『ベガーズ・バンケット』 50周年記念 | Get Up And Go !

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ローリング・ストーンズの代表作のひとつ 『ベガーズ・バンケット』、通称 "ベガバン" が、イギリスでリリースされたのが 1968年12月6日。 やはり68年生まれの ビートルズの "ホワイト" 等とともに、今年で50周年となります。

50周年記念エディションが、先月16日にすでに発売となっています。 リマスターされて、まぁクリアな音にはなっていますが、ベガバンの場合はあまり関係ないですね。 多少盤質が悪くても、アナログ盤で聴いたほうが良いと思いますよ。

「ストーンズ。ここのところ聴いていないな」 と思った時には、大抵このアルバムを引っ張り出して聴いています。 キース・リチャーズも、ベガバンをストーンズ作品のベストのひとつに挙げているし、そのあたりでも内容は保証付きだと思います。




Sympathy For The Devil (1968)
"whoo whoo" のコーラスには、キースの恋人 アニタ・パレンバーグと、ミックの恋人 マリアンヌ・フェイスフルのふたり、いわゆる「ストーンズの女」 も参加。


何と言っても「悪魔を憐れむ歌」 と 「ストリート・ファイティングマン」 の2曲が強力なアルバムです。 この2曲が、アナログ盤で言うと、A・B面それぞれの冒頭に収録されています。 この2曲を核としながらも、アルバムの色を決めているのはむしろ、アコースティック・ギターによる、カントリー 及びカントリー・ブルースの影響が色濃い、その他の8曲です。

「悪魔を憐れむ歌 (Sympathy For The Devil)」 は、ジャン=リュック・ゴダール監督の映画 『ワン・プラス・ワン』 に、スタジオでの録音の様子が最初から最後まで収録されています。 ローリング・ストーンズというバンドの、当時の状況が見えてきてなかなか興味深い映像なのです。

この頃になると、ブライアン・ジョーンズの影が薄く、と言うよりほとんど存在感なしといった状態。 曲作りの出来ないブライアンにとっては、ジャガー / リチャード の指示そのままに演奏するしかなく、音楽的な意見を挿めないような状況です。




ベガバン録音時。 左端がブライアン。 当時のストーンズの状況が見えてくるようです。


おまけに元の恋人であるアニタ・パレンバーグがキース・リチャーズのもとに走り、キースはそのアニタをスタジオに連れて来ていると言う状況。 性格の悪さからメンバーにも嫌われていたわけで、身から出た錆とも言えなくはないのですが、結成当初はリーダーであっただけにあまりにも惨め。

ドラッグによってほとんどポンコツのような状態となり、スタジオに来ないことも多く、仕方なくミックとキースが、曲中での何らかの役割を与えていたと言います。 そこでまた、何の楽器でもとりあえず弾けてしまうところが器用貧乏の悲しさ。

ブライアン参加 最後のアルバムとなった『ベガーズ・バンケット』。 貢献度は低いとは言え、かつての天才マルチ・プレイヤーぶりもいくつか見られます。 例えば、『ノー・エクスペーションズ』 でのスライド・ギターや、『ストリート・ファイティングマン』 でのタンブーラなど。 ボロボロの状態にありながらも、『ベガーズ・バンケット』がロック史に残る名盤となる予感があっての、最後の力演であったのかも知れません。




Street Fighting Man (1968)


ところで、現在では "ストーンズらしいジャケット" とも言われるトイレの落書きジャケットも、初めは違っていました。 デッカ・レコードの猛反対から変更を余儀なくされ、白い背景にバンド名とタイトルが記されたデザインでリリースされました。

70年代、レコード屋で初めて見たときは、そちらのジャケットでした。 現在も大切にしている、83年出版の宝島増刊 「ストーンズ・ジェネレーション」 のアルバム紹介欄ではまだ白ジャケットのまま。 いつからオリジナル・ジャケットである "落書き" に変わったのか。80年代半ば頃だったと思うのですが。






落書きジャケットには、”BOB DYLAN DREAM" という文字があるのですが、ビル・ワイマンによるとボブ・ディラン 67年のアルバム 『ジョン・ウエズリー・ハーディング』 が、『ベガーズ・バンケット』 を生み出すきっかけになったのだそうです。

前作 『サタニック・マジェスティ』 が、ビートルズの真似だの何だので、さんざんな評価となり、バンドの方向性を見失い、そのときに出会ったのが、原点回帰のきっかけとなったディランのアコースティック・サウンドであったわけです。

ジョン・ウェズリー・ハーディングは実在したアウトローです。 そのディランのアルバムでは弱者の視点から歌われている曲が多く、その点でも、貧しい労働者階級を主人公にした曲の多い 『BEGGARS BANQUET (乞食の晩餐) 』 に多くの影響を与えたということです。

労働者階級の多く住むイギリス北部の家庭のレコード棚に、他のストーンズのアルバムはなくても 『ベガーズ・バンケット』だけはあると言うのは、根深い階級制度を持つイギリスに住んでみなければ、日本人には理解できないことなのかも知れません。

「地の塩 (Salt of The Earth) 」。社会を支える無垢なる人々、労働者階級 (地の塩) に祝杯を挙げる曲で、アルバムは締めくくられています。




Salt of The Earth (1968)