJとなることを志望する青年であった。 誰も知らないソウルのレコードを探すため、アメリカに行く夢をジョンに語るマット。やがてジョンも、マットに導かれるまま ”ノーザン・ソウル” に傾倒し、コンビを組むこととなる。 音楽の力で、絶望の街で暮らす自らの人生を変えるために。

いやぁ~ 面白かった!!! 先週2回観てしまいましたよ。もう1回行こうかなぁ。 ジャンルとしては青春映画になると思うのですが、イギリスのユースカルチャー "ノーザン・ソウル" を絡めての物語だったので、とても興味深く観ることが出来たのです。2014年にイギリスで公開された映画ですが、ようやくの日本公開となりました。
"ノーザン・ソウル" と言うのは、アメリカ北部のソウル・ミュージックという事ではなく、70年代前半にマンチェスターやブラックプールなどイングランド北部のクラブで起こったムーヴメントのことです。
FRANKIE VALLI & THE FOUR SEASONS / The Night (1972)
イギリスの音楽産業の中心・ロンドンではなく、北部の工場などで働く労働者階級の若者たちを中心にして盛り上がったムーヴメントであるところが、面白いところです。 クラブで踊るリスナーと、その音楽を選択するDJたちよって作り上げられたアンダーグラウンドな文化なんですね。
クラブDJたちが好んでプレイするのは、モータウンなどアメリカ産のソウル・ミュージックなのですが、特徴としてはアップ・ビートの曲であること。 それによって踊りは激しいものとなります。 ゆえに長時間踊るためには、アッパー系のドラッグであるアンフェタミンを服用しながら踊ったりもするようです。 トップ10ヒットのような有名な曲ではなく、皆が知らないレアな曲がほとんどです。 ここにDJたちのプライドがあるわけです。
THE SALVADORS / Stick By Me Baby (1967)
映画の中では、この曲が cover up されています。
"カバーアップ" (cover up) という言葉を、この映画で初めて知ったのですが、これはDJたちがライバルにそのレアな曲が誰の曲であるのかを隠すために、レコードのラベルにシールを貼ったりして隠す行為のことです。
この映画の監督であるエレイン・コンスタンティン、この方は女性なのですが、実際の ノーザン・ソウル・ムーヴメントの体験者だけに、説得力のある映画となっているんですね。
ファッション面でも、あくまでも踊るための機能性を重視した裾幅の広いバギー・パンツであったり、フレア・スカートであったりで、その点でもスクリーンに釘づけとなってしまいました。 "ノーザン・ソウル" というムーヴメントのことは、知識としては知っていましたが、こんなにも深く、そして熱い世界があったとは! . . . . .不覚です。
TOBI LEGEND / Time Will Pass You By (1968)
ノーザン・ソウル・シーンで、熱く支持を得ていた曲だそうです。 映画ではラストにこの曲が流れ、感動的に終わります。
若い主役のふたり、エリオット・ジェームズ・ラングリッジとジョシュ・ホワイトハウスが魅力的です。 また、エリオットの恋人役となった黒人女性アントニア・トーマスがとても素敵です。エリオットの母親役の女性が、リサ・スタンスフィールドであったのにはびっくりでした。
友情あり恋愛ありの青春映画ですが、傍らに音楽があることが物語をより魅力あるものにしています。
この映画を語るさい 同じイギリス映画である『さらば青春の光』 や 『ビギナーズ』 が引き合いに出されたりもするようです。 アメリカ映画ではありますが、エミネムの 『8マイル』 に通ずるものも感じます。
いや、どうにも好きなんですね。 「自意識過剰の強い意思」 「ここではないどこか別の場所」 を求めた青春映画って。 いい年をして 「中二病か?」 なんて言われたくはないのですが、卒業はしたくないんですね。 この映画の中にあるような世界からは。