
7月16日、ブルース・ギタリストのジョニー・ウィンター氏が、滞在中のスイスのホテルで亡くなりました。70歳。 ヨーロッパ・ツアー中であったとのこと。死因は現在のところ不明のようです。
とても残念で悲しいことではあるのですが、長くドラックを常用し無茶を続けてきたことを考えれば、むしろここまでよく生き延びてききたなぁ とも言えるわけで、アーチストとしても十分にやりたいことをやり続けた人生であったようにも思います。
「100万ドルのブルース・ギタリスト」 なんていう、古いキャッチ・フレーズを持ち出してしまいましたが、これはジョニー・ウィンターが1969年に巨額の契約金でコロンビア・レコードと契約を結んだことに由来しています。 実際には100万ドルには及ばなかったようですが、同時期のレッド・ツェッペリンの契約金20万ドル以上ではあったそうです。 いわゆる鳴り物入りのデビューであったわけです。
僕にとっては、エリック・クラプトン、ロリー・ギャラガー、と並ぶギター・ヒーローでした。ギターを弾き始めてクラプトンのプレイに傾倒していた頃、クラプトンの流麗なプレイとは違うあまりにも熱いジョニー・ウィンターのプレイには、やはり衝撃を覚えました。
比べるべきは、やはり熱血ギタリストであったロリー・ギャラガーであると思いますが、ジョニーのプレイのほうがもっとストレートで常に火の玉状態。 初めて聴いたアルバムは、『CAPTURED LIVE』 (1976) であったと記憶しています。"狂乱のライヴ" という邦題のついたこのライヴ・アルバムはとにかく熱い! 隙間なく弾きまくる音数が怒涛のように押し寄せてきて、聴き終えたあとはポカンと口を開けた状態。 聴かせてくれた友達の家のステレオ・プレイヤーの前で 「凄いね」 以外、言葉を見つけられない感じであったと思います。
出身地であるテキサス州は、暑い気候のところで知られていますが、ジョニー・ウィンターのトゥー・マッチさは、ときに暑苦しさも感じさせるほどです。 しかも攻撃的です。大体において、テキサス産のギタリストは攻撃的なプレイをする人が多いのですが(スティーヴィー・レイ・ヴォーン、アルバート・コリンズ、フレディ・キング etc・・・)、ジョニー・ウィンターのプレイは、そのタフなテキサス野郎を体現するようなものであったと言って良いと思います。
ヴォーカルに関しては、がなるような歌い方を嫌う人もいましたが、パンチのある感じが好きでしたね。 ジョニー・ウィンターの根っこにあるのはもちろんブルースですが、ロックン・ロールを歌った時に、バンドの音の圧力に負けない力があったと思います。そして、もうひとつ。スライド・ギターの腕も、白人プレイヤーの中では最高のプレイであったと思います。

リアル・タイムで聴いていた80年代から90年代始めにかけての、アリゲーター・レーベルなどに残した作品もまた素晴らしいです。 その元気であった頃の90年に初来日公演が決まり、チケットを取って心待ちにしていたのに直前で中止になってしまったんですね。ニューヨークのライヴ・ハウスでジョニー・ウィンターを聴いたという友人に、そのライヴの素晴らしさを聞いていたので、あの時は本当にがっくりでした。
これは後から知ったのですが、ドラッグの症状を緩和するための薬が、日本では禁止薬物にあたるためであったとのこと。そのドラッグ癖のためなのか、90年代は長いブランクが続き、97年にやっとリリースされたライヴ・アルバム 『LIVE IN NYC '97』 でのプレイもいまひとつ元気がなく、さらに2000年代に入ってからの映像なども、ヘロヘロでボロボロの演奏もあって、「ジョニー・ウィンターもう駄目なのかな。来日はもうあきらめたほうが良さそうだな」 なんて、僕だけでなく多くのファンが思ったはずです。
ところがどっこい、2011年4月にまさかの来日公演が決まり、あたしゃ 行きましたよ。 大げさでなく、待望の、悲願の、奇跡の、来日公演であったと思います。ひと月前にあの大震災があったため、「中止かな。ジョニーさん来ないかな」 なんて思っていたのですが、やって来ましたよ!テキサス野郎! もといテキサス爺さん。
しかしジョニーの登場は、10代の頃とは違った意味での衝撃がありました。
ステージに登場したジョニーはトボトボ、よちよち歩き。何だか腰も曲がっていて 「嘘だろ! 本当にあのジョニー・ウィンターなのかい! 演奏出来るんかい?」。腰かけての演奏ではありましたが、やっぱり流石! ジョニー・ウィンター。 商売道具を持つとシャキッとするんですね。 曲が進むごとに調子が乗っていくのがわかります。正直に言うと 「伝説の人を拝めるだけでもいいじゃないか」 というのもあって多くは期待していなかったのです。 全盛時の70年代80年代の演奏というわけにはいきませんでしたが、ファンを喜ばせ納得させる演奏であったと思います。特に最後に披露した、「Dust My Bloom」 と 「Highway 61 Revisited」 でのスライド・ギターは圧巻のプレイ。 目の前にいるのは、紛れもなくあのジョニー・ウィンターでした。
その圧巻のプレイも終わり、再びトボトボ歩きの前傾姿勢でステージ脇に消えるさい、大歓声に応えてヒョイと片手をあげて私たちに挨拶した姿が目に焼き付いています。
後にジョニーさんは、「日本のファンの盛り上がりに驚いた」 と機嫌よく語っていたそうです。来日中は浅草に繰り出し、仲見世通りで買い物もしたとのこと。
安らかに・・・
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