ルーフトップ・コンサート 総集編 | Get Up And Go !

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曇天・寒空のこの季節になると思い出すことのひとつが、1969年1月30日に行われたビートルズ最後のライヴ演奏となったルーフトップ・コンサートです。 一般的には、ロンドン・アップル社の屋上で行われたこのゲリラ的なライヴ演奏の事を指して、ルーフトップ・コンサートと言います。

ですがそれ以前にもそれ以後にも、屋上 (ルーフトップ) で行われたライヴ演奏もあるわけで、今回は有名なものだけピップアップして総集編としてまとめてみました。

実は長年ビートルズが最初であると根拠なく信じていました。考えてみれば、ジャンルは何であれ屋上に楽器と機材を持ち込み演奏すればそれはルーフトップ・コンサートになるわけで、世間に知られていないそういったライヴがビートルズ以前からあったとしても何ら不思議はないわけです。


JEFFERSON AIRPLANE / House At Pooneil Corners (1968)
ロック・バンドによる初めてのルーフトップ・コンサートは、1968年12月7日にアメリカのバンド、ジェファーソン・エアプレーンがニューヨーク・マンハッタンのビル屋上にて行ったライヴ演奏と言われています。 そのようにロック・ファンの間で広く認知されるようになったのは、近年のことだと思いますが。

昨年亡くなられた音楽評論家・中山康樹さんの著書 『誰も知らなかったビートルズとストーンズ』 によると、ジャン・リュック・ゴダールが映画 『ONE AMERICAN MOVIE』 のためにジェファーソン・エアプレーンにライヴ演奏をさせ撮影したものだそうです。そして当時映画は完成せず結局オクラ入りに。

この映像、見れば見るほどビートルズの映画 『レット・イット・ビー』の屋上演奏シーンに似た感触を覚えます。 中山氏によれば、『レット・イット・ビー』 の監督、マイケル・リンゼイ・ホッグが、業界関係者としてこのフィルムを見て、ビートルズの映画に流用したのではないかと、その著書に記しています。






U2 / Where The Streets Have No Name (1987)
ロックをやる者ならば、一度はやってみたいと思うであろう屋上ライヴ。 あまり高いビルではありませんがU2もやっています。

U2の最高傑作にして、80年代を代表するロック・アルバムのひとつである 『JOSHUA TREE』 に収録された曲です。 ジ・エッジのギター・サウンドって、登場したときには衝撃的だったんですね。 ディレイを駆使した独特のプレイには、僕も少なからずのショックを受けました。

ジ・エッジのギター・サウンドは、この時代のU2・サウンドの代名詞とも言えるものですが、このサウンドは野外演奏との相性が良いように思えます。 場所はカリフォルニアのリカー・ショップの屋上だそうです。






RED HOT CHILI PEPPERS / The Adventure Of Rain Dance Maggie (2011)
レッチリ。 2011年リリースのアルバム 『I'M WITH YOU』 に収録された曲です。 場所はカリフォルニア・ヴェニスビーチ、2011年7月30日となっています。

この映像を見るたび思い出すのが、子供の頃に友達と屋根だとかの高い所に登って「危ないから降りなさい!」 と大人に怒られたことですかねぇ (^o^;) それにしても危なっかしいなぁ。狭いスペースでしかも柵のない場所。 それで激しく体を揺らしながら演奏しているわけですからね。 バランスを崩して転落、なんて考えてしまいます。 でも本人たちは気持ちが良さそうです。






KEIRA KNIGHTLY / Tell Me If You Wanna Go Home (2014)
これは番外編です。 "ルーフトップ" と言っても、劇映画の中の一場面として作られたものです。 主役を演じたキーラ・ナイトレイもマーク・ラファロもミュージシャンではないのです (歌っているのはもちろんキーラ・ナイトレイ本人ですが)。

物語自体が、ニューヨークの街中でゲリラ・レコーディングを行うという設定。 路地裏であったり公園であったり・・・。 地下鉄構内の演奏では、警官に追い回されたりも。 そしてハイライトは屋上での演奏シーン。

演奏される 「Tell Me If You Wanna Go Home」 は、劇中でも最も素晴らしい曲。 この映画 『はじまりのうた』 はとても好きで、昨年記事にもしました。 とりわけ "ルーフトップ" のシーンは、音楽の楽しさが伝わってくる素晴らしい場面であると思います。






THE BEATLES / Don't Let Me Down (1969)
1970年公開の映画 『レット・イット・ビー』 のクライマックスとして撮影されたのが 有名な "ルーフトップ・コンサート" です。 所有するブートレッグ映像をたまに引っ張り出して見るのですが、あの屋上の演奏シーンには今でも痺れます。 とりわけジョン・レノンのカッコ良さといったら・・・。

途中、通報によって警官がビルに入り演奏を阻止しようとする場面も、また印象に残るものです。 これも前述の中山氏によれば、やらせではないかと。 確かに指摘される通り、不自然に感じる場面が多々あります。 ビルに入る警官を背後から撮影し、待っていたかのように警官が入る瞬間をビル内部から撮影した場面、とかね。

そして屋上での警官とスタッフとのやりとり。体制側(警官)と反体制(ビートルズ) との悶着は、映画のクライマックスとしては最高のものに思えますがそれはやらせであったのか。 中山氏は、警官が役者である可能性にまで言及しています。

他にもいくつかの疑問点を指摘していますが、これはあくまで推測なんですね。 これから "真実" が明らかになる日が来たとしても、あの時の屋上でのパファーマンスの価値にはいっさいの影響を与えるものではない、と長年のビートルズ・ファンとしてここに記しておかなければなりません。 ビートルズのライヴ・パフォーマンスは、ロック・バンドとして最高のものであったと。







昨年 『はじまりのうた』 を観たときにひとつ思ったことがあります。 屋上で演奏すること自体が、今やアーチストにとってはひとつのファンタジーなのではないかと。 大都会の空の下、街を見渡せる景色の中で演奏することが。 しかも 『はじまりのうた』 では夜のニューヨークが選ばれています。

窓から顔を出し 「警察を呼ぶぞ!」 と叫ぶ住人もいますが、それすらが素敵に見えます。 元ミュージシャンである監督のジョン・カーニーは、当然 『レット・イット・ビー』 を観ているでしょう。そして映画で描かれたのは、ジョン・カーニーにとっての "ルーフトップ" と言う名の桃源郷なのではないでしょうか。

"ジェファーソン・エアプレーン" の流用であるとか、警官はやらせであるとか、それは "真実" なのかもしれません。 でもね、当時不仲であったと言うジョンとポールが、"ルーフトップ" では笑顔で顔を見合わせたりもします。 そんな場面を見ると その "真実" というのも気にならなくなるのです。

これからも忘れた頃に屋上ライヴのPVは作られ、それはずっと続いていくことでしょう。