パロディ、二重の声 | Get Up And Go !

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POPでTOPを!


1970年代、主流文化 (伝統的な美術、音楽、演劇 など) に対し、下位文化と訳されるサブカルチャーの開花とともに日本社会で流行した 「パロディ」。

現在、東京駅駅舎内にある東京ステーションギャラリーにて開催中 ( ~4/16(日)まで) の 『パロディ、二重の声、- 日本の1970年代前後左右』 展に行ってきました。 「パロディ」 に少しでも興味のある方にはおすすめの企画展です。

雑誌 (ビックリハウス など) やテレビを通じて、常にサブカルチャーという言葉に敏感に反応していた僕のような人間にとっては、懐かしさも加わっての楽しい時間となりました。 一部の作品をのぞき写真撮影もOKだったのでそのいくつかを紹介し、「パロディ」 について少しばかり講釈なんぞも垂れてみたいと思います。



独占者 河北秀也 (1976) / 営団地下鉄・マナーポスター


パロディとは何でしょうか。
- 他の芸術作品を揶揄や風刺、批判する目的を持って模倣した作品、あるいはその手法のことを指す (wikipediaより) - とあります。


う~ん、なるほど。 模倣とありますが、パロディというのは、それを楽しむ側が "元ネタ" を知っていてこそ、と言うのが大切なのかと思います。 だから "元ネタ" が誰もが知っているような有名な作品でないと、パロディとして成立しにくいとも言えます。

以下は会場に掲示されていた和田誠 (イラストレーター) さんの言葉。


もともとパロディというのは他人の褌(ふんどし)で相撲をとり、しかもそれを汚してから相手の顔に投げつけるようなもので、相手は当然怒り心頭に発し、またそうでなくてはパロデイは面白くない。 だからパロディ屋は最初から犯罪者意識を持ち、裁判沙汰も覚悟しなければならない。
(和田誠)


汚れたふんどしを顔に投げつけるわけか。 そりゃ 怒るわな。 それを見ている観客側は楽しいかも知れませんがね。 その "怒る" という事では、和田誠さんの言葉のとおり、かつて裁判沙汰もあったのです。 これ70年代から80年代にかけて、新聞でも取り上げられた裁判であったので、僕も記憶しています。


偏執狂的危機感 木村直道 (1971-72) / 耳なしゴッホのパレットが!


グラフィック・デザイナーのマッド・アマノ氏が、写真家の白川議員氏の撮影写真をもとにして別の作品に仕上げたというものです。 マッド・アマノ氏はフォトモンタージュという手法を用いてパロディ作品にすることで知られた人です。 それに対しての白川氏は、「地球再発見による人間性回復へ」をテーマに、原始の風景と聖地などを撮り続ける、という言ってみれば芸術文化の主流のひと。 「ひとの作品を流用しおって、けしからん!」 となって著作権侵害で訴えたわけです。 結果はマッド・アマノ氏の敗訴に終わっています。

今回の企画展のチラシ、ポスターには (記事冒頭のデザイン)、横尾忠則氏の 「POPでTOPを」 という、1964年・東京オリンピックの公式ポスターをパロディ化した作品が使用されているのですが、その作品の ふきだし にある言葉に、パロディ のひとつの位置づけが見られて面白いのです。
「POPでTOPを! 芸術貧の方は 「POP」 印のカンヅメでTOPをかちとろう ... !」



焦土作戦 木村恒久 (1970) / 戦後日本もアメリカ (コカコーラ)が侵略?



模倣からはじまるのは、漫画に限らず、ポップ・カルチャーの本質だと思うんです。 つまりビートルズだって最初はプレスリーの真似からはじまってる。 今度はそのビートルズを真似して、いまのロックがあるわけじゃないですか。 だから、どこまでが許される模倣で、どこからが盗作になるのか。 とり・みきさんが 「元ネタがばれると困るのが盗作で、ばれなきゃ困るのがパロディなんだ」 と、言ったんですけど、これは至言だと思いました。 パロディは、意識的に 「ばれるように」 やるわけでしょう。
(竹熊健太郎)


音楽、特に雑食性の強いロックに関してはそのとおりかなと思います。 ビートルズの音楽にはプレスリーだけでなく、ロックン・ロールの始祖であるチャック・ベリー、モータウン・ポップス、ポール・マッカートニーの趣味であるアメリカのスタンダード・ナンバー など、様々なポピュラー・ミュージックがルーツとしてあります。

ビートルズの音楽は、それらを彼ら独特の感性でミックスした音楽であるとも言えます。 そしてジョン・レノンとポール・マッカートニーの声にある際立った個性 (特にジョン) が、自分達の側に強引に引き寄せてオリジナルとしてしまった、という風にも言えるのかな。 「イエスタディ」 のように、「夢の中で聴いた」 (ポール・マッカートニー) という天から降りてきた曲は、ビートルズと言えども多くはないように思いますね。

「パロディ」 とは少し違った意味で 「オマージュ」 という言葉もよく使われますが、模倣から始まってもそこに 「リスペクト」 があるかどうか、というのがその2つの違いですかね。 他人のふんどしを汚して投げつけるのではなく、ふんどしに対して敬意を持ってお借りする。 変な表現になってしまいました σ(^_^;)


で、今回の選曲は・・・
単なるおふざけ? リスペクトはあるのかなぁ?
楽しいことには変わりないんですけどね (^∇^)




THE RUTLES / Love Life (Our World Broadcast)


『パロディ、二重の声、- 日本の1970年代前後左右』 展
10:00 - 18:00 (4月16日(日) まで開催)
(※金曜日は20:00まで開館 入館は閉館30分前まで)
【入館料】
一般900(800)円 高校・大学生700(600)円 中学生以下無料
【主催】
東京ステーションギャラリー(公益財団法人東日本鉄道文化財団)


JR東京駅、丸の内北口改札出てすぐです。
みなさん、春ですよ!
外に出ましょう! 感性も新たに芽吹いていますよ (^O^)/




1964年 東京オリンピック・ポスター 亀倉雄策・デザイン (1961)
シンプルにして最高のデザイン!